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「休みの日を作ろう。俺達は普通の訓練、ラピアは回復魔法とか攻撃魔法の訓練をした方が良いと思う。だからまだ聞いてないが、教会の手伝いをやって回復魔法を教えてもらうのはどうだろう?治療師に教われれば最高だ。もしくは攻撃魔法の訓練をしよう。走る訓練は必要だけどラピアはどちらかというと魔法が強いからそっちも鍛えないと中途半端になる。」
「私は今のままでいいよ。」
ラピアはあまり乗り気ではないようだ。
俺はラピアの回復魔法の訓練とは別に目論見がある。
せっかくの教会の伝手が出来たので切らさずに維持しておけばいざという時にラピアは教会に潜り込める。
俺がもし死んだとしても治療師として生きていけるだろう。
メリは身軽になれば一人でもどこでもやっていける力が既にある。
簡単に死ぬ気はないが保険はあって損はない。
「ラピアも自分の訓練をした方がいいね!せっかくだから治療師から技を盗んでくるのだ!」
「もちろん、ラピアが嫌だったら行かなくていいよ。ただ前衛主体の訓練になってるからラピアの訓練が心配になってさ。俺達に気を使っているなら今後の戦力増強の為に攻撃魔法と回復魔法をラピアにまかせたいから気にしなくて大丈夫だよ。」
「そうか。みんなで強くなるんだよね。そういうことなら私ももっと強くなるよ。わかった。教会で回復魔法を教われるか聞いてみる。」
「もう少し後になるけど冒険者学校に通うって選択肢もある。けど俺だけ残っても寂しいし二人には俺が12歳になるまで冒険者学校に通うのは待って欲しい。」
「あれぇ~?ロッシュ君らしからぬ弱気発言だねえ。私達二人だけが冒険者学校に行ってもいいんだよー?」
「それでもいいけど俺は1人でダンジョンを満喫しちゃうよ?」
「えっ、そんなのずるいよ!」
「だって二人だけで冒険者学校に行くんでしょ?俺は誰にも縛られずにダンジョンに潜りまくるんだ。」
「うう・・・・・・。やっぱりロッシュ君と一緒に学校に行きたくなってきたよ。だから一緒に行こう?」
「いいよ、いいよ。1人で寂しくダンジョンに潜ってるから。いやー、大変だなあ。」
「ラピアあ。助けてえ。」
「ロッシュもあんまりメリをからかっちゃ駄目よ。」
「はーい。」
翌日、ダンジョンの狩りは休みにして俺達は朝から教会へ向かった。
教会の敷地に入るとミュッケ村の子供達が修道女達に混ざって働いている。
子供達に片手を上げて挨拶すると近くの修道女にベラの所在を確認した。
「お久しぶりです。ミュッケ村の子供達がお世話になっています。」
「ええ、久しぶりね。」
「実はたまにでいいのでラピアをここか治療院で働くついでに少し回復魔法の手解きをお願いしたいのですが。」
「お金は出せないわよ。」
「手解きだけでも結構なのでお願いします。」
「わかったわ。」
「今日は大丈夫ですか?指定の日があれば従います。」
「今日でいいわよ。」
『よろしくお願いします。』
「エル村の人達がそろそろ村に帰るからお別れをしておきなさい。」
「はい。」
そう言うとベラはさっさと持ち場に移動していった。
ラピアは俺達に手を振るとそれに追従した。
俺達は働いている子供達に手を振って教会を後にした。
町の孤児達は見当たらなかったので孤児院に行ったのかもしれない。
世知辛いもんだな・・・・・・。
俺とメリはエル村の人達が借りている家へと向かった。
「おはようございます。」
『おはようございます。』
俺達はエル村の人達に挨拶をした。
大人は働きに出ているのでほとんどが子供だ。
子供を見る為に老人や女性が数名残っている。
子供達は俺達が教会の前で戦っているのを見ていたので思ったより好かれているようだ。
子供達が集まってきた。
「みんな元気だな。」
「他の大人達は村の再建の為に今は日雇いでお金を稼いでいます。しかし早い内に戻らないと雪が降ってしまうので、2日後には村に帰るつもりです。壊された家などを直すのを考えるとギリギリです。」
「そうですか。グロウ達は迷惑をかけていませんか?」
「大人に混じって日雇いでお金を稼いますので助かっています。」
「良かったです。明日の夕方近くにまた来てもいいですか?」
「もちろんですとも。うちの子供達もミュッケ村の子供達も喜びます。」
「ありがとうございます。」
俺が大人と話しているとメリは子供達と既に走り回っていた。
俺も話しが終わったのでそれに混じった。
その後、俺達は運動場へ向かった。
「明日の夜には何か手土産を持って行きたいな。」
「そうだねー。何にしようかなー。ワインは・・・・・・高すぎるよねえ。」
「ワインはお前が飲みたいだけじゃないか。」
「結構な出費になるがドブヌートを1,2体持っていくか。」
「それでいいねー。」
「うん。後は俺達の訓練かあ。冒険者学校には入れないし、道場は伝手がないし高そうだなあ。本当は誰かに教えてもらうのが効率いいんだよなあ。」
「そうだけど、私は教えてもらわなくても攻撃の気配が感じられるようになってきたよ。」
「それはメリだけなんだよなあ。俺は教えてもらった方が早いかもしれない。」
メリのような天才には必要ないかもしれないが普通の人は教えてもらった方が上達が早いはずだ。
ここの町の冒険者は思ったより弱いというか慣れてないというかダンジョンの奥に潜っているような1部を除いては質が低い。
教えてもらうなら強い人がいいな。
今度道場を覗いてみるか。
俺達は夜の鐘が鳴るまで訓練をした。
その後、黒パンを結構な量を買って教会へ向かい、修道女に黒パンを渡した。
ラピアと合流して俺達は自分達の部屋に戻っていった。
自分達用の黒パンを食べながらラピアに今日の話しを聞いた。
「ミュッケ村の子供達はみんな元気そうだったよ。2日後にエル村に帰るんだって。」
ラピアは少し寂しそうに言った。
「そうみたいだな。明日の夜にドブヌートを持ってエル村の人達が泊まっている家に行こうと思うけどラピアはそれでいいかな?」
「うん。それでいいと思うよ。みんな喜ぶよ。」
「教会の仕事はどうだった?」
「今日は人が少なかったらほとんど私が回復したよ。最後に少し治療師の人に教えてもらったよ。」
「そうか。俺達は相変わらず二人で訓練してたよ。本当は道場とか行きたいけどすごく金がかかるからなあ。」
俺達は休みの日を利用して、何件か道場を回った。
どこも一月にいくらという値段設定で最低でも銀貨数枚を要求してきた。
いまいち本気で鍛えている空気が感じられない所ばかりだった。
初心者用の道場だったのかもしれない。
道場主かどうかはわからないどこも俺達から見てすごく強いと思う人が居なかったので道場は当分止めて置く事にした。