表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/139

46

「始め!」


お嬢様の声で模擬戦が始まった。

向こうは動かずこっちが動くのを待っている。


俺は盾を構えながらセイに近づいた。

俺は強化を使い棍棒で殴りかかった。


セイは鞘に入れたままの剣でそれを防いだ。

俺は徐々に強化を強くしてセイに殴りかかったが一度も有効打を与えられなかった。


「参った。」

「勝者、セイ!」


審判のお嬢様が一番嬉しそうだ。


「強いな。」

「ロッシュもその歳なら中々強いよ。」


俺達は再び握手をして離れた。

そして俺は振り返って二人に合流しようとした。

振り返った先には怒って興奮しているメリの顔があった。


「次は私がやる!」


メリが同じく鞘に入れたままの剣を構えた。


「もちろん。いいよ。」


セイは余裕の構えだ。


「始め!」


お嬢様の声で再び模擬戦が始まった。

俺の時と同じようにセイはメリの攻撃を待った。


メリは最初から強化全開で襲い掛かった。

しかしセイを崩すことはできなかった。


それでも俺に比べたら結構戦いになっている。

そのしつこさと気迫にセイは焦ったようでメリの剣を弾き飛ばした。


セイは剣を振り切って満足気な顔をしているがメリは止まっていなかった。

メリは剣を弾かれるのは確実と分かると一歩踏み込んでいた。

そして蹴り上げた。


「ゴッ」


蹴りを受ける瞬間、セイは満足気な顔を真っ青にして剣を離して自分の股を守った。

セイはギリギリ防御が間に合ったか微妙なタイミングで股間を蹴られて真上に飛ばされた。


セイは股間を守った格好のまま3mは上空へ飛ばされ、そのままの姿勢で地に落ちた。

いつの間にか俺達の模擬戦を見守っていた観衆はそれを見て静かに足早に散った。


お嬢様と奴隷少女はセイの元へ駆け寄った。

メリは弾き飛ばされた剣を拾って片手を上げて俺達の方に戻ってきた。


よくやったと思うと同時にメリをからかうのを少し止めようと思った。


「勝ったよ!」

「おう、すごいぞ、やりすぎだぞ!」

「ヒールをしないと。」


固まっていたラピアが駆け出した。

俺も一緒にさっきの防御姿勢のまま動かないセイに駆け寄った。


「大丈夫か?」

「今ヒールをしますね。」

「大丈夫。」


セイはその言葉を搾り出してまた動きを止めた。

セイがまともに動けるようになったのはその10分後だった。


メリはすごく得意そうだ。

セイは動けるようになっても口数少なく模擬戦の終了を宣言して奴隷少女にほとんど担がれるような状態で退場していった。


「メリよくやったぞ。けど奥の手は隠しておかないと駄目だぞ。次戦ったら確実に負ける。けどまあ敵を討ってくれてありがとう。俺ももっと強くなるよ。」

「うんうん。ロッシュ君もより一層頑張りたまえ。」


また絡まれても面倒だし良い薬になっただろう。

俺達も訓練を続ける気になれなかったので夕飯を探しに運動場を出た。


夕飯は黒パンとシチューを買って部屋に戻ってゆっくりと食べた。


「ダンジョンで走るようになって余計に腹が減るようになったな。」

「うんうん。」


「ご飯にお金を少し使いすぎかもしれなかったけど今なら丁度いいね。」

「追加するならポリジだな。野菜代わりになる。」


「怒るよ!」

「ごめんなさい!けどポリジは本気だよ。」

「ええー。」


いつもより早く帰ってきたので時間をかけて気配飛ばしを練習した。

もちろん布玉投げもやった。



一週間が経った。

一日当たりの収入は8~10大銅貨で運がいい日は12大銅貨を超える日もあった。


そろそろ部屋代を払って更新してもいい時期だ。

俺達は夜にラコスの部屋を訪ねた。


「こんばんはー。」

『こんばんはー。』

「ラコス調子はどうだ?」


「うん。俺達も順調だよ。ロッシュも服を新しくしたんだね。」

「まあね。二人とも元気そうでなによりだ。」


俺とラコスが話していると女子は女子で楽しそうに話している。

俺は事前にみんなに相談してダンジョンの中を走り回っていることをラコス達に伝えていいか話し合った。


もちろん了解だった。

俺も了解だ。

俺達はライトを使っても余裕あるから走れるのだ。


ラコス達はもう少し時間がかかるだろう。

というかラコスはウカリスを走り回させるのを嫌がりそうだ。


ウカリスはしっかりしているがまだ9歳だもんな。


「部屋代は貯まった?」

「貯まったよ。ウカリスに言われて一番に貯めた。」


「それが確実だよな。明日一緒に払いに行かない?」

「ウカリスに聞いてみる。」


ラコスは楽しそうに話している女性陣の中にいるウカリスに声を掛けた。

その結果、俺達は明日に一緒に部屋代を払いに行くことになった。


俺はセイ達の事やダンジョンの事などを話した。


その後、食事代について聞いたがラコス達は一日3大銅貨のようだ。

朝ポリジ、昼黒パン、夜ポリジに何かしら付ける方式らしい。


俺が4大銅貨というとさすがにラコスも羨ましそうだった。

俺はラコスの話しを聞いて逆にポリジを増やさなければならないと使命感を燃やした。


翌朝は朝の鐘の音が鳴るのを待って合流した。

俺達はいつもはもっと早いがその日は起きてゆっくり準備体操や気配飛ばしの練習をして時間を潰した。


鐘の音が鳴った時に二人が起きた気配がした。


「コンコンコン。」


俺は昨日の話しで決めた合図をした。

等間隔に3回叩くのが起きたの合図、4回叩くのが準備ができたの合図だ。


「コンコンコン。」


すぐに反応が返ってきた。


「コンコンコンコン。」


ラコスの部屋から慌しい気配が滲み出てきた。

そして少し経った後に音が鳴った。


「コンコンコンコン。」


俺達は部屋から出て二人を待った。二人もすぐに出てきた。


「おはよう。」

『おはよう。』

「おはようございます。」

「行こうか。」


そう言うと調べておいた部屋の貸主の所へと向かう。

到着すると扉を軽く叩く。

そうすると扉ではなく、隣の窓が開いた。


「借りている部屋の更新の料金を払いに来ました。」

「はいはい。鍵見せて。」


俺が先に鍵を見せた。

そして45大銅貨を渡した。


「はい。45大銅貨ね。」

「ぼ、僕もです。」

「鍵見せて。」

「はい。あとお金。」


ラコスも払った。


「更新する場合はまた来月いっぱいに払ってね。」


そう言うとさっさと窓を閉めた。

あっさりしすぎて拍子抜けだな。


その後、俺達はいつもの老婆の所でポリジを買って食べた。

メリとラコスが苦い顔をしていたがウカリスはここのポリジの良さがわかったらしい、見込みありだ。


その後俺達は一緒にダンジョンに向かい浅い所までは一緒に進んだ。

途中に出た敵はラコス達に譲った。


「俺達はもう少し奥に行くよ。二人とも気をつけて。」

「わかった。またあとで。」


「ばいばいー。」

「またね。」


別れ際にウカリスは手を振っている。

俺達も軽く片手を振って別れた。


それからはいつも通り走った。

靴は大きすぎて若干靴擦れしそうだがそのたびに止まって布を入れたり移動したりして調整した。


慣れてくるとやはり靴が頑丈だといいな。

新しい服は暖かすぎるがこれは徐々に慣れるしかない。


ラピアは持っている棒が長いので若干走りづらそうだった。

ラピアが1人で戦う時には棒で払うことができるが俺達と連携するとなると突きが中心になってくる。


ラピアは今後の為に突きを中心に練習している。

俺とメリは早く気配を察知できるようにならないとな。


今日は試したい事があったのでそれを実行する事にした。

ダンジョンを出る前の最後のゴブリンと戦う時にそれを実行に移した。


ライトを消して真っ暗な状態でゴブリンと戦う。

それが今回やりたかった事だ。


ドブヌートは早すぎてまだ危険なので持ち越しだ。


ゴブリンが近づいてくる音が聞こえたのでみんなで目を瞑ってからライトを消した。

そして目を強化する。


ゴブリンは急に暗くなったので驚いて辺りを見回している。

俺とメリはお互いを見て頷きあった。


俺達はゴブリンに接近してまず武器を吹き飛ばした。

その後は二人でゴブリンの足を狙って折った。


暴れるゴブリンを少し観察しながらメリと俺で交互に安全な時を見計らって攻撃をした。

しばらくは武器を飛ばして足を折ってからゆっくり戦おう。


慣れてきたら武器を飛ばすだけで戦い、もっと慣れてきたら武器を飛ばさないで戦う。

そしてそのうち1人で戦う予定だ。


少しずつ慣らして行こう。

焦って怪我をしてはいけない。


怪我をして良いのは外で訓練している時だけだ。

ある程度怪我に慣れないと本番が怖いから訓練ではドンドン痛みに慣れた方が良い。


俺達はライトを再び付けた。

一回の戦闘だったが緊張感がすごかった。


だがこうやって新しいことを目標を持ってやることは実に楽しい。

ただ潜って魔物を狩るだけじゃ張り合いがないもんな。


メリもさっきの戦いで少し興奮しているようだ。

気配飛ばしは一向に進歩が無いがこうやって少しずつでも先に進んでいこうと思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ