38
ダンジョンに入って少し歩くと俺は立ち止まった。
「よし、魔境の性質調査だ。」
「ファイア。ウォータ。ウインド。アース。ダーク。ライト。」
俺を除く4人はダンジョンの性質を調査した。
「ラコスここの性質は?」
「うっ、闇かな?」
「ラピアどう思う?」
「闇だね。」
「俺も試すからラピア、ライトお願い。」
「うん。」
「ファイア。ウォータ。ウインド。アース。ダーク。ライト。」
「うん、闇だ。」
「ライトはこのままラピアお願い。各自少しずつライトを使ってみて消費を確かめてみよう。」
俺はそう言うとメリを先頭にダンジョンを進んだ。
ダンジョンに来た事があるメリ以外は過剰に警戒しながら歩いている。
するとメリが言った。
「敵が来る!」
俺達は聞き耳を立てながら音が来る方向に集中した。
「ザザザ。」
俺達の視界に飛び込んできたのはドブヌートだ。
ドブヌートは先頭にいるメリに飛び掛った。
しかしそれを待っていたメリに綺麗に切られた。
ドブヌートは光の粒になり消えていった。
「こんな感じー。ライトを付けてるから近くの敵が勝手に来るよ。来る時の足音でゴブリンかドブヌートか判別するの。足音の間隔が長ければゴブリン、間隔がすごく短ければドブヌート。ゴブリンは動きが色々あって予測できないけどドブヌートは足に噛み付くか体当たりか飛び掛ってくる位だから攻撃を待ってカウンターするんだ。逆にそうしないと体が小さいから最初は当てにくいよ。」
「さすが経験者は違うな。こんな感じで何匹かお願いしよう。その後は俺から順に一対一で戦おうぜ。」
「ドンドン狩るよ!」
しばらく進んでいると通路に何か落ちているのを見つけた。
棍棒だ。
「これはねー。奥に進む人が金にならないから拾わなかったやつだよ。」
俺はせっかくなので回収しておく。
「奥へ進む道は人通りが多いから私達は脇道に逸れた方がいいねー。今は冬で村人が出稼ぎに来てて特に人がたくさんいるはずだよ。前来たときは少し奥まで行ってから人が少ないところを回ってた。」
剣以外でメリが頼りになるなんて・・・・・・。
「とりあえず入り口付近の地理を覚えたいから近場からよろしく。」
「あいよー。」
入り口付近とあって敵があんまり出てこない。
今は道を覚えるのが優先だけど金を稼ぐようになったら人が居ない場所を目指した方がいいだろう。
しばらく歩いたが出たのはドブヌート1匹だった。
「時間は早いけどウカリス、ライトお願い。」
「はい!」
「ラピア、魔力の消費はどう?」
「普段よりは多いけど私は問題ないよ。」
「わかった。」
「お、きたきた。ゴブリンのお出ましだよ。」
メリが楽しそうに言った。
俺達は緊張しながらゴブリンの到着を見守った。
ライトの光にゴブリンが映し出される。
持っている武器は棍棒だ。
ゴブリンは棍棒を振りかぶってメリに襲い掛かった。
メリは棍棒を払った。
そして首に一閃した。
ゴブリンが光の粒子になって消えた。
カランと音が鳴って棍棒が落ちた。
「お、棍棒が出た。」
「ちょっと早いけど次は俺が先頭やるよ。」
「えー。もう私の番お終いなのー。」
「明日からはドンドン狩らせて上げるから我慢我慢。」
メリは大丈夫そうだ。
それより初心者の俺達がもっと積極的に戦わないと。
俺もメリを見てたら戦いたくなってきたしあんまりメリの戦いを見せるのは毒だ。
俺達はメリほど強くないしメリほど良い武器を持っている訳ではない。
俺は次に魔物が出てもわざとゆっくり戦おうと思った。
今回の戦いは棍棒でどれだけ安定して戦えるようになるかの方が重要だからな。
俺がワクワクしながら歩いてると足跡が近づいてきた。
「やった。来るぞ。これは・・・・・・ゴブリンか。」
間隔の長めの足音がしてゴブリンが視界に現れた。
俺は木の盾を構えて棍棒を脇に寄せて構えた。
俺が選んだ棍棒は70cmくらいの一番長めの棍棒だ。
体の小さい俺には射程は命綱だからな。
今回のゴブリンも前回と同様に棍棒を振りかぶって突っ込んできた。
俺はゴブリンが棍棒を振るうのを待って、その棍棒を踏み込みながら盾で払った。
ゴブリンは棍棒を払われて体勢を崩した。
俺はゴブリンの腕を狙って棍棒を叩き付けた。ゴブリンは堪らず棍棒を落した。
俺はそのままゴブリンの足を棍棒で力いっぱい払った。
ゴブリンの片足を折ることに成功した俺は転がった棍棒を蹴ってゴブリンの届かない所に蹴り飛ばした。
その後足が折れたゴブリンの背後に回りこむようにして、頭を守るゴブリンをとにかく殴った。
そうしているとゴブリンが光となった。
ゴブリンは消え去り蹴り飛ばした棍棒も消えていった。
ふう、俺は一安心した。
最初に棍棒を振りかぶってこなければもう少し色々試せたんだが次はもっとゆっくりやろう。
次に来たのは短剣を持ったゴブリンだった。
俺は今度は敵の攻撃を待たずに棍棒で短剣を思いっきり払った。短剣は弾かれて洞窟の壁に当たった。
武器を失ったゴブリンは体当たりをしてきたが盾で横に逸らして足を折った。
その後は前回と同様だったが体当たりや引っ掻きが来ると面倒だな。
早い攻撃は対処を間違うと傷を負いかねない。
次ゴブリンが来たらどうしようかと思っていると間隔の短い足音だ。
ドブヌートが来た。
俺は生地の薄い服しか着てないので足を噛まれたら困る。
体勢を低くしてドブヌートが近づくのを待った。
ドブヌートは一直線で俺に近づいてきて飛び掛った。
よしと思いながら俺は盾でドブヌートを払った。
ドブヌートが吹き飛ばされた所を棍棒で殴ったがすぐに動かれて、手応えはいまいちだった。
ドブヌートは一旦俺から距離を取ってまた突撃してきた。
次は足狙いのようでそのまま飛ばずに突っ込んできたが棍棒を地を這うように払うとまた弾き飛ばした。
これはしっかり踏み込んでカウンターを入れないと面倒だな。
攻撃を2回喰らったドブヌートはヨロめき始めている。
今度は俺が攻めた。
俺が棍棒を叩きつけるとドブヌートはギリギリでかわした。
そのまま逃げるように距離を取るが俺はドンドン追いかけて棍棒を何度か振るいやっとこしっかりした攻撃を当てられた。
ドブヌートは消えていったが今の戦いは中々初心者っぽくて良かったな。
俺は2種類の敵のだいたいの様子を把握できたので満足した。
「次は、ラコス行くか?ライトは俺が担当する。」
「う、うん。やるよ!」
ラコスは若干おっかな吃驚な様子で先頭に出た。
俺は盾があったから安定して戦えたが俺以外は盾はない。
ラピアに盾を貸そうとしたが普段はロッシュが盾を持つから私はいいよと言われてしまった。
まあその通りだよな。
ラコスの棍棒は50cm位の物で先端が異様に太く、当たれば相当な打撃になりそうな一品だ。
ゴブリンとの戦いは持っている武器を弾いてあとはボコボコに叩いた。
逆にドブヌートは戦いづらいようで、最初の攻撃を外すと攻撃を当てるのに右往左往してかすり傷を負っていた。
すぐ傷口をウォータで洗われ、ヒールをかけられた。
しかし最初のカウンターが当たればドブヌートは光の粒子となった。
ラコスは少し興奮し始めたがウカリスがそれを見て言った。
「そろそろ私の番でいいかな?」
ラコスはすぐ笑顔になってウカリスに先頭を譲った。
ウカリスはなんというか戦えてるけど俺達と比べると腕力が足りないようで武器を弾くのが難しいようだ。
しかし地道に攻撃を加えているので慣れれば大丈夫だろう。
逆に体が小さいのでドブヌートとは俺達より戦いやすそうだ。
ウカリスが倒したドブヌートが光に包まれたと思ったら死体が残った。
「お、これがドブヌートの死体か。こっちは棍棒を集めているから重いかもしれないがラコス側で持っててくれない?」
「ウカリスおめでとう。わかった。これくらい大丈夫だよ。」
そう言うとラコスはドブヌートの死体を袋に入れた。
『ウカリスおめでとう。』
「うん。」
ウカリスは恥ずかしそうに髪を触って笑った。
その後、ウカリスはゴブリンとドブヌートを狩ってラピアに変わった。
ラピアはウカリスが強くなって冷静になった様な感じでゴブリンは時間をかけてゆっくり倒した。
ドブヌートは梃子摺りつつも少しずつ攻撃を加えてしっかり倒した。
ラピアが棍棒を持ったゴブリンを倒した時にゴブリンは短剣を落した。
持っていた武器は棍棒だったのに落とした物は短剣だ。
なんか複雑な気分になった。