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「私はダンジョン運営会のルネル。よろしくね。」
『よろしくお願いします。』
「ダンジョンについては知っているだろうからアイテムの買取について簡単に説明するね。ダンジョンの入り口に通じる部屋に受付があって、毎回そこで登録板を見せてダンジョンに入るの。ダンジョン内で倒した魔物は普通は消えるけどアイテムを落す時がある。魔獣だと死体、体の一部、魔物だと体の一部、魔物毎に決められたアイテムを落す。稀に、本当に稀だけど魔石が落ちてたり使うと魔法を覚えられたりするアイテムが落ちたりするよ。けどそんなアイテムはすごく大きいダンジョンですごく深い場所にしか落ちないからこのダンジョンではないと考えて良いね。」
「受付はダンジョン運営会がやってて一回ダンジョン内で採取したアイテムを全部買い取ることになってるの。これは例外はないからね。昔拾ったアイテムを隠し持っていた人が居たけど厳罰に処されたよ。ダンジョンに入る際に大きな袋を一袋以上貸し出すからそれに全部入れてくれるとこっちは助かるな。貸し出す袋の数に上限はないけど浅い場所で採取する分には2袋で十分だね。とりあえずダンジョンで拾った物は全部ダンジョン運営会に出すってことだけ覚えておけばいいよ。それで受け取った物を私達が買い取って君達に報酬を支払うっていう流れ。」
「買取に時に2割が税金として引かれるけどそこらへんはあんまり気にしなくていいわ。ここのダンジョンでは基本的に出てくる敵は2種類になってて、ゴブリンとドブヌートだね。奥に行けば行くほど魔物の階級が上がって強くなっていく。そして落すアイテムも増えたり質が上がったりするよ。このダンジョンはそこまで深くないから奥に行ってもちょっと強いゴブリン程度かな。ただドブヌートはヌートになって肉の臭みが消えるんだ。奥はゴブリンの割合が増えるけど君達には関係ないだろうね。ドブヌートは倒すと死体がそのまま残ることがあってそれをここでは8大銅貨で買い取っているよ。ドブヌートは生ものだから自分でドブヌートを倒してから半日以内の物じゃないと買い取れないよ。ドブヌートが落すアイテムはそれだけだね。」
「ゴブリンはー、なんと棍棒、短剣、それとすごく稀だけど普通の武器を落すよ。棍棒は1小銅貨、短剣は16小銅貨、普通の武器はなんと最低でも約30銀貨!質が良いともっと高くなって魔法武器だった場合は数倍にいいい!ふー、ふー。ゴクゴク。」
ほとんど息継ぎしないで一気に説明していたがルネルは水を飲んで一息入れた。
「という訳なんだ。魔法武器だけど魔物が落すとは別にすごく確率は低いけど使っていた武器に魔法が宿ることがあるよ。魔法武器は一回ダンジョン運営会で買い取るけど、ダンジョン攻略組合に所属している場合は1人1本だけ買い取ることができるよ。君達はその権利はないけど魔法剣なんて持ってたら殺されて奪われるから持ってない方が安全だよ。たまーに決まったアイテム以外が落ちたりするけどとりあえず私達に出すこと。ダンジョン内で出たアイテムで自分の手元に残したいって場合は税金分の2割を支払うと買い取ることができるよ。ポーターを雇う場合もあるけど君達は止めておいた方が良いね。簡単な説明はこんな所だね。」
「次は注意点を言うよ。ダンジョン内で他の人と争わない。これは絶対守って。場合によっては許可取り消しになるよ。慣れないうちは浅い所で戦うこと。ダンジョンの中は真っ暗だからライトは命綱だよ。ダンジョンの中が明るい場所もあるけどほとんどのダンジョンは真っ暗。魔力が切れたときの為に松明を用意すること。ダンジョンの中では魔法はあっという間にダンジョンに吸収されちゃうから注意してね。ライトも普段の倍は魔力を使うと思った方がいいよ。ライトが切れて全滅なんてよくある話しだからね。これで以上だね。質問はある?」
ルネルはまた水をゴクゴク飲み始めた。
「もし自分で使いたくて現物を受取る場合はドブヌートは2大銅貨ですよね。それが棍棒の場合はいくら払えば受取れるんですか?」
「ドブヌートの受取りは基本的に一匹までで値段はそれで合ってるよ。棍棒の受取りは一本のみ無料。2本目から1小銅貨。短剣とかも大量受取りは駄目。受取りは自分で使う分だけになるね。転売とかばれたら許可取り消しの刑!」
「はい。」
「他に質問は?・・・・・・ないかな。今日はダンジョンに潜っていかないよね?」
「早くても明日からの予定です。」
「うん。その方が良いよ。君達は本来すごく苦労した人しか入れない場所に入れるようになったんだから色々と気を付けなよ。以上!」
ルネルは喉を鳴らして水を飲み干した。
俺達はルネルに建物内を軽く案内してもらったあとに教会へ帰った。
帰り道の途中で俺はふと気が付いて周りを流し見た。
ちらほらと水売りが居たがみんな子供だった。
孤児院の子供のようだ。
思い出してみるとみんな痩せ細っていた。
俺は自分達の運の良さを噛み締めながら彼らから目を逸らした。
高揚していた気分があっと言う間に冷めていくのを感じるのだった。
「すごく疲れた。けど明日からはダンジョンに入れるな。」
「そうだね。よし、明日の為に訓練だよ!ロッシュ行こう。」
俺とラピアは外に引っ張り出されて訓練をした。
訓練は夜の鐘が鳴るまで続けられた。
俺達は夕食の後に明日から借りた部屋を移る事をみんなに伝えた。
残ったエル村に行く子供達は援助物資を受け取ったら村に帰るようだ。
グロウもエル村に住民登録して今は特別に日雇いに参加している。
夕食後、村の子供達といつもより長く話し合った。
ここからは俺達は別々の道を行く事になる。
俺達は教会での最後の夜を語り明かしたのだった。
朝が来た。
俺達は起きて朝食を取った後に別れの挨拶をした。
「グロウ、俺達はこれから別々になるけど子供達は頼んだぞ。」
「わかった。エル村の方は俺に任せろ。」
「無駄遣いはするなよ。ルッタを大事にしろよ。あんま食い意地張るなよ。」
「食い意地は難しいな!ロッシュもがんばれよ。」
「おう。」
俺達は強く握手をした。
その後、俺達は子供達みんなに見送られつつ教会を去った。
「ラコス、ダンジョン最初の一回目は一緒に行くか?」
「ウカリス、どうする?」
「一緒に行きたいな。」
「よし、行こう。」
俺達はダンジョンへ向かった。
ダンジョンの建物の入り口で兵士に止められたが登録板を見せて中に入った。
今日はメリ以外はみんな棍棒を持ってきている。
俺達は受付へ向かう。
『おはようございます。』
俺達が挨拶すると周りの冒険者は奇異の目で俺達を見ている。
俺達は登録板を提示すると受付はそれを調べた。
「袋はいくつにしますか?」
「1袋でお願いします。」
俺達は3人で1袋、ラコスとウカリスは二人で1袋を借りた。
俺達は受付けを済ませるとダンジョンの入り口へ向かう部屋への扉を開いた。
扉を開くと洞穴のようなダンジョンの入り口があり、その周りは地面が剝き出しになっている。
ダンジョンの入り口には兵士が背筋を伸ばして直立している。
近付くとダンジョンという名の魔境から魔素が滲み出しているのが肌でわかる。
俺達はこれから魔境に入るのだ。
俺は無意識に喉を鳴らした。
そして俺はライトを唱えてから真っ暗なダンジョンに足を踏み入れた。