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「ゴーン。」


俺達の今後を決める最終日だ。

俺は食事を終えると言った。


「今日中に自分の今後について決めておくように。まだ決まってない人は他の人に相談して決めてくれ。エル村はグロウ、タウロ開拓団はエスタかセリナ、俺とメリとラピアは冒険者になる為にここで働くことにした。今日は年長組の仕事が無いが各々することがあると思うので早いうちに相談しにきてくれ。俺達に相談があるならこれが終わったらすぐでいい。」


俺が朝の恒例の話しをして解散した。


グロウにはルッタが迎えに来ていたのでとりあえず冷やかしてやった。

その後2人相談に来たが年少組だったので特に拘りがなければタウロ開拓団で成人まで鍛えた方が良いと言っておいた。


相談者もう居ないようなので俺達は町に買い物に出た。

思えば買い物なんて初めてだな。


「まずはマントか。マントとなると市場じゃなくて店を構えている所で買ったほうがいいかな。」

「そうだね。」


ラピアもメリも始めての買い物で嬉しそうだ。


俺達は買う物が決まっていたので昨日のうちに売っている場所を教会で聞いておいた。

お勧めは2店あったので両方見ることにしよう。


俺達は目的の店に入った。

店員は俺達を見ると顔をしかめた。


「うちは子供の遊び場じゃないよ!」


俺は銀貨をチラつかせた。

店員は黙ったが俺達をジロジロと見ている。


教会で紹介されたと言えばもう少しましになるのだろうがそう言ったら何か買わないと紹介してくれた人の面子を潰すことになる。

面倒だと思いながら目ぼしい物を調べた。


最初は店員の態度に面を喰らっていたラピアだったが今はもうお目当ての物を探すのに夢中のようだ。

ラピアは俺達が買う予定の物を見ているがメリは魔獣の皮のマントに心を奪われているようだ。

触ってみて感触を確かめている。


店員に睨まれているがどこ吹く風である。

俺も調べてみているがどの種類の生地なのかどういう利点があるかまではわからない。


勉強不足だな。

村だったら本を見るか、もしくは大人に聞けば誰かしら知っている情報だっただろうが、今はその情報を得る手段はない。


ラピアはとりあえずの下見は終わったようだ。

俺はメリに声を掛けて店から出た。


結局何も買わなかった俺達に店員は舌打ちをした。


「嫌な店員だったな。」

「私が店を見たときは大人と一緒だったからここまではひどくなかった。」

「次の店に行こう。」


店員の態度は悪かったが二人とも気にしていないようだ。

みんなこんな感じなのか・・・・・・。

俺達は次の目的の店へと向かった。


次の店でも同じような感じだった。

俺は仕方なく銀貨をチラ見せさせて黙らせた。


ラピアは熱心に俺達に合うマントを探している。

メリはまた俺達が買えない様な高くて珍しいマントに目を奪われている。


ここでも変わらず俺達は店員に監視されているが2店目ともなると慣れた。

俺がマントを見ているとラピアに呼ばれた。


「ロッシュ、2店見た所、私達が買える物ではこっちのほうが高くて質が少しいい、最初の店は安めで質はいまいち。どっちにする?」

「うーん。俺はいまいち布とか皮には詳しくないから今回はラピアにまかせたい。」


俺は一応メリも呼んだ。


「ラピアにまかせるよ!どっちかと言えば丈夫な方がいいな。」

「うん。じゃあここにしようか。合わせてみるから二人ともこっちに来て。」


俺達は立っているだけだったがラピアはマントを合わせながらうんうん考えている。

早く終わらないかなあと俺とメリは突っ立っていた。


「これに決めたよ。お値段は3銀貨6大銅貨だね。」

「俺が値切ってみるけどどれくらいの値段まで下がるかな?」


「お買い物は始めてだから私もわからないなあ。」

「あんまり安くならなかったらごめん。やってみる。」


俺はフード付きのマントを3着持って俺達を監視していた店員に持っていく。

店員は1着かと思っていたのに3着持ってきたので訝しげな表情だ。


「これ3つね。まとめるから1着につき2銀貨6大銅貨でいいよね。」

「おいおい、坊主それはないだろ。」


「さっき見た他の店だとそれくらいだったよ。」

「そりゃ坊主、質はこっちのがいいからだ。」


「それはそうだけど少しだよね。」

「まけても3銀貨4大銅貨だ。嫌ならそっちで買いな。」


「教会のベラさんからの紹介でいい店だって言われたから来たんだけどなあ。」

「おいおい、そういうのは先に言えよ。3銀貨2大銅貨だ。」


「2銀貨10大銅貨、俺達はこれから町で働こうと思っているんだけど見ての通り裸一貫だから色々と物入りなんだよねえ。」

「ちっ、今回だけだぜ3銀貨だ。これでいいだろ。次もうちで買えよ。」


「そんなところか、じゃあ3銀貨で。」

「毎度あり。」


俺はラピアとメリに合図すると堂々と店を出た。店を出るとドッと疲れが出てきた。


「緊張したしこれは疲れるな。こんなにお金を使うのは初めてだ。」

「なかなか様になってたよ。」

「次は私もやりたーい!」


あとはメリとラピアにまかせようと思った。


俺達はマントを羽織ると温かくて元気が沸いてきた。

そして次の目標となるかばんを探し始めた。


店を回り市場を回った結果、市場で付けても両手が使える形の中古の背負い袋を8大銅貨で買った。


色々な所を回った所、木の靴は6大銅貨以上、ドブヌートの皮靴は数が出回っているので安く、2~3大銅貨だった。

俺はもう途中から疲れてきたがメリとラピアは全然疲れ知らずで楽しそうだ。


ドブヌートの皮で作られた小さい袋を2大銅貨で俺とメリの分を買った。

この分だと靴もドブヌートの皮靴になりそうだ。


ヌートの毛皮は品質が良いが、ドブヌートの毛皮はそれより劣る。

しかしそれでもその毛皮は服に使われている。


そしてその皮の切れ端が靴などに使われているようだ。

その内、服もドブヌートの服になりそうでゾッとした。


ダンジョンでドブヌートが出るのでドブヌートの肉と皮は庶民の味方のようだ。

安い分には俺達にとって得だからいいか。


その後お椀とスプーン、縄などを買った。

最終的には合計で5銀貨近く使った。


俺は一瞬の内に銀貨が消え去った事に恐怖したがゴブリンで銀貨を回収できなかったらマントすら3人分買えなかったのかと思うと寒々しい思いがした。


今までいつも3食だった俺達は昼になるとお腹が減ってきた。


「今日くらいは贅沢するか。何が食いたい?」

「ドブヌートの串焼き!」


メリが元気よく答えた。

屋台からの泥の匂いの混じった肉が焼ける匂いが俺達の胃を刺激する。


この前食ったのは塩を振っただけだったけどまあまあ美味かったな。

露天の串焼きはたれがたっぷり付けられている。


「食べるか。」


俺達は屋台に向かった。

ドブヌートの小さい串焼きと大きい串焼きがあって小さい方が一本1小銅貨、大きい方が2小銅貨だ。

大きさ的にも大きい方が小さい方の2倍って所か。


近くの屋台では鳥肉の串焼きがあるが小さい串焼きで2小銅貨だ。

鳥と比べるとドブヌートの安さがわかるな。


俺達は大きい串焼きを1人一本買った。


泥臭さはあるもののたれのお陰でこの前食べた物より食べ易くなっていた。

ガツガツと食べてあっという間に串焼きは無くなった。


美味かったがこれは毎日は食べられないな。これで2小銅貨。

大きな串焼き2本で4小銅貨。


4小銅貨あれば黒パンが一個買える。

同じ4小銅貨だったら黒パンのほうが腹に貯まるな。


それでも黒パンを毎食一個だと3大銅貨。

一日の稼ぎの半分は消える。


今までは食べる事に付いて全く注意を払わなかったが一日3食と言うことの偉大さを知った俺であった。

屋台では同じ種類の物は同じ値段のようだ。


どこへ行ってもポリジは2小銅貨、ドブヌートの小さい串焼きは1小銅貨である。

値段が固定されているようだ。


パンの値段が固定されているのと一緒か。


パンは1個1大銅貨で、黒パンが450g、中級パンが300g、白パンが225g位らしい。

どこへ行っても同じ値段だからわかりやすいが良い店と悪い店で明暗が分かれるな。


普段よく食べる物はちゃんした店を探す必要があるな。

その後俺達は屋台や市場を冷やかして歩いた。


どうやら水は桶一杯で1小銅貨のようだ。

水に金取るのか。

町は面倒だな。


川の位置を調べたが身分証明になる物がないので町の外に出ることは止めて置いた。

メリとラピアは一応身分証明書を持っていたが、急いでいたのでミュッケ村に忘れてきてしまったそうだ。


俺達は夜の鐘が鳴る前に教会に戻った。

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