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30話

俺達は早くもゴブリンの死体を見つけた。

というかそこらへんにいっぱいある。


「ガッ」


俺はゴブリンの死体の首を折った。

首が繋がっているゴブリンは死んだ振りや気絶している可能性があるのでしっかり首を折っておく。


俺が首を折ったのを確認するとみんながゴブリンの死体を調べ始めた。

今回は収穫はなしのようだ。


俺達はみんなでゴブリンの死体を城門の外へ運んだ。


始まる前は汚れ仕事だと思っていたが宝探しだとわかるとグロウ以外のみんなもやる気が出てきたようだ。

数は少ないが棍棒が残っていたりするので他に何も見つからなくても良いこづかい稼ぎになるだろう。


俺達が首を折っているのを見て、周りの町民や冒険者は驚いていたが少し時間が経ってゴブリンに反撃された者が怪我を負ったことを知ると納得したようだ。


俺達は順調に棍棒を集めていき数が増えすぎるとエル村の借りている家に置きにいった。

それにしてもゴブリンの死体の数は驚くほどだ。


特に教会担当になった人は武器も持ち物も剥ぎ取られたあとのただの死体運搬になってただの重労働だ。

城壁付近が一番ゴブリンの死体が多い。


西側はもっと多いのだろうと思うと大変だな。

城壁の付近のゴブリン死体の首を折って軽く剥ぎ取ったあとは、俺達は街中に潜り込んだゴブリンの死体を優先した。


何か持っているとしたらそいつらだからだ。

俺達は一匹一匹を入念に調べた。

そして6匹目にしてついに銀貨を見つけたのだった。


「あ、あったよ。銀貨だあ。」


見つけたラコスはみんなに見せたあと嬉しそうに銀貨の表面を拭った。

どうせ後でみんなで分けるのにみんなすごく悔しそうだ。

俺だって悔しい。


「よし。街中に入っている奴が当たりだな。他のやつにばれない様にしっかり頂くぞ。」


俺達はみんな悪い顔をしながらお互いの顔を見合った。

ゴブリンは小柄だが約30kgはある。


今回の参加者は動ける11歳と10歳だ。

俺とメリ、グロウ、ラコス、11歳の夫婦、10歳の男子1人、女子1人である。


セリナはエスタの看病をしているし、9歳の子供はさすがに体が小さすぎるので回りに文句言われると面倒だ。

俺達だって周りからは小さいと思われているだろう。


4人一組になってはいるがゴブリンを運ぶのは結構大変だ。

それに体臭が臭い。


内臓が出ているとそれに拍車がかかる。

俺達は色々と落さないように迅速に城門の外にゴブリンの死体を並べていくのだった。



俺達は街中に入ったゴブリンを中心に運んだ。

そして俺は運よく小さなナイフを手に入れた。


11歳はみんなナイフを持っているので10歳の男子にそれを渡した。


男子はナイフを恭しく受け取った。

ちゃんと10歳の女子と2人で使うんだぞと言っておいたが男子は今にも頬ずりしそうな様子だった。

それを女子は呆れた顔で見ていた。


いいじゃん、これくらい。


グロウはしれっとカタロに貰っていたので持っていた。

なんて奴だ。


「ゴーン。」


鐘が鳴った。


俺達は休憩があるかわからなかったので今剥ぎ取りをしっかりやったあとゴブリンを運んだ。

俺達が城門の外に出ると人が集まっている。

俺達はまずゴブリンの死体を並べ、集まっている人のほうに行った。


「これより町長ネポス様からお前達に黒パンを配給する。感謝して食べるように!」


俺達は人混みから少し離れて手と腕を水魔法のウォータで洗った。

体全体を洗いたかったがなにより早く黒パンを食べたかった。


俺達に黒パンを渡す兵士は少し不満そうな顔をしていたが黒パンをもらった俺達はそんなこと気にならなかった。

いや、若干むかついた。


俺達は黒パンに齧り付いた。

ここでも10歳組は水筒が無かったのである俺達が貸した。


「みんな聞いてくれ。ちゃんと疲れた顔をするんだぞ。一生懸命働いて疲れた顔だ。これから宝探しに行く顔じゃないからな?」


そういうと俺達はみんなで疲れた顔をした。

グロウは自分が疲れた顔をしていることがおもしろくて笑いを我慢している。


俺はこうしてみんなで居られるのもあと少しだなと思った。


俺は町に残りたい。

次のスタンピートの為に力を磨きたいってのもあるかもしれないがエル村にいたらスタンピートの影響からは逃れられないからな。


冒険者になればスタンピートから逃げることもできる。

そうするとエル村やグロウ達を見捨てるとは言わないが助けないことになるのか・・・・・・。


他人は見捨てられるが同じ村の子供たちを見捨てたくはないなあ。


スタンピートはだいたい5年周期で起こる。

あのゴブリンの大群がダンジョンから出てすぐなのか別の場所で発生して移動してきたのかまではわからないが5年後にはまた発生する可能性が高い。


「休憩終わり!仕事を始めろ!」


俺達は疲れ果てたかのようにゆっくり立ち上がり同じようにゆっくり町に戻っていく人の群れに混ざった。


町に入ると程よい所で人波から離れて町に入り込んだゴブリンを探した。

午前中に探しただけあってゴブリンの死体の数は減っているようだ。


午後も気絶していたゴブリンに反撃を食らって怪我を負った者が出た。

俺達は町の中に入り込んだゴブリンを粗方運び終えて城壁のゴブリンへと移った。


城壁の上から落されたゴブリンなどは血まみれでぐちゃぐちゃで運ぶのも大変だ。

見なかったことにして比較的綺麗な物から片付けた。


西側担当はもっと大変だろう。

だからといって放置する訳にも行かないのがつらい所だ。

その後は収穫といえば棍棒くらいで金目の物は見つからなかった。


「ゴーン。」


鐘が鳴ったので俺達は城門の外に集合した。


「今日はこれまでだ!明日も同じ仕事があるので参加者は朝から兵の詰め所前に集まるように!報酬を受け取ったら各自解散!」


俺達は報酬を受け取るために並んだ。


俺達は今日の報酬を受け取った。

報酬は6大銅貨だった。


1大銅貨が4小銅貨、1銀貨が12大銅貨、1金貨が20銀貨だ。


俺達はお互いにウォータを掛け合い体を洗った。

魔法で出た水は少し立つと消えるので体を洗うのに最適だ。


エル村の大人に聞いたら7大銅貨だったようだ。

小さいから1大銅貨少なかったのかな。


まじめに働いていたのにやる気が無くなるぜ。

他の日雇いの仕事も7大銅貨で統一されていたらしい。


こりゃ明日の参加人数は減るな。

俺達はまだ最高年齢でも11歳なので日雇いには参加できない。


日雇いの登録は成人の12歳からなのだ。

次の春からならメリ達は12歳の成人としてみられる。


町には村人の年齢を記した名簿があるので嘘もつけない。

明日は今日ほどの追加報酬は難しそうだなと思った。


「みんなちょっといいか?」

「ロッシュ、どうした?」

「教会にはいくらか払った方がいいよな?どれくらい払えばいいと思う。」


みんなが溜息をついた。


「あー、そうか。そうだよなあ。そんなこと考えたくもなかったなあ。」

「カタロさん、いくらくらい払ったらいいと思いますか?」


「うーん。ちょっとわからないねえ。」

「宿一泊と食事一食はいくらですか?」


「宿は大部屋の雑魚寝で4~5小銅貨、黒パン一個1大銅貨、スープ一杯2小銅貨、ポリジは一杯2小銅貨位かな。私も街に出ることが少なかったから間違っているかもしれない。」

「そうするといくらだ?グロウ。」


「俺かよ。」

「次期村長様なんだからおまえはそのうち交渉事も担当しなくちゃならないんだぞ。今はなんか勢いで俺がみんなに指示を出しているがグロウに代わってもいいんだよ。代われ。」


「くっ。大部屋雑魚寝ポリジ2杯で8小銅貨。1大銅貨が4小銅貨だから、2大銅貨は渡さなくちゃならないな。」

「自分の分ならそれでいいが他の子供を入れると・・・・・・。でも2大銅貨でもいいような気がしてきた。多くて3大銅貨、今日の仕事の半分かあ。」


『うーん。』


みんな考え始めてしまった。

村ではお金を使ったことがないのでお金自体持つのが初めてだ。


町に連れて行ってもらったことのあるメリやエスタは違うかもしれない。

しかし俺は考えている子供達を見てハッと気が付いた。


「グロウ、お前は報酬全部食べ物に使う気だな!?」

「いっ。」


考え事をしてニヤけていたグロウが動揺している。


「今のグロウを見て確信した。これは駄目だ!一日に使える金額は1大銅貨とする。それ以上の物を買う時はみんなで相談すること。1日1大銅貨以上使ったのが見つかった場合はお金は没収だ!」

「えー!!」


みんなグロウを恨みがましく見た。


「グロウ君?君はお金を使う前から馬脚を現してしまったね?失敗する前に気が付いて大変助かったよ。グロウのお金はルッタさん預かりとしまーす。」

「うわああああ。」


「グロウの事なら私にまかせてください!」


エル村の大人達を迎えに来ていたルッタは嬉しそうだ。

グロウは好き勝手にさせて置くと心配なのでルッタに監視してもらうのが一番だ。


俺は友達を素早く尻の下に敷かれさせて大変満足だった。


「とりあえず今日は教会への寄付は2大銅貨にしよう。もし無駄遣いしている奴が見つかったら3大銅貨にする。食べ物を買った場合は小さい子に分けること!お金で買った物を見せびらかしたら即没収刑だ。ラコスの戦利品は後で参加者に分配だから絶対ウカリスにあげるなよ!」


ラコスがビクッとした。

そんな俺達をエル村の大人達は笑いながら見ていた。


教会まで近づいてきた。

エル村の人達とはここでお別れだ。


『おやすみなさい。明日もよろしくお願いします。』


各々が別れの挨拶をして俺達は教会へと向かった。


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