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29話

俺は部屋に子供達を連れて行った後、明日の予定をベラに聞きに行こうと部屋を出た。

その時、丁度ベラも俺達に伝言が有ったようで鉢合わせになった。


「明日は何をすればいいのでしょうか?」

「明日は朝の鐘で起床し、朝食となります。その後あなた達働けるものは兵の詰め所に行ってゴブリンの死体掃除をやってもらいます。ラピアは明日も教会で働いてもらいます。」


「わかりました。今すぐというわけではないのですが、一回私達の今後の事で町長のネポス様とお話しがしたいです。いつ頃だったら大丈夫でしょうか。」


「わかったわ。私が話しを通しておくのですぐは無理だろうから早くて明後日以降となります。他に質問は?」

「ありません。よろしくお願いします。」


ベラは確認するとさっさと戻っていった。

こういう仕事は本来エスタがやる仕事なのに面倒だなと思いつつ、今の話しをミュッケ村の子供に話した。


「グロウ、エル村の人達はどうなった?」

「民家を一つ借りられたらしい。今はみんなそこに泊まっている。」


「結構人数居たけど大丈夫なのか?まあ屋根がある場所ならましか。」

「夜は寒いし、金もほとんどないみたいだから民家を借りられただけでも満足だって言ってたぞ。」

「あと・・・・・・。まあ、あれだ。」


急にグロウが言い淀み始めた。


「なんだ、気持ち悪いな。さっさと言えよ。」

「今回エル村では元村長とその一派の金持ち農民達が死んだみたいで畑が余ったみたいなんだ。それで良かったら小さい子供達含めて俺達も村に来ないかって・・・・・・。」


「良い話しじゃないか。お前もなんかエル村の人達と仲が良いみたいだし。年上の俺達はどうにでもなるけど小さい子の事ははちゃんと考えないといけないからな。」


俺は小さい子の問題が解決できそうで嬉しくなったがグロウはまだモジモジしている。


「それで、その。あのカタロさんっているじゃん。みんなで決めてその人が新しい村長になったんだ。」

「うんうん。そうだな。」


「それでカタロさんの娘さんがいたじゃん。ルッタって言うんだけど。」

「居たな。惚れたのか?」


「まあその、結婚することになった。」

『おめでとう!』


みんなグロウの話しに聞き耳を立てていたようだ。

グロウは周りの子供達にもみくちゃにされている。


「はー。あのグロウが結婚かあ。変われば変わるもんだなあ。」


俺はニヤニヤしながらグロウに言った。


「それで何があったんだ?どうしてなんだ?」

「そんなん恥ずかしくて言える訳ねーだろ!」

「皆のものかかれえ!」


再度グロウはもみくちゃにされた。

だが村の大人達が死んでぽっかり空いた俺達の心に新しい光が差した気がした。


「よし。グロウをいじっても意味ないし明日の為に寝るぞ。」


空元気に言って俺達は明日の為に眠る。



「ゴーン。」


腹の底に響くような鐘の音が聞こえた。

朝か。


俺は起きるとみんなの様子をみた。

昨日も眠っていた子も鐘の音に反応を示している。

エスタも微かに反応しているようだ。


「みんな起きろ」


静かに言うとミュッケ村の子供達はエスタ以外は起きた。

魔力切れで昨日丸一日寝ていた子も起きたようだ。

中には目を真っ赤に腫らしている子もいる。


「よし、起きた子は全員食堂へ移動だ。メリ、ラピア、セリナは残ってくれ。町の子を起こす。」


子供達は静かに食堂へ向かっていった。

残ったのはエスタと町の子供達だ。

俺達は町の子供たちを優しく起こして食堂へ連れて行った。


途中、エスタが目が覚めてセリナが飛びついてエスタが悲鳴を上げたのはご愛嬌だ。

町の子供達が席に付くとベラの祈りが始まった。


「いただきます。」


静かな食事だが昨日より子供たちは持ち直したようだ。

町の子供はまだつらそうだが自分で朝食を食べている。


食事が終わると皿を片付けた。

セリナはエスタの分をもらっていって食べさせるようだ。


「俺達はゴブリンの死体掃除に行くがみんなは修道女さんの話しを聞いて大人しくしてろよ。」

『はーい。』


エスタも弱弱しく手を振った。

体の表面の穴は塞いだが傷は内臓まで達しているようでラピアから再度回復魔法を掛けてもらっている。

俺達は借りていた槍を持って兵の詰め所まで行った。


「良い槍だったから返すのが惜しいぜ。」

「そうだな。これを買うとなるといくらかかるのやら。」

「けど私がミュッケ村でもらった剣のほうが質がいいよ!」


メリは自分の剣の自慢を始めた。


兵士の装備は良かったが、冒険者達の武器は遠目から見ても質が悪かった。

防具も最低限だったな。

だがこの槍を返したら俺達はメリ以外は棍棒装備となる。


グロウがエル村の人達のところにひとっ走りして棍棒を人数分貰ってきたのだ。

丸腰で外に出たくないからな。


俺達が兵の詰め所に着くと他の人はまだ少し集まった程度だ。

俺達は近場にいる兵士に兵士長の場所を聞いたがわからないとのことだった。


ある程度しっかりした人に渡さないと俺達が槍を盗んだって事にされる可能性だってある。

俺は誰かいないかと周りを見回した。

そこで1人見知った顔を見つけた。


「ボボロさん、おはようございます。」


ボボロは俺達に話しかけられて若干驚いたようだ。


「ああ、おはよう。どうした。」

「ミデン様から借りていた槍を返したいのですが・・・・・・。」


ボボロは納得したようだ。


「わかった。付いて来い。」


俺達はボボロに付いて詰め所に入っていく。

俺達は周りの兵士にチラチラ見られつつも付いていった。


「ここに置いておけ。」

「はい。ありがとうございました。」

「ああ。」


そういうとボボロは去っていった。

俺はこれで大丈夫なのかと不安になりながら詰め所から出た。


人はまだそれ程集まっていないようだ。

俺達はグロウ達と合流する。

グロウの周りにはエル村の大人達も一緒に集まっていて結構大きめな集団が出来上がっている。


『おはようございます。』

『おはようございます。』


俺達とエル村の村人はお互いに挨拶をし合った。

俺が来たのを知ってカタロさんが話しかけてきた。


「昨日、町長様とお話しをしました。今回の件で、デロス町から復興資金が出ることが決まりました。」

「おめでとうございます。」


村人達も明るい雰囲気だ。

話しは上手く纏まったんだろう。


「グロウの事、よろしくお願いします。」

「おい。ロッシュ、恥ずかしいだろ。止めろ。」


グロウが照れている。

そんなグロウを見て場の空気が和んだ。


俺達が話していると人も段々集まってきた。

人が集まったのを確認するとしっかりとした鉄の鎧を纏った兵士が即席の壇上に上がった。


「これより町の中に残っているゴブリンの死体の撤去を行う。まず、全員を4つの組に分ける。その後その組内で穴を掘る担当と死体を運ぶ担当とに分ける。あとは自分の組の兵士に従え。」


説明が終わると兵士達が集まった人間を4つに分ける。

一組だけ人数が多い所があるがそれはスタンピートが来た西側担当だろう。

俺達とエル村の村人達は北側の担当になった。


「俺達は町の北側のゴブリンの死体掃除をする。穴を掘る担当の物は道具を貸すので穴を掘れ。死体掃除の者は一旦死体を城門の外に集めて、集まったら穴を掘っている位置まで運ぶ。この仕事は町長ネポス様直々の依頼で終わると金銭が出る。まじめに働くように!」


話しが終わると兵士が穴掘り担当と死体回収担当とを分ける。

俺達は死体回収担当のようだ。


エル村の大人達は穴掘り担当に回された。


「では各自移動開始!」


兵士の号令で各自が仕事を始めた。俺は汚い仕事だがちょっと嬉しかった。


「目立たないようにゴブリンの持ち物はしっかり漁るぞ。人目が付かない所から始める。」


俺が小声で言うとみんなハッと気が付いて静かに頷いた。

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