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27話

エル村から逃げる途中に大人抜きでさっきのゴブリンと戦ったとラコスから聞いた。

エスタが大怪我をしていたのはその時に捨て身で止めを刺したからだそうだ。


今回は囮役が居たから俺達が怪我をする事は運よく防げたが次は戦いたくない相手だな。

俺は今更ながら怖くなってきた。

できればもう2度と戦いたくないものだ。


俺が冷や汗をかいているとエル村の人達のほうが騒がしくなった。

俺が注意して見るとグロウが起き上がったようだ。

グロウはエル村の人達にお礼を言いながらも悔しそうに俺達に合流して来た。


「わりい。今回も何も出来なかった。」

「ラコスから話しは聞いたよ。無事で何よりだ。周りを囮にしなけば俺達が怪我してたかもしれないし状況が恵まれてた。」


「エル村から逃げる時も実質前衛はエスタとラコスだったし俺もまじめに鍛えないとな。」

「どうした、グロウ。当たり所が悪かったか?いや、当たり所が良かったか?」


「はー、俺はいたってまじめだよ。今回は駄目だったが次は俺もしっかり戦うから覚えてろよ。」

「気長にがんばれ。」


俺達はグロウが気絶した後の事を説明した。

どうして俺とラコスが守りを固めたら周りを囮にできたのかのくだりは理解できなかったようだ。


と言うより狙ってやった訳ではなく、とりあえず数で囲んで怪我をしないようにしていたら結果的にそうなっただけと暴露した。

隙自体は最初から狙ってたし最終的には囮にしたようなものだから囮にしたと言っただけだ。


けどそう言うとなんかすごく策士っぽくて賢そうだよな。


自信満々で言うと相手が勘違いしてくれる。

けどあんまり賢そうに思われても面倒だしはったりは程々にしておいたほうがいいな。


実際、メリとラコスが開拓村で貰った質の良い剣を持っていなかったら致命傷になる攻撃を与える事はかなり難しかっただろうからメリを温存して正解だったと言える。


俺が使った槍も質は良かったが刃の部分が全部突き刺さるほどではなかったから剣が無ければひどい泥沼の戦いになっていただろう。

考えれば考えるほど怖くなってきたぜ。


町の至る所で人々が歓声を上げ始めると教会に逃げ込んでいた人間も少しずつ出てきた。

俺達はラピア、エスタ、子供達の様子を見に教会に入った。


「大丈夫だったか?」

「う、うん。そのさっきはごめんなさい。」


「いいって。それより子供達は?」

「子供達は奥のほうにいるわ。さっき見たときはまだ寝てたけど大丈夫そうよ。こっちに回されてきたのは比較的軽症者だったけどラピアは魔力を使って疲れて眠っているわ。」


とセリナは言った。


ラピアはセリナの横で丸まって寝ている。

俺達は子供達が眠っている奥へと向かった。

奥への入り口には女性の修道女が居た。


「子供達を入れてくれてありがとうございます。」


俺達が揃ってお礼をすると疲れてグッタリ椅子に座っていた修道女も慌てて立ち上がった。


「いえ!教会は弱い人を守ることをもっとうにしているので当たり前の事です。それにラピアさんには助かりました。」

「入っていいですか?」


「どうぞ。子供達は寝ていますが、魔力切れの子もこのまま安静にしておけば大丈夫です。」


俺達はほっとして中に入った。

中にはミュッケ村の子供以外に町の子供と思われる子供達が寄り添いながら寝ている。

見たところ顔色も悪そうではなかったので少し見てから俺達は出た。


帰り際にさっきの修道女さんにやたらと恐縮されたが気にしないで置いた。

教会から出ると町の空気が緩んでいて教会に避難している人の数も減っている。

俺達はエル村の集団に挨拶に行った。


「さっきはありがとうございました。」


そうするとカタロさんが代表に話しはじめた。


「私達を守ってくれてありがとうございます。」

「俺達にできることは少ないですが出来ることがあれば言って下さい。」


「ミュッケ村の方々にはお世話になりっぱなしで・・・・・・。ミュッケ村の人が身を挺してくれなければ私達はゴブリンの餌になっていました。こちらこそ出来ることがあれば何なりと言って下さい。」


村長含め村人達は深々とお辞儀をする。


「カタロさん。そんな他人行儀は止めてくれよ!これからも仲良くしてくれ!」


グロウがそういうと村人達も笑顔で答えた。

グロウが良いこと言って俺は逆に不安になってしまったがグロウも成長してるってことなのだろう。


「町の各所で炊き出しをしているらしいのでみなさんも行って見てはどうですか。」

「昨日から腹ぺこだよー。」

「俺の方が腹が減ってるぞ。」


メリとグロウはどうでもいいことで張り合いだした。


「じゃあ、行こうか。」


俺達は移動を始めた。

エル村の人達は荷物番も必要なので何回かに分けて行くようだ。


町の大通りに差し掛かると食べ物の匂いがしてきた。

これは嗅ぎ慣れた匂いだな。

そう、ポリジだ。


グロウは露骨にガッカリしているが俺達は炊き出しに並んだ。

器とスプーンを借りてその場で食べて返した。

ポリジは相変わらず不味かったが体にはジワリと温かみが戻ってきたようだ。


「他にないかちょっと探してみようか。」


俺がそういうと町長の家の方角へ向かった。

町長の家に進んでいくと良い匂いがしてきた。


「あ、これドブヌートだ!」

「肉か!おっしゃあ。」


グロウが急に元気になりながら言った。


「けどドブヌートは泥の味もするから慣れないときついかもー。」


そういえばこの町のダンジョンはゴブリンとドブヌートが出るんだったな。


ダンジョンによって出る魔物や魔獣は違うがだいたい2~4種類の敵が出るのが一般的なようだ。

中には数え切れない種類の敵が出るダンジョンがあるようだが近場にはない。


奥に行けば行くほど敵の階級が上がっていき、落とすアイテムの品質も上がるらしい。

中でもゴブリンは武器を落とすので当たりだという話しだ。


ダンジョンに出現する魔物や魔獣には落しやすい物、落としにくい物、稀に落す物など魔物の種類によってある程度決まっている。

ゴブリンは落しにくいが棍棒や短剣を落すので美味しい魔物とされている。



棍棒は薪になるし、短剣は武器として使うには品質が悪すぎるが溶かして鉄として使える。

ドブヌートは死体が丸ごと残るのでこの町ではドブヌートの肉は庶民に愛されているようだ。


「肉ならなんとかなるはず・・・・・・。」


グロウは未知の味に怯えつつも好奇心を抑えきれないらしい。

町長の家の前に俺達は付いた。


「町長ネポス様の御慈悲により炊き出しが行われている。これらは全て町長ネポス様の倉から出された物だ。皆のもの、感謝して食べるように。」


兵士達が五月蝿い位の大声で言っている。

俺達は炊き出しの列に並んだ。


肉の焼ける匂いに混じって泥の匂いがしてきて妙な気分がする。

木の串にドブヌートの肉が小さく切られて4切れ刺さっている。

焼かれた肉には軽く塩が振られている。


俺達は一人2本ずつ肉串を受け取ると列から離れた。

食べてみると口の中に泥っぽい臭みが広がったが腹が減っているので我慢できた。


「ウカリスにも食べさせたい。」


ラコスがぼそっと言った。


「ウカリスの目が覚めたらまた来ればいいよ。」


肉を食べたあと俺達を井戸を探して歩いた。


「現在水の使用制限がされている。水は1人コップ一杯までだ。大量に水を使う者は川へ行ってくれ。」


数人の兵士が井戸の周りを守っている。

俺達はまた列に並んで水を飲んだ。


「川は行きたいが、逃げていったゴブリンがいるだろうから無理だなあ。」

「どっちにしろ俺達は川の位置知らない。」

「それより次はトイレだな。」


トイレもまた列ができている。

俺達はウンザリしながら並んだ。


全員がトイレが終わった頃にはもう夕方になっていた。

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