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21話


「こんにちは。俺達は開拓村のミュッケ村の者です。スタンピートが発生し、俺達の村を襲ったので報告に来ました。できれば偉い人を呼んでください。」


俺がそう言うと門番に緊張が走った。


「わかった。お前達の名前は?」

「ロッシュ、メリ、ラピアです。」

「少し待て。」


門番は俺達にそう言うともう1人の門番に声をかけてから、門の中に入っていった。

俺達はその場で待機している。


残った門番は落ち着かずにいるがメリは堂々としている。

ラピアは少し不安そうに俺の背に隠れた。


今頃門番はミュッケ村の名簿を確認して上の人に話しを通しているだろう。

残った門番は俺達に話しかけようか迷っているみたいだが俺達が堂々としているので声を掛けられずにいるようだ。


「ミュッケ村から別に伝令は来ていませんか?」


今の状態を見れば一目瞭然だが一応聞いてみた。


「来ていないぞ。」

「そうですか。ありがとうございます。」


俺はこれからの事を考えると喉が渇いてきたのでメリから水筒を受け取って飲んだ。

メリに水筒を返してデロス町を眺めていると、町の中から慌しい雰囲気が漏れ始めた。


門からしっかりとした鉄の鎧を纏ったお偉いさんがゆっくり歩み出てきた。

彼の後ろにはさっきの門番と他の普通の兵士が着いてきた。


お偉いさんは中々鍛えられているようだ。

ミュッケ村の大人達に比べると劣るが回りの兵士に比べると遥かに強い。


「俺達は開拓村のミュッケ村の者です。スタンピートが発生し、俺達の村を襲ったので報告に来ました。」

「村長の名前は?」


俺は一瞬考えそうになった。

村長はいつも村長と呼んでいるからな。


「エイデ。」

「お前達の名前は名簿で確認できた。とりあえず中に入って詳しい報告をしろ。」

「はい。」


そういうとお偉いさんは踵を返して町の中に入っていく。

俺達もそれに付き従った。


門番や普通の兵士はどちからというと困惑の顔であるがお偉いさんの後を焦って着いていった。

俺達は兵士の詰め所のような場所に到着すると建物に入った。


「俺はこの町の兵士長をやっているミデンだ。」

「私はミュッケ村のロッシュといいます。こっちがメリでこっちがラピアです。」


「とりあえず報告をしろ。」

「今朝突然魔境からゴブリンの群れが村に襲い掛かってきました。ゴブリンの数はざっと数百はいたでしょう。私達は祭りの後の休息日で気が付いたときには魔境からゴブリンが湧き出していました。」


そこまで言って一息ついた。


厳しい顔でミデンは俺を睨んでいる。

周りの兵士は嘘であってくれという顔をしている。


メリは興味深そうに部屋の中を眺めている。


「ゴブリンの中には明らかに強い固体が数体いました。村長はスタンピートの規模は最大級だと言っていました。私達は敵が来てすぐ村を出ました。その後エル村には寄らず直接デロス町に来ました。」


ここで話しを止めたがミデンは口を挟まずにいる。


「ミュッケ村の動きは大人を二つに分けて防衛と子供や戦えない人を守って北のエル村に行く組に分かれました。上手く逃げ切れていれば今頃エル村に着いているでしょう。私が知る情報は以上で終わりです。」


ミデンは何か考えている様子だったが俺達に質問をしてきた。


「エル村に寄らなかったのは何故だ。」

「大人達にデロス村に直接行けと言われたからです。」


後は察してくれ。


「敵のゴブリンの強さは?」

「敵のゴブリンの強さは魔境で見かけるゴブリンと同じで弱いです。ただ数は居ました。敵襲に気が付いてから少し経ってすぐに強いゴブリンが村に着いたので強い固体も混ざっています。ゴブリンファイターなどは見たことが無いのでなんとも言えませんが普通のゴブリンより2、3段階位は強そうな様子でした。特に体の大きい一体は村長でも苦戦する強さでした。」


「あと・・・・・・。逃げる時に弱いゴブリンに矢を射られたましたが思ったより錬度は高かったです。」


メリは話しに飽きてつまらなそうな顔をしている。

ラピアは不安そうな顔をしていて一言も話さない。


「これで最後だ。何故お前達が伝令に来た。」

「広場に一番最初に到着した若い夫婦が私達だったからだと思います。それに私達は子供の中では体力がありますから。」


ミデンの顔を見るが一応納得したようだ。

夫婦と聞いて他の兵士達は驚いた顔をしている。


メリは何故か得意気である。


「お前が言ったことが本当だと一応信じることにする。エル村に早馬を2人出せ!エル村に到着したら1人は報告に戻り、1人はスタンピートを探れ!緊急の鐘を鳴らして敵襲に備えよ!」

『はい!』


兵士達が慌しく動き始めた。

兵士達が去ると部屋には俺達とミデンだけとなった。


「お前達は早馬が戻るまではこの部屋から出すことはできない。ここで大人しく待機していろ。」

「はい。」


「私達は朝から水瓜しか食べていません。何か食べ物を頂けませんか。」


メリが遠慮しているようでしないで食事をねだった。


「ふん。とにかく部屋からは出るなよ。」


そう言うとミデンは退出した。

俺はドッと疲れて溜息をついた。


ラピアも不安そうな顔をしているがミデンが居なくなったので少しほっとした顔をしている。


「ミュッケ村から順調に逃げてきたなら早くて今日の夜か明日の朝にはデロス町に着くな。俺達は体力を回復させておこう。」


俺はそう言うと俺の体には大きすぎる椅子にもたれ掛かって目を閉じた。

メリは暇そうに椅子をキイキイさせているが手持ち無沙汰のようだ。

そうしていると足音が部屋の前で止まった。


「入るよ。」


中年のおばさんがトレイに黒パンとスープを乗せて部屋に入ってきた。


「兵士長様からだよ。お食べ。」


『ありがとうございます。いただきます。』


俺達3人はすぐ食べ始めた。

黒パン一個と野菜が少し入った味の薄いスープだが朝から走り通しでほとんど水瓜で腹を誤魔化していた俺達にはご馳走だ。


あっという間に平らげてしまった。


「ふう。一息ついたな。」

「ロッシュ、またすぐ寝ちゃうの?」


メリが物欲しげに見てくる。


「スタンピートが確認されたら西側の城壁で夜にライトを使う係りを志願しようと思う。ライトがあれば暗くなっても村の人達が来た時にわかりやすいだろ?」


「なるほど!私は?私の係りは?」

「魔法を使う俺とラピアの護衛。」

「護衛か。しょうがないなー。」


メリがすることはないが護衛と言われると満更でもないらしい。


「だから今はしっかり休憩だ。」

「わかった。」


メリは大人しくしてくれるそうだ。


俺も今のうちに出来るだけ休んでおこう。

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