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20話

「あった。あったよ!」


メリが嬉しそうな声を上げる。


「街道に着いたね。」


ラピアはほっと安心したようだ。


「良かった。順調そのものだな。」


俺も安心した。

下手すれば後何時間も不安なまま走り続けないといけない可能性もあったからな。


「水瓜ないかなー。出ておいでー。」


メリが目の上に手をかざしながらキョロキョロしている。

俺も水瓜を探すが付近には見当たらない。


「もう少し移動してみて水瓜が無かったら休憩しようか。」

「そうだね。私の水はあと2回分位残ってるよ。メリの水筒の中身次第だけどロッシュも飲むとあと1、2回分だね。」


「それだと水瓜は見つけた方が良さそうだね!」

「水の残り具合と俺達の腹具合を考えると水瓜を見つけた方がいいか。見つかるまで粘ろう。」


『了解。』


安全を期すなら街道から少し離れたところを併走したいところだが水の残り量を考えると街道を走りながら水瓜を見つけたほうが良さそうだ。

俺は水瓜見つかれよと念じながら走った。


道が踏みしめられているので今までで一番走りやすい。


「あった。あった。水瓜ちゃん、発見!」

「やった。」


メリが水瓜を見つけて駆け寄った。


「いやー。水瓜ちゃんは本当旅のお供だよねえ。」


メリは水瓜に頬ずりしながら言った。

大人の両手の手の平位の大きさの水瓜が4個生っている。


「4個もあるじゃん。一個残していっても3個取れる。」


水瓜の時期もそろそろ終わるので種分に一個残しておけばいいだろう。


「はいはいー。切り分けるよ。ラピア、はい。ロッシュ、はい。」


メリが器用に水瓜を3つに切り分ける。


『ありがとう。』


俺は水分をできるだけ零さないように水瓜に齧り付いた。

ラピアはナイフで小さく切り分けて食べている。メリは水分を撒き散らしながら豪快に貪っている。


「喉がからっからだったから染み入るわー。」

「美味しいね。」


「うんうん。」

「あと2個あるけどどうしよう。一個はラピアの袋に入れるとしてもう一個は食べちゃう?」


「二人が今食べるなら食べてもいいし、食べなくていいなら俺が持つよ。ただ魔物とかが来たら放り投げるからね。」

「えー。投げちゃうのお。勿体無いよー。」


「じゃあ、食べちゃう?あと2、3時間は走らないとデロス町に着かないよ。」

「このまま街道沿いに行けば新しいのを見つけられる可能性もあるし、水分を補給できたから街道から少し離れて移動してもいい。二人はどっちがいい?」


「私は街道そのままでいいと思うな。それで水瓜はあと一個食べちゃう!」

「私はどっちでもいいな。メリが街道沿いでいいならそれでいいね。」

「はいよ。じゃあもう一個食べちゃおうか。」


俺達は水瓜をもう一個食べる事にした。

これだけ食べれば後は水瓜だけでデロス町まで行けそうである。


「ごちそうさまー。」


メリは1人だけ素早く食べきって辺りを見回り始めた。


「あんまり遠くに行くなよー。」

「はいはーい。」


俺とラピアはゆっくり水瓜を食べた。

このまま行けば夕方になる前にデロス町まで行けるだろう。


「食べられそうなのは何にもなかったよー。」


メリが俺達の所に戻ってきた。


「よいしょっと、そろそろ出発しようか。」

『うん。』


その後何箇所か水瓜を見つけたが、食べたばかりだったので俺が一個手に持っただけでそのまま進んだ。


「水瓜一個持つだけで走りづらいなあ。」


片手に盾を持っていてもう片方の手で瓜を持つのでいつ滑り落ちるのかと心配になる。

脇に抱えると走るのにバランスが悪くなるから面倒だ。


「町に近づけば水瓜の量も増えるだろうし、これ以上は持たなくて大丈夫だね。」


俺達はさっき食べた水瓜の種を所々に蒔きながら走った。


このうち数個がしっかり育てばまた来年には実がなる。

そうやって街道沿いには水分補給用に水瓜が増えていくのだ。

それによって獣や魔物が近づいてきやすくなるがそれはしょうがないな。


何度も同じ道を利用している人は水瓜の減っている量で道の通行量を計ったりするらしい。

そういう人は街道沿いにある水瓜ではなく少し離れたところに種を蒔いておいて自分はそこの場所で取るようだ。


俺はこの道を通るのが初めてだからわからないが中々おもしろいと思う。

道端にある水瓜はどれも複数個以上残っているのでこの道があまり使われてないことがわかる。


最初はすごく貴重に見えた水瓜ももう見慣れてしまった。

次の休憩では水瓜は補給しなくていいなと思った。


「休憩しよっか。」


メリが走る速度を緩めながら行った。


「はいよ。」

「うん。」

「水瓜もいっぱいあるし今持ってる二つを先に食べちゃおう。」


2人は頷く。

俺は片手に持っていた水瓜を3等分するとメリとラピアに手渡した。


『ありがとう。』


メリは相変わらずガツガツ食べている。

早く食べて周辺を調べたいんだな。

ラピアはそれを見て水瓜を食べる前に自分が持っている分を取り出して3等分にした。


「ラピアありがとう。」


すごい勢いで食べ終わるとメリは周囲を調べに行った。


「メリは余裕があるなあ。」

「うん。すごいね。」


俺達はゆっくり水瓜を頬張った。


道が踏み均されているお陰で走る速度も出るし、疲れも少なくてすむな。

しかし朝から走っているせいでラピアには疲労が色が見える。


俺とメリはラピアに合わせているお陰でそこまで疲れていない。

特に俺はメリと違って周辺を見回らずに体力回復に努めているからな。


疲れているラピアを置いてウロウロできない。

食料的には途中で兎を食べられたので町までは十分だな。

あとは水瓜を食べて空腹を紛らわしておけばいい。


「収穫な~し。」

「メリ、ここら辺に見覚えあるか?」


「あるけどデロス町までは距離はわからない。」

「そうか。まあ十分だな。道さえ合っていれば後は走っていれば着く。」


「ミュッケ村から足の早い伝令が出てれば合流できる可能性があるけど今のところそういう気配はないね。」

「みんなちゃんと逃げてるといいけど・・・・・・。」

「ああ。」


急に俺達の会話は止まった。

今まで考えようとしていなかった事がデロス町に着くとなるとジワジワと気になってくる。

俺はその想像を考えないように振り払いつつ言った。


「俺達の仕事はちゃんとデロス町についてスタンピートの事を伝えることだ。色々考えるのは町について報告が終わってからだ。」


自分でも難しいなと思いつつも今不安に押し潰されている場合じゃない。

盗賊や魔物が出る可能性があるのだ。


「パンッ。」

「よし。デロス町までがんばろう。」


メリは手を叩くと立ち上がった。

ラピアと俺もそれに倣って立ち上がった。


メリが元気よく走り出す。

俺はこれじゃあラピアにはつらいんじゃないかと思ってラピアの顔を見ると不安そうではあるが顔は前を向いている。


俺も不安だしいいか。

いざとなったら残っている魔力を使ってデロス町まで走り抜けてもいい。


ここまで魔力を節約できたので余裕のある立ち回りができるはずだ。

俺達は不安を考えすぎないように走った。


俺もメリもさすがに息が荒くなってきたので俺は休憩を提案しようとした。


「町だ!」


そのメリが叫んだ。

ラピアは走ることに没頭していたがメリの声で周囲を見回した。


「やった。着いたぞ!」


俺もつい嬉しくなってしまった。

俺達は足を緩めずそのまま走り抜けた。


デロス町は高さ5m程度の城壁に囲まれた町で俺達の村の数倍の広さがある。


デロス町の門番も俺達を確認したようで緊張が走っている。


俺達は町に着く手前で一旦走るのを止めてゆっくり歩いて近づいた。

緊張していた門番も少し緊張を解いて俺達を見ている。


メリはやり遂げた顔をしているがラピアは逆に思案顔になっている。


「うーん。説明は俺がしようか。もし足りなかったらラピアが補足して。」

「うん。」


メリはもうすっかり他人事で町を観察している。


俺達が近づくと門番が前に出てきた。


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