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2話

俺の村ので生活は鐘の音から始まる。


「カーンカーンカーン。」


朝の鐘が鳴り、一日が始まる。

俺は起床するとまだ寝ている年少、年中組を起こす。


「おはよう。朝だぞみんな起きろー。」


年少組はまだもぞもぞしている子がいるが年中組は寝ぼけ眼をこすりながら起きはじめる。

メリ、ラピア、グロウも起きて各々順に端から年少を起こしていく。


「みんな起きたら村の広場に行くぞ。」


みんながとりあえず起きたことを確認して俺達年長組はまだ起きているのか寝ているのかわからない年少組の手を引いて移動を始める。


ミュッケ開拓村では朝起きたらみんなが村の中央の広場に集まる。

年少組の歩行速度に合わせてゆっくり歩き、広場に到着すると大人達は自分の仕事の割り振りを確認して各自移動を始めている。


俺達は広場にある木の掲示板に集まり、板に書かれた今日の各自の仕事をチェックする。

年中と年長組は畑の水遣り、年少組はそろそろ収穫時期が終わる水瓜の収穫だ。


水瓜は名前の通り水分が多めの瓜で甘い香りがしてすこし青臭いが味はほとんどしない。


ミュッケ開拓村の近くには川があるが川の水はそのまま飲めないので飲料用の水は井戸だけになってしまう。

何をするにも水は使うので開拓村では水は貴重なのだ。


それを補う為に水分補強に水瓜をそこらじゅうに植えているのだ。

水瓜には種類が色々あるがミュッケ開拓村では味がないが冬まで持つ物が植えられている。


保存が利くので冬の水分補給にも使え、家畜の飼料にもなる。


なので村々の間の道を歩いてると水瓜の植えられている頻度で村への近さが予測できたりする。

しかし水分補給用なので栄養価は少ないため、水瓜だけ食べていては痩せ細ってしまう。


各々の朝仕事をチェックした後は家族のいる子供達と孤児の俺達が合流して仕事場に向かう。


まず窪みが等間隔にある太い棒一本と桶4個を倉庫から各々持って川へ移動する。

川には監督の為の大人1名がいて年中組は近場の畑、年長組は遠めの畑を指示され各自走って移動を開始する。


棒に桶を4つ付けて走るとどうしても水がこぼれてしまうがそれをこぼさず素早く走ることも訓練だ。

慣れてない年中組が桶をゴトゴトさせて水をこぼしながら賢明に走っている横を慣れた年長組は安定してスイスイと素早く移動していく。


これを何度も繰り返して肌寒い空気の中、汗が少し出来てたところで朝の水遣りは終わった。各自使った道具を倉庫に返して食堂に集まる。


食堂には仕事を終えた大人や子供が集まっていて配膳もそろそろ終わりそうである。

俺達は子供用の席に着くと人が集まるのを待つ。


だいたいの人が揃ったところで村長が合図して朝食が始まる。


今日も朝は器にしっかりともられたポリジ(麦粥)だ。

ただでさえまずいポリジの中には大麦以外にも何か良くわからない草や根、実が入っていてすごくまずい。


俺が村長になったら朝は毎日最低でも黒パンにするね。


それ以外には蒸したかぼちゃ、塩を軽く振ったかぶ、水瓜があった。

俺はかぶを食べて塩のありがたみを堪能した。


塩は貴重だから濃い味付けのものは特別な日以外は中々出てこない。


それでもポリジのお陰でそれ以外の物は何を食べても美味しく感じる不思議。


年少組は渋い顔をしながらポリジを啜っているが食べ物を残すなどと言う贅沢はこの村では許されないので時間いっぱいかけて食べさせられるだろう。


食べ終わった者は食器を片付けつつ午後の弁当として黒パン半分を受け取る。

大人は黒パン一個なので黒パンの為に早く大人になりたいと思う。


黒パンを恭しく受け取り腰の袋に丁寧に入れた後、年中と年長組は揃って村の広場の掲示板で次の仕事を確認に行く。

途中に今もらったばかりの黒パンを取り出して齧りながら行く不届き者が出てくるがそういう奴らには昼飯時に目の前でゆっくりと黒パンを噛み締めてやろう。

掲示板に付いて次の仕事をチェックすると次は開拓の手伝いだった。


開拓の手伝いといっても俺達がすることは開拓の合間に生じる雑務をやることくらいだ。


木を切り倒した時は売り物にならない枝葉の部分を集めて移動する。

木の根を掘り出す時は引っ張るのを手伝う。

畑を耕す時には石などを移動する。


魔法を使うこともあるが精々、木の根を燃やしたり地表にある雑草を燃やしたりする位だ。


魔境は魔素が強いので全てのものが硬くて重い。

ミュッケ開拓村で生まれた俺には比較対象が少ないが大人達は皆、大変だという。


魔素の影響で土は固くて、重い。

そんなところに余計に硬くなった木が硬い根を一面に張り巡らしているので木の根を処理するだけで一苦労だ。


木の根を燃やす時は木の根がある程度燃えるまでずっと魔法を使い続けなくてならず、魔力が強い者が交代交代で燃やし続ける。


それでも根を掘って引っ張りだすのに比べたら効率的なのだ。

しかし俺達が火魔法を使ったところで火すら着かない。

魔素の影響で燃えにくいのだ。

だからこそ大人達が労力のかかる作業に集中できるようにそれ以外を子供が補強する。


攻撃魔法で根の付近を吹き飛ばす方法もあるが石が砕けて余計作業が大変になったり、もっと硬い土の層に当たったりして結局は根を燃やすのが一番安定している。


このように魔境の開拓は実力社会。

力が無ければ開拓すらままならない過酷な場所だ。

強い者ではないと参加できないのだ。


ここで生まれた俺達は強制参加だけどね。

作業が進み、ついに待望の昼飯時間の鐘が鳴った。


朝に年少組が運んでおいた水瓜を一人一個ずつ受け取りグロウと一緒にいい場所を見つけて座る。


「今日の黒パンは3日目か。明日は一日目のが食えるな」

「そうだな。毎日焼きたてのパンが食いたいもんだ」


俺達はそういいつつも固くなかった黒パンを水瓜を食いながらゆっくり噛み締めた。

ポリジに比べれば硬い所が難点だが噛めば噛むほど味が出て美味い。

しかしたまに砂利などが混ざっているので注意が必要だ。


しっかり休憩時間を取った後、作業が開始される。その後も特に問題なく手伝いが終わった。


次の鐘が鳴ると、大人達は作業を続けるが俺達は訓練の時間だ。


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