138
***注意***
18/02/01
感想に指摘があった通り、137話が抜けていました。
137話を新しく投稿して正しい並びにしました。
感想ありがとうございます。
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最初は俺、メリ、ラピアの3人から1人が出て他の生徒が2人で戦った。
しかし思ったよりも勝負にならずに俺達が勝った。
ちょっと強いゴブリン感覚で戦ってみたが複数で戦った事自体がない様で下手すると一人ずつ戦った方が強いかもしれない。
よく考えたら俺達も複数の戦い方は詳しくはない。
だからこそ、ここで試してみる訳だ。
まず最初にメリ対俺とラピアでの戦いを見せる。
次にラピアを他の生徒と入れ替えて戦う。
慣れるまではこの繰り返しだ。
1人の側はとりあえず動いて有利な位置を取る事に力を割く。
敵が2,3体程度なら位置取りだけで有利に戦う事ができる。
敵が2体の場合は敵が同時に攻撃できないように1体を盾のようして戦う。
1体の敵を中心にして敵2体と自分の位置が直線になるようにするのだ。
理想はそんな形だがそこまでしなくても慣れれば有利に戦う事ができるようになる。
そして何より1対1だと勝敗が個人の強さでだいたい決まるので飽きが来る。
しかし複数戦はその決まっていた強さが再びぐちゃぐちゃになっておもしろい。
現に1人では弱い生徒でも連携が上手かったり1人では強いのに仲間と一緒に戦うと連携が下手だったりして個性が出る。
何より大人数でやるのは楽しい。
楽しいという事は結構重要で本人のみならず周りにも伝播する。
「あー、俺も早くロッシュ達の方に参加してえなあ」
「ディグ、どっちが先に模擬戦に参加できるようになるか勝負だ」
「いいだろう、バルボ。俺の本当の力を見せてやるぜ」
剣を握った事のなかった初心者組も訓練に熱が入った。
「わかった! 俺もしっかり寸止めする」
「え? 今忙しいからもう少しそこらへんで素振りをしていたら?」
「くそっ、はやく俺にもやらせろ!」
「しょうがないな、何回か模擬戦してしっかり寸止めできたらいいよ」
ギールは苛立っていたが模擬戦ではしっかり寸止めをした。
寸止めをさせる為にわざと負けてあげたがそれに気を良くしたギールは調子に乗った。
それでもみんなの模擬戦に参加したかったようでしっかり寸止めをするようになった。
ギールに攻撃される時に寸止めしないんじゃないかと冷や冷やしていた俺の気持ちをわかってほしい。
もちろんすぐに強化をする準備が出来ていたが叩かれるかもしれないと思うと冷や汗が出た。
俺の心労を知ってか知らずかギールは大手を振るって多人数の模擬戦に参加した。
そして他の参加者にぼこぼこに叩かれた。
レニーや俺達がギールを守っていた事がギールにはわかっていなかったようだ。
俺は叩く時は注意して叩いていたが他の生徒には遠慮が無い。
俺達以上に他の生徒達は怒っていたようだ。
だがギールも負けては居ない。
3回当てられたら1回はやり返した。
これで他の生徒も溜飲が少しは下がっただろう。
俺は他人事ながら感心したが本当に怪我をしても困るので止めた。
それでも多人数での模擬戦でのギール狙いは一向に収まらずにいつも最初にギールは有効判定を貰って退場した。
「俺ばっかり狙うな!」
「ギールが強いから狙われるんだな。敵の大将を真っ先に倒すのは当然だろ?」
「そうか。なるほど」
ギールは簡単に納得してくれたのでそういう事になった。
1対1の模擬戦から多人数での模擬戦をするようになると怪我をする人が増えてきた。
農村の出は怪我に慣れていているので多少の怪我も平気だが、町の出は怪我に慣れていないので大袈裟に痛がったりする。
怪我とか痛みに慣れるのも訓練だ。
痛み慣れしていないと軽い痛みでも行動が阻害される。
そういう意味ではギールは良い仕事をしたと言えるがギールも痛がりなので五月蠅い。
恐怖や痛みに慣れてこそ冒険者だ。
この調子だと実戦訓練があるか怪しいので痛み耐性位はつけてほしい所だ。
下手すると格下のゴブリンにびびって負けるなんてことも実戦ではありえる。
ヒールの頻度が増えるという事はラピアのヒール回数が増えるという事だ。
ヒールの練習になって良いがヒールをかけてもらっている男が鼻の下を伸ばしているで尻を蹴ってやった。
最近は俺もレニーの気持ちが少しわかるようになってきた。
農村の出の男の多くは粗野な上に単純で、教育し直したい部分が多すぎる。
自由奔放に適当な感じで育てられてきたのがありありとわかる。
そういう奴は口で言っても聞き流したり、そもそも理解しないので手が出そうになる。
だが俺も同じ生徒なので我慢だ。
ビシバシやっても良いが一度やると次から同じ事をやらなくちゃならなくなる。
無用な責任は負わない方が楽だ。
だからレニーは教育をもっと頑張ってほしい。
俺は腹が立ったのでラピアにヒールする時は気をつけるようにと注意した。
そして他の女の子にやってもらったほうが出会いにもなっていいんじゃないかと屁理屈をこねた。
少しの嫉妬も混じっているが正論だと思う。
優しくすればする程、つけ上がる奴が多いのでもっと厳しくいくべきだ。
「ロッシュ、材木運びって儲かるんだろ。今度俺も一緒に連れてってくれよ」
「バルボじゃ無理だろ。俺も前にやった事があるけど軽めの材木を2往復しただけで次の日は筋肉痛で動けなかったぜ。そもそも2往復がつらい」
「それはディグが軟弱だからだろ」
「なんだと!」
「まあまあ、二人の今の体力だと普通に冒険者学校から斡旋される日雇いやってた方が金になるし楽だと思うよ」
「そういうもんかー。楽して稼ぎたいなあ」
「バルボはまず日雇いに慣れてからにしろよ。この前の日雇いで失敗したのを俺は知ってるぞ」
「あれは俺のせいじゃねえ!」
バルボとディグは俺達と同じで週前半の授業に出ているので日雇いの仕事もほとんど一緒になっている。
ディグは一年間、町で働いたのもあってどの日雇いもそつなくこなしているらしいがバルボは村から出てきたばかりなのでまだ慣れていない。
それでもそろそろ服を新調できるそうだ。
俺達も報酬が良い時は冒険者学校から斡旋される仕事をしている。
下水掃除は一時期だけ人が増えたがまた下火になっている。
結局、俺達が毎回消化している。