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 町中はいつもより活気に満ちている。

冒険者学校に入学する人の関係者なのだろうか。


まるで祭りの様な賑わいにこちらまで楽しくなってくる。

奮発して屋台で豚の串焼きを買って町を出た。


町から少し離れた所でポリジの準備を始める。

時間が中途半端に余ってしまったのでこの後の予定はどうしようか。


とりあえず今後の予定を決めることにした。

まず冒険者学校には1週間の始めの3日の授業を受ける事にした。


始めの3日なら事情があって行けなくなった場合でも残りの日に行けば良い。

多くの生徒はそうやって授業を取るが日雇いの関係で町から離れる場合等には日程がずれこんでしまう。


俺達は日を跨ぐような仕事はしないが大変だなと思う。

その分、稼ぎは普通の仕事よりは良いが生活の調子が乱れるのはあんまり好きじゃない。


魔境で夜を明かす事を考えると贅沢は言ってられないが今はその時ではないと思う。


 結局その後は町の中を目的も無く歩いた。

体をほとんど動かさなかったので体がむずむずするがたまにはのんびりした日があっても良いはずだ。


 朝の鐘が鳴る前に俺達は冒険者学校の寮へと向った。

朝食を食べる為だ。


授業料には寮と朝と晩の食費が入っているので食べないと損だ。

食堂に入るといつもの香りが鼻をついた。


やっぱりポリジだ。

俺達はポリジを受け取ると適当な場所に座った。


確か授業が始まるのは朝の鐘が鳴ってから1時間程度してからになる。

早く着すぎた事を少し後悔したがしょうがないのでポリジを味わって食べた。


「あっ」


俺達が声の方に反応すると見た事がある奴と知らない奴がいた。

知ってる奴は以前より少し大人びているように感じる。


「久しぶり。あんまり合わないから別の町に行ったのかと思ったぜ」


この町に来てすぐにやった日雇い仕事で知り合った奴だ。


「俺達は材木運びを中心にやってたんだ。周りに合わせなくて良いから気が楽な仕事だぞ」

「それにしても、寮に居なかったから通いなのか。別な所に部屋を借りてるのか?」


「一番安い長屋を借りてるよ」

「いいなー。羨ましいぜ。寮は大部屋に雑魚寝だから人が多くて気が休まらなかったわ。おかげで中々寝られなかったよ」


「寮に入らないから出費が大変だけどな。それより初めて見る人もいるし自己紹介するか。俺はロッシュ、よろしく」


俺達は互いに自己紹介をした。

日雇いで一緒だった奴の名前はディグ。


茶色の短髪で背丈も顔も普通。

どこにでもいる農民代表みたいな奴だ。


ディグと一緒に居る初見の奴はバルボというそうだ。

背はディグより低くて黒と茶色が混ざった髪色をしている。


バルボの目は俺達の持っている武器に釘付けだ。


「よろしく。お前達はもう自分の武器を持っているのかよ。すげーな。ちょっと見せてよ」

「いいよー」


「ここだとあれだから授業で外に出たときにな」


メリが素直に返事をした。

あんまり見せびらかすような感じになってしまっては困るがもう答えてしまったのでしょうがない。


食事を受け取ってきた二人は俺達の横に座った。

バルボが話しをせがむので授業が始まるまで食い付かれて離れなかった。


 授業が初日なだけあって人が多い。

俺達は早めに教室に移動してきたので前の方の席に着いた。

不恰好で大きさの合わない椅子に腰掛けた。


大きさの違うテーブルに何人かが集まって適当に集まっている。

食堂で授業をした方が良いんじゃないかと思うようなちぐはぐっぷりだ。


椅子が足りないようで遅れてきた人は立ち見だ。

これは毎回早めに来たほうが良いかもしれない。


ざわついている教室を観察していると昨日説明をしていた教師が入ってきた。


「注目! これから冒険者学校の授業を始める。しかし! その前に言っておかなければならない事が2つある」


周りを威圧するような声を張り上げて俺達をジロリと見回した。


「1つ、町の人間に迷惑をかけるな。2つ、常識を知れ。授業でも教えるが冒険者が一般人を傷つけるような事があれば程度によっては冒険者の資格が剥奪される!」


一瞬俺達の方に視線を飛ばしてきた。

突然視線が飛んできて少し面食らったが俺達からは手を出さないので大丈夫だ。


大丈夫だよな?


「お前達は上からのありがたい援助のお陰で格安で訓練を受けられる。その事を心の底から感謝して周りに絶対迷惑をかけるなよ。特に農村の出! お前達は一般常識を理解するまで仕事以外に学校の敷地から出る事を禁ずる! 町には町の決まりがある。農村で何も考えずに土だけいじってれば良い訳じゃないからな」


ディグが一瞬、ビクっとして目を泳がせたが見なかった事にしてあげた。


「そんなお前達に一般常識の授業だ。トイレは決まった所でする! 絶対にだ! 小だからってこっそり見えない所でやってしまおうだなんて奴は殴っても殴り足りない。町に始めて出てきて浮かれて酒をかっくらってフラフラするのも止めろ! 殺すぞ。汚い服も許さない! せめて洗え。数ヶ月も洗っていないような酸っぱい奴は村へ帰れ! そういう不届き者を昨日何人も見かけたから撫でてやったが心を入れ替えるように」


生徒の視線が何人かに向けられた。

視線を追ってみると頬を晴らした生徒が何人かいる。


「去年、訳も分からずに殴られた」


ディグがぼそっと呟いた。

可愛そうに、彼はもうレニーに一生頭が上がらないだろう。


バルボはこっそりと自分の服の臭いを嗅いでいる。

顔をしかめた後に俺達にすがる様に視線を投げかけてきた。

俺は静かに首を振った。


「身奇麗な奴が部屋の隅に固まってたのはこのせいか」


「学校では仕事の斡旋もしている。その時に服装の検査をするので引っかかった奴は授業を払った後はまず第1に服を買え! 汚い服で買い食いしてる奴を見つけたら撫でるからそのつもりでいろ!」


その後、レニーの話しは終始一般常識についてで終わった。


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