表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/139

124

 俺達はカタロさんの家に入った。


「色々とありがとうございました」

「いえいえ。エル村の人にはみんながお世話になっていますから当然ですよ」


「今から朝のポリジを温めますので少し待ってください」

「私も手伝います」


ラピアは食事の用意をしようとするカタロの娘のルッタについて行った。

カタロさんは恐縮しているがこれから何日かお世話になる身分だから当然だ。


「ちょっと町でもいざこざがあったので何日か居させてもらうのでドンドン仕事を申し付けてください。俺達の事は村の子供の1人だと思って貰っていいです。その方が俺達も嬉しいです」


「そうだよ、カタロさん。しっかり馬車馬の如く働かせようぜ。ロッシュなんてそこらへんの子供と一緒だから気を使わなくていいよ」

「うんうん」


メリが調子よく頷いている。


「そこまで言われると・・・・・・。わかった、これからもよろしく」


カタロさんもようやく観念したようだ。

俺もその方が楽だから助かる。


「よろしく。カタロさん、俺達は何を手伝えばいい?」

「うーん。畑の拡張、豚の餌を集め、採取って所だね」


「はい」

「私が蛇とかたくさん見つけるよ!」


「取りすぎるなよ」

「それと冬場は訓練を増やそうって話しになっているからみんなに色々と教えて欲しい。あれからまた鍛えてたんだろ?」


グロウが挑戦するように言った。


「もちろん! 私にまかせてよ。」


メリが身を乗り出して答えた。

カタロさんもその反応に嬉しそうだ。


「あとあれだ。メリは気配察知に関しては教師失格だ。ロッシュとラピアに頼む」

「ガーン」

「メリは剣の教師役だな」


俺達とグロウのやり取りをカタロさんは微笑ましく見ている。


「それと提案なんだけど少し良いかな。もちろん提案なんで考えておいてくれると良い程度の話しになる」

「なんだい?」


俺達を眺めていたカタロさんも聞く体勢になった。


「エル村の近くに林がないから村から少し離れた所に林を作った方が良いと思う」

「林を作るかあ。考えた事もなかったな。おもしろいけどなんでだい?」


「豚を飼うようになったら冬の餌が問題になってくるから豚の餌場って意味合いが大きい。それに山菜を植えておけばそれなりに腹のたしにはなるかな。どんぐりがなる木を植えればいざという時に人間の食料代わりにもなる」


「それは良いね。けど気の長い話しになるね」

「うん。すぐには効果はないけど余力があればやっておいて損はないと思う」


ラピアとルッタがお盆にポリジの入った器を載せて入ってきた。


「はい。みなさんどうぞ」

「いっただきますー!」


「メリ、1人で早いぞ」

「あはは、気楽にしてよ」


俺達は腹が減っていたのでありがたくポリジを頂いた。

野菜くずだけが入っているポリジで懐かしい感じがする。


「木はある程度大きくなったのを植え替えれば時間が短縮できると思う」

「なるほどねえ」


「ただ問題なのは植え替えには時期が合わないって事だ。ヒールの効きは人に比べると微々たるものだけど無理やりかけてもたせるしかない」

「わかった。みんなに話してみるよ。けど林を作るかあ。考える事が大きいね」


「まあ、畑の拡張が一番だね。この案は余力があればの提案だし手探りだからこんな案もあるよって程度に考えてほしい」


「鉄の農具が少ないから畑の拡張は農具がある数しか回せないんだ。今までの農具はこの前のスタンピートで全部壊れたよ。今は村人が減ったから逆に余裕ができたなんていうあんまり喜ばしくない状況なんだ。元あった畑を耕すなら木の農具でも大丈夫だけど、新しく広げるとなると強化を使っても鉄の農具じゃないと厳しいね。村の大人はミュッケ村の子みたいに魔法をあんまり使ったことがないんだ」


「俺達なら無理やり強化を使って木の農具で耕せるよ。けど農具の寿命はどうしても縮まっちゃう事になると思う。実際やってみないとわからない」


「人手が丁度余るから林を作るのは良い案だと思う。それに林を作るなんて年甲斐もなくワクワクしてくるよね」

「俺もおもしろいと思う。魔境近くじゃどんぐりは食えなかったけどこっちならアク抜きすれば食えるんだよな」


俺達が盛り上がっているとラコスとウカリスがやっとみんなから解放されたようだ。

2人が来るとラピア達はポリジを取りに行った。


「おつかれ」

「おつかれさん!」


2人はもみくちゃにされて疲れているが嬉しそうだ。

俺達が何もしなくても問題は解決しただろうけど、この場に立ち会えて良かったと思う。


あとは豚の投資分が帰ってくれば万々歳だ。

その後は俺達の話しを聞きに仕事が終わった村人が集まってきた。


結局、そのままポリジとピケットしかない宴会が始まる事になった。

代わり映えのない村生活には外の話しは唯一の娯楽品なのだ。


俺達は楽しかった話しや大変だった話しを織り交ぜつつみんなに語ったのだった。



 農家の朝は早い。

俺達が鐘の音を聞く前に起きるように村人達も起き出しているのが気配と音で分かる。


俺達はそのまま村長宅に泊まる事になった。

村長の家にある長屋より少し広い部屋を3人で借りることになっている。


ウカリスとラコスは小さいが自分達の家に戻った。

ラピアは早くも朝食の手伝いに向かったがメリは大あくびをして背伸びをしている。


それでいいのか、メリよ。

エル村では以前は食事は家ごとに取っていたが貧富の差が無くなった今では村長の家でみんなが集まって食べている。


女性陣が集まって順番にファイアをかけているお陰で薪などの節約になっているそうだ。

林を作るうんぬんは昨日の話しで出たがしっかりみんなで話し合った後の方が良いという事になった。


とりあえず俺達はお得意の採取の仕事が振り分けられた。

ウカリスが攫われた事で今後は常に3人以上で固まって移動する決まりが村に出来たそうだ。



 朝食が終わると割り振られた仕事に数人ごとに分かれて取り掛かる。

俺達はグロウ先導の元に採取に向かう。


採取組が一番人数が多いようだ。

今回は豚の餌用の雑草を集めるのでみんなが籠を持っている。


子供達はみんな元気で楽しそうにしている。

良い村だなと思いつつ枯れていない雑草を片っ端から集めた。


ラピアが時々毒草を見つけてこれは駄目だよとみんなに警告する。

今回は量を取って豚が食べる雑草を判断する予定だ。


これから豚の数が増える事を考えると豚の餌を考えておく必要がある。

冬以外は適当でも大丈夫だろうが冬に食べられる物を確保する事ができれば冬を越せる豚の数が増える。


雑草は生命力が強いのばっかりだから量が取れて豚が食べる草を見つけて意識して種を撒けば次の年に楽ができる。

人間が食べられる草を増やしても良い。


まあ、豚が少ない内はふすまだけでも十分なはずだ。

他の家畜は鶏と兎だけなので当分餌の心配はない。


しかし何事も試行錯誤してみる事は良い事だ。

色々試してみる事がおもしろいしそこで経験が積める。


同じ事をしていても意識して経験を積んでいる人といない人では雲泥の差が出てくる。

つまらない仕事でもどうにかして面白い所を捻り出すのが楽しく生きる秘訣だ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ