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12話

食堂に到着すると席に着いた。


昼は白パンにサラダ、スープだ。

シンプルだが贅沢な食事だ。


「魔力、学力部門の試験が終わった。みんなおつかれさま。だがまだ武力部門の試験が残っているので気を抜かないように。いただきます。」


村長の合図でみんなが食事を始める。


周りの空気も朝に比べて柔らかい物になっている。

魔力部門を選んだ人はもう今日の試験は終わったからな。


しかしその一方明らかに空気が重みを増している者達もいる。


ラコスやエスタだ。


今回この二人が2位争いをするだろうと予測されている。

どっちが勝つかで2位が決まると言っても過言ではない。


ウカリスも今日は緊張しているのか言葉数も少ない。

そんな子供達の様子を大人達は懐かしそうな目で見ている。


グロウは食べ物しか見ていない。

メリはいつもと変わらず余裕綽々である。


俺はそんなメリを羨ましく思いつつゆっくり白パンを食べた。


「学力試験の結果が出たぞ!」


布を被せた板を持った大人が食堂に入ってきた。


「みんな静かに。これより学力試験の結果を発表する。」


みんな食事の手を一旦止めて村長の話しを聞く。


「1位は・・・・・・。ラピアだ。おめでとう。」


おー、会場では感嘆の声が響く。

ラピアは席を立ってみんなにお辞儀をする。

ラピアは魔力、学力の2つの部門で1位を取ったのだ。


「2位はセリナ。おめでとう。」


セリナは完全に落ち込んでいる。

しかしフラフラと席を立ってお辞儀をする。

魔力試験で負けたのが尾を引きずっているらしく学力試験で実力を出し切れなかったのかもしれない。


「3位はロッシュ。おめでとう。」


おしっ、俺は心の中で手を握り締めた。

俺も席を立ってお辞儀をする。


「以上が学力部門の上位者だ。各自食事に戻ってくれ。」


「ラピア、おめでとう。」

「ロッシュ、おめでとう。」

「セリナ、おめでとう。」

「ありがとう。」


みんなが俺達に声をかけてくる。

俺は目標を達成できて満足だ。

特にラピアは2部門1位なので子供から大人まで彼女を囲んでいる。


「もぐもぐ。ロッシュ、おめでとう。」


グロウが白パンを食べながら話しかけてきた。


「これで今回の目標を達成できたぜ。あとは気が楽だ。」

「俺はずっと気が楽だぜ!」


グロウが胸を張っていうが来年はおまえの番なんだぞと思った。

グロウは武力、魔力が平均より上で学力が平均より下くらいだ。

色気よりも食い気が勝っているようで来年はグロウの尻を引っぱたいて鍛えないとなと思うとすごく面倒だ。


食事の時間が終わるとついに武力部門の総当り戦が行われる。

今回の参加者は12名だ。


参加者は緊張した面持ちで軽い運動を始めた。

俺とメリは軽く動きを確認しあった。

メリは動きたくて動きたくて仕方ない様子で軽い合わせなのに木刀から伝わってくる感触は鋭く重い。


「メリ。ちょっと加減しろ。」

「まだまだ大丈夫だよ!」


「メリは大丈夫でも俺は大丈夫じゃないの。」

「ちぇー。早く始まらないかなあ。」


参加者がみんな揃っているのを見て村長が言った。


「これより武力部門の総当たり戦を行う!対戦順はこちらで発表するので各自、自分の待機場所へ移動してくれ。」


俺は指示された自分の待機位置に移動し席についた。

試合場は3,4ヵ所を進行具合に応じて使っていくようだ。


総当り戦だが魔力の関係もあって最初から年長対年長ということにはならず、年長同士の試合は最後に持ち越される。

総当り戦では魔法の使用が認められているので強者同士が早々とぶつかってしまうとその1戦だけで魔力を使い果たしてしまうなんてことはよくある事だ。

今回も魔力を終盤まで持ち越せた者が勝者となるだろう。


俺が席で待機していると大人が来た。


「ロッシュは第2会場へ移動だ。」

「はい。」


俺は軽く緊張しながら移動を始める。

当たるとしても強くて同年代だろうからそこまで緊張するところではないことがわかっていても緊張してしまう。

そして会場に着いた。


対戦相手は9歳の女子だった。

腕前はまあまあってところだな。


会場中央に移動して互いに礼をする。

俺は勝利を確信したが油断せずに木製の剣と盾を構えた。


「戦闘開始!」


彼女は俺には勝てないとわかっているようで強化は行わず、勝てる相手用に温存するようだ。

俺も魔力を温存して戦った。

数度打ち合って俺は彼女の武器を弾く。


「参りました。」

「勝者ロッシュ!」


会場から拍手が鳴った。

俺達は互いに礼をして会場から離れた。


こういった魔力の分配も今後必要になってくる。

弱い敵に過剰な魔力を使うことは愚か者がすることだ。


今の対戦相手も自分が勝てる戦いの為に魔力を温存したのだろう。

魔力を消費しても俺の体力を削る事が精一杯だろうし、体力ならすぐ回復するからな。


俺が自分の待機場所に戻ろうとするとラピアが小走りできた。


「一勝おめでとう。」

「ありがとう。」


「メリのほうを見てきたけど一撃だったよ。」

「さすがだな。」


「応援してるからがんばって。」

「ああ。ラコスとかエスタはどうだろう。」


「まだ見てないけど11歳組は本気だから後半までは負けないだろうね。」

「俺も前半は落としたくないな。けど最近は勉強ばかりやってたから鈍ってそう。」


「ロッシュはその歳で3位になれたし、焦らなくて大丈夫だよ。」


心なしかラピアは今までより晴れやかな表情だ。

これからは薬師としてみんなを助けていく立場になるのだから当然の事か。

小さい頃のラピアを知る俺としては一抹の寂しさを感じるが良い方向に進んでいく分には嬉しい限りだ。


「それじゃあ私はまたメリの所にいってくるね。」

「うん。また後で。」


ラピアはそう言うとゆっくり歩いていった。


その後は3戦とも年下との試合だった。

俺は余裕をもって勝つことができたが次の試合以降は同年代なのでここからが本番だ。


「ロッシュ、次の試合だ。」

「はい。」


俺は会場へと向かう。

途中に現在の成績が書かれた掲示板があったがメリ、ラコス、エスタは今のところ全勝のようだ。

さすがにこの段階では負けないかと思いつつ俺は会場に着いた。


「よう、ロッシュ。今回はおまえとか。」

「おう。勝たせてもらうぜ。」


対戦相手はグロウだ。


グロウは槍を好んで使っている。

強さ的にはラピアと同等か少し弱い位なのだが動きが厄介だ。


ラピアは基本に忠実に安定した動きをするがグロウは気分で動いているので時々予測不能な動きをして対処しづらい。

だから対処できない動きをする余地を減らすために押していった方がいいかな。


今回も槍を持っているがいつもは付けていない小盾をつけている。

懐に入られた時用だと考えると注意が必要だ。


俺達は中央へ移動して対峙する。


「礼!・・・・・・。戦闘開始!」


俺は距離を縮める為に素早く踏み込んでいく。


一方グロウも突っ込んできた。


俺はギョっとしたが盾を前方に構えてそのまま距離を詰める。

グロウは強化を使い走ってきた速度をそのまま活かし槍を突いた。


俺は盾を斜めにして槍を受け流したが衝撃は殺しきれず、足が止まりかけた。

そのままの勢いでグロウは小盾を使って俺を吹き飛ばそうとする。


俺は剣での攻撃を諦め、腰を屈め盾を体に密着させてそのまま体当たりした。

ドカッという音を立ててグロウは俺の上を転がっていった。

グロウは武器を持ったまま勢いを殺せずにそのまま転がっていたが俺は驚きつつもグロウを追い、持っていた槍を踏みつけた。


「いてて。参った。」

「勝者ロッシュ。」


俺は足を槍から外しグロウの手を握って立たせた。


「いきなり突っ込んできてビックリしたぜ。」


グロウは立ち上がると頭をさすった。


「それはこっちの台詞だ。普通だったら槍と小盾持ったら距離を取って戦うんじゃないの?」

「いや。こうやったら驚くんじゃないかなって・・・・・・。」


「確かに驚いたけどせっかく突撃するなら盾はもっとでかくないと今回みたいに失敗して自分が吹っ飛ぶぞ。」

「俺の全勝もここまでかー。」


俺達は礼をするとそのまま解散した。


その後俺は同年代との3戦を魔力を使わずに危な気なく勝った。


「ロッシュ。今のところ全勝はメリとロッシュとエスタとラコスよ。」

「順当だな。俺は次からは全部年上かあ。」


「調子はどう?」

「メリ以外だったら全力で当たれば一勝かなあ。だけどエスタとラコスの邪魔はしたくないな。どうしたらいんだろう。」


「そうだね。ラコスは確実にウカリスと婚約したいだろうから、もしエスタもウカリスと婚約したいならどうしよう。」

「まずメリの1位は確実として、俺が両方に負けるか勝てれば二人の勝負になるな。もし俺が片方に勝ったとして・・・・・・。駄目だ。地面に書いても時間かかるしわかりにくい。」


「うーんと。ロッシュが片方に勝って片方に負けた場合、エスタとラコスのどちらかが一勝多いことになるね。その後二人が戦うとロッシュに勝った方が勝てば2勝になって、勝った方が負ければ二人とも一勝になる。勝ち数が同じだった場合は二人の勝敗で決めるだっけ・・・・・・?あれ、そうすると一勝が3人?どうしよう。」


「うわー。どうすんだこれ。とりあえずエスタ対ラコスが一番の目玉だからこの戦いを最初に持ってくればなんとかなるのか?ゆっくり考えないとわからん。」

「大人達はどう考えてるんだろうね。」


「あんまりしたくはないが、いざとなったら俺が全部棄権するか。」

「それはさすがに・・・・・・。」


俺達が知恵を絞っているとついに出番が来たようだ。


「ロッシュ、第1会場に移動だ。」

「はい。ラピア、一緒に行こうぜ。」


俺達は会場へと歩いていった。

途中に何か案はないかと考えていたが短時間では良い解決方法は見つからなかった。


俺達が会場に到着するとすでにメリとラコスとエスタが到着していた。

俺が到着したのを確認して村長が台の上に立った。


「あー。今回はこの4人が現在全勝している。参加者全員が11歳だったら話しは楽なのだがロッシュが10歳だ。俺達で話し合った結果「俺はメリとの対戦を棄権します。」


エスタが高らかと宣言した。

その後エスタはラコスを見つめた。


「俺もメリの試合は負けでいい!そしてエスタ勝負だ!」


ラコスは普段の様子からは考えられない程の声を張り上げて言った。


二人は互いを見つめて闘志を燃やした。

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