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 エル村の話しを聞いた俺達は次に自分達の話しをした。

ウカリスは俺達の話しを楽しそうに聞いていた。


「日雇いの仕事だと7大銅貨、多くても8大銅貨だったからラピア達はすごいね」

「えっへん、おっほん」


メリが嬉しそうに胸を張った。


「ドブネズミ退治の話しもおもしろかった。私も一回やってみたいな」

「臭いし、夏は暑いし、冬は寒いしそこまで楽しいもんじゃないぞ」


「それにしても材木運びってそんなにお金になるね。ラコスは力仕事が得意だから冬になったら町に出るのも良いかもね」

「冬の町はピリピリしてて怖いよ。私達は運良く上級紹介所に登録できたけど下級、中級はお仕事の取り合いが多いんだって」


「あそこの材木運びが割高なのは道に蛇が多いからだそうだ。馬とかロバを使って運んだ方が効率が良いんだけど馬とかが蛇に噛まれたりして中々受ける人が居ないんだってさ」

「3人は大丈夫なの?」


「蛇はご飯だよ!」

「気配が分かるから今の所は大丈夫だな。けどそろそろ運びやすい大きさの木が減ってきてるから収入は減りそうだ。蛇は結構取ってるけど相変わらず多いよなあ」


森が少し魔境化してるからなんだろう。

俺達的には良い事尽くめだが普通の人は重いし、遠いし、蛇も居るし嫌になるのも納得だ。



 俺達は西に向かってゆっくり走っている。

「ウカリスも結構成長したね。けどつらくなったらすぐ言ってね」

「うん、でも大丈夫だよ」


メリがウカリスに併走しながら話している。


「ウカリスは以前より体力が付いてきたみたいだねー」

「私はまだまだだよ。この前3人が草原狼を捕まえたのを見てみんながやる気になって頑張ってるんだ」


「えへへ。今は道場に通って修行中なんだ。私達はもっと強くなるよ。エル村に着いたら色々教えてあげる」

「うん」


「今道場ではね、おもしろい訓練をやってるんだ。それは、あっ」


メリは突然道を外れて草むらに飛び込んだ。

見たところ蛇かなんかの小さい気配がする。


「ほらっ、見て見て」


メリは蛇の頭を掴んでくるくると振り回している。

俺達に合流すると蛇の頭をラピアに縛ってもらう。


「休憩する時に解体するよ」

「うん! 兎はいないかなー。出ておいでー」


「メリはすごいなー。どうやったら気配を感じられるの?」

「うーんとね、勘?」


「とりあえず魔力を察知しながら常に意識を張り巡らせる感じかな。気配飛ばしを意識して訓練してればそのうちわかるようになるよ」

「そういうことだよ」


「気配飛ばしの練習はしてるけど、まだできないなあ」

「ウカリスならそのうちできるよ!」


俺達の移動は順調そのもので朝早く出たのもあって誰ともすれ違っていない。

途中でメリがウカリスを背負子に乗せて速度を上げた。

ウカリスは体力的にまだ大丈夫そうだが念の為だ。


この分だと昼前にデロス町とグリエ町の中間にある村に着くだろう。

途中に冬眠していた蛇を5匹確保しながら俺達は街道を走った。



 旅路は順調で昼前に村を見つけた。


「この前は通り過ぎたけど今回はどうする?」


俺はみんなの意見を求めた。


「黒パンはあるから寄らなくても大丈夫だけどどうする? 村に寄れば水を補給できるけど捕まえた蛇は村では調理はできないと思うよ」

「村を探検したい!」


メリが元気良く答えた。

後ろの背負子に乗ってるウカリスはメリの発言に一瞬驚いたが納得するような顔つきになった。


「探検は無理だけど水の補給をして何も無いだろうけど少し見るか。飯は村を出て少し行った所で蛇を食おう」

「やった! 何かおもしろい物はないかなー」


今回は以前よりは余裕があるから良いか。

さすがに追手は居ないよな?


やっぱり、不安になってきた。

これは油断なのか?


慢心だったらまずいがそこまで気にしなくても大丈夫じゃないだろうか。

一瞬迷ったがもう言っちゃったし軽く息抜きはしよう。

ぐだぐだ悩むより次の事を考えていこう。


 村には特に門番はいない。

俺達はさっさと村の中に入って井戸の場所を聞いた。


ちゃっかり1小銅貨取られたが、しょうがないか。

村人の大半は外に出ていて村に残っている人は少ない。


メリも特に見所が無くて悲しそうな顔をしている。

商隊が来ると分かっていれば残っている人もいただろうが冬場で食料が得にくい時期なので採取に出かけているのだろう。


お陰で俺達はさっさと村を出る事にした。

悲しそうな顔をしていたメリだが走り始めるとすぐ気配察知に集中しはじめた。

あれはもっと蛇を捕まえてやるぞという顔だ。



 村を出て少々走った後だった。

突然前方から鋭い殺気を感じた。


「道を戻るぞ!」

「うん!」


俺達は殺気から逃れるように道を戻り始めた。

すると殺気の源も速度を上げた。


「強化を使って振り切る!」


俺達3人は強化をして走り始めた。

殺気の源は俺達に焦点を当てたようだが速度は俺達の方が断然早い。


少し走ると感じる殺気が薄らいできた。


「一応少し道を外れるぞ」


そう言いながら俺は障害物の少なそうな道を選んで街道を離れた。


「ああああああ」


突然ウカリスが泣き始めた。

殺気に当てられて攫われた時の事を思い出したのだろう。


「うああああ、ラコスうう」


俺達は速度を緩めた。


「あの殺気はラコス?」


俺はメリとラピアを見たが二人も首を振った。


「よし、少し待ってみて目視で確認してみようか。ラコスじゃなかったら遠いけど村に逃げ込もう。ウカリス、今追ってくるのはラコスなのか?」

「うええええ」


ウカリスは本格的に泣いていて話しどころではない。

俺にはわからないがラコスだとわかったのか?


少し緩んだ警戒心を再びきつく締め直して俺達は殺気の正体を探った。


「あ、ラコスだ」


メリが手を筒の形にして遠くを眺めながら緊張感のない声を上げた。

俺は確認するがまだ遠くて俺には見えない。


まだ見えない俺とラピアが目を凝らしていると人影がやっと見え始めた。


「ほらっ、ラコスだよ。見えない?」

「あああああ、ラコスウウウ」


メリの発言によってウカリスは一層声を強めた。

俺はまだ見えないがメリが言ってるならラコスなのだろう。


俺は肩の荷が降りた気がした。

が、まだ自分で確かめるまでわからない。


懸命に緊張感を維持しながら人影を見つめた。

メリは暢気に手を振っている。


あ、ラコスだ。

やっと俺にも見えるようになった。


ラピアも見えたようでウカリスを背負子から外し始めた。

気が利くな。


背負子から降ろされたウカリスはよろめく様に地面に降りた。

そしてフラフラしながらもラコスに向って走った。


ラコスの殺気が霧散して歓喜に変わった。

ウカリスも泣いて足元が覚束ないがゆっくりと2人の距離が縮まっていく。


ラコスの視界が涙でぐちゃぐちゃになる頃に2人は再会を果たした。

ラコスの胸にウカリスが飛び込んでいった。


めでたしめでたし。



 2人は抱き合って再会を分かち合っている。

俺はラピアを見た。


ラピアも俺に気が付いて頷いた。

俺は2人と少し離れた位置でたき火の準備を始めた。


ラピアは捕まえた蛇を取り出して解体しようとしている。

メリは両手を組んでうんうんと頷いていたが俺達が準備し始めたのにやっと気が付いてラピアを手伝い始めた。


5匹分の蛇の生き血をちびちび飲みながら蛇を焼き始めた。

魔境の木の切れ端で作った串は中々便利だ。


最後に焼けたら岩塩を軽く削ってかける。

再会を分かち合ったウカリスとラコスは恥かしそうに俺達の方へ合流した。


俺は背負い袋から黒パンを取り出してみんなに配った。


「3人ともウカリスを助けてくれてありがとう」


ラコスは真剣に頭を下げた。


「同じ村の仲間だから当然だよ!」

「そうだよ」


「うん。ウカリスが無事で良かった」

「みんなありがとう」


ウカリスも目に涙を溜めながら言った。


「お金はないが俺ができることだったらなんでもするから言ってくれ」

「わかった。再会祝いには豪華さが足りないが焼き立てを食べちゃおうぜ」

「いただきまーす」


メリは1人でさっさと食べ始めた。

それを見たウカリスとラコスも神妙な空気を消して食事を始めた。


俺は黒パンをちぎって火に直接手で近づけて炙った。

ゲニアの訓練が生きた瞬間である。


火に慣れるというのも悪くない。

これはこれで結構おもしろい。


火の通りが悪い部分ができないように強化を調整する。

実際に目の前で見れるので良い判断材料になる。


それを見たメリもやたら自慢気に真似をはじめた。

ウカリスとラコスはそんな俺達の様子をおもしろそうに眺めている。


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