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ウォータを使った時に水が残る現象を試す為にフォレの森に来た。

もちろん詳しい内容はフォレには教えない。


よく瞑想をしている事もあって怪しまれずに試行錯誤することができた。

俺とメリも試してみたが結局は水を出すことはできなかった。


魔素が薄い環境でも魔素を利用して水を作り出すことができるという事がわかっただけ大収穫だと思う。

今回はその次に進みたいと思う。


ラピアが作り出した水をコップに貯める。

魔境では周りが魔素だからけだったのでわからなかったがやはり水からは魔素を感じる。


魔力が篭った水は魔力水と呼ばれているので以後これを魔素水と呼ぶことにした。

魔力水は魔力が豊富な場所で取る事ができる水で飲む事で魔力を得る事ができる。


魔力が減っている時程その効果は高く、魔力が減っていない時に飲んでも徐々に増えた魔力が減る。

最終的にはいつも通りの魔力量に落ち着くそうだ。


魔力水は高いので俺達はそんな贅沢な物を飲んだ事も見たこともない。

魔境でも水の性質が強い所では魔力水が取れるという話しは聞いたことはある。


しかし魔素水は聞いた事はない。

俺達の勉強不足なのかもしれない。


「よし、じゃあこれを飲んでみるぞ。2人ともよく観察しててくれ」


次の実験は俺が魔素水を飲んでみる。

俺が腹を壊して動けなくなったらメリに運んでもらう予定だ。


回復魔法が使えるラピアが不調になったら困るので俺が飲むのは順当な選択だ。

俺は腰に手を当ててドキドキしながら一気に飲み込んだ。


体全体に魔素が巡っていく。

魔素特有のなんか変な感覚がする。


味はしないようで色々な味がするような妙な味だ。

俺の魔力を水と例えると魔素水は色付きで粘度が高く腹のあたりから俺の魔力が掻き乱される。


しかし油断すると魔素はそのまま体の外に逃げてしまうようだ。

焦って瞑想の時のように魔素を逃がさないようにすると魔素を体に止めることができた。


体の中の魔素も俺が落ち着いて魔力を安定させると形を失って魔力に変わった。

ふう、なんかくすぐったい感覚だ。


魔境に適応していなかったら新しく入ってきた魔素と魔力の融合が上手く行かずに魔力が不安定になっていた。


「ロッシュ、大丈夫?」


俺の様子を観察する為に離れていたラピアが俺に駆け寄ってきた。

具合が悪くなったらキュアをかけてもらう予定だったが今の所は大丈夫そうなので止めておいた。

今の状態をもう少し観察する。


「ああ、大丈夫そうだ」


ラピアはほっと一息付くと俺の目を見た。

俺はさっきの感覚を2人に説明した。


魔素水を飲めば魔力を回復させる事ができそうだ。

しかし飲んですぐには魔力が安定しないので余裕がある時用だと思う。


次は魔素水を飲んですぐ強化などを使ってみると比較できそうだ。

それでも魔力水代わりに使えるとなるとすごい事だ。


だが作るのに魔力が必要なので魔素水が必要になった時には手遅れな気がしないでもない。

魔力水ではないので人には売れないし、売れたとしても出所を疑われる事になるからお金にはできないな。


魔素水は時間が経つと魔素が抜けていき、それに伴って水も無くなっていった。

最後には魔素水は消えていった。


今の俺達では詳しい原理までは理解できない。

ただポージョンの瓶の様な魔力が抜けないように特殊な加工がされている容器なら魔素も抜けにくくなるかもしれない。


ポーション瓶単体でも高いから気軽には実験できないのは残念だ。

ポーションは魔力水に薬を混ぜたものが基本で値段が高い。


しかし値段が高い分、効力も高いので俺達も1本位はほしいだ。

魔物がポーションを落すダンジョンも稀にあるそうなのでそんな所に潜ってみたいな。



 魔境で稼げる事がわかった俺達だが魔境に行く回数をあまり増やさない事にした。

今は夏だが秋までは通いたいので小動物の警戒心をできるだけ上げないようにする為だ。


冬は寒いし雪も降るので魔境はお預けの季節になる。

何事も程々にバランスを取る事が大切だ。


町の仕事ももちろんやる。

材木運びばかりしすぎて運ぶ物が尽きても困る。


ラピアは頻度は下がったが治療院の手伝いをまだやっている。

最近は魔境で水魔法を使えるので今までの剣や体の訓練中心の生活から少し魔法や探索に比重を置いた物になっている。


ラピアが魔法を使える機会が少なかったので良い訓練になっている。


 今日も今日とて魔境に行く。

最初に木刀用の木を取りに来た時は浅瀬より少し中に入ったが最近は常に浅瀬しか行ってない。


安全第1なのだ。

そういえば魔境の木刀もやっと完成した。


荒削りまでは雑で良いので早かったがある程度形ができてきてからは丁寧に作った。

なんせ強化をしっかり使ってやっと削れるので神経も魔力も磨り減る。


刃物が小さいナイフしかないのが痛かった。

ナイフも良い物だけど今回の木刀削りで刃が小さくなってしまった。


乾燥を風魔法でやっただけな雑なものだったので完成品が上手く行くか不安だったが魔境の木はしっかりしていて思ったよりは良いできだった。


駄目だったらまた取ってくれば良い分、気が楽だ。

あと数回ならフォレも快く斧を貸してくれるだろう。



 いつも通りに魔境の入り口で魔物避けの草を粉末にしてかける。

魔境への道には比較的に新しいわだちが残っている。


グリエ町でも探索隊が魔境に来ているので彼らなのだろう。

材木運びをしている時に何度もすれ違ったが結構な規模だった。


それに魔境に入るだけあって中々鍛えている人間が多かった。

目を付けられたくないからあんまり会わない様にしておこう。


メリを先頭にして魔境に踏み入る。

魔境の性質を調べてから狩りが始まる。


浅瀬の小動物も最近では少し警戒心が増してきた。

まだいつもの方法で獲れているがいつ捕まえられなくなるか判断が付かない。


俺とメリは武器を持って追い込んで居たが使う機会がないので石を持つ事にした。

ラピアが外した時には俺とメリで石を投げる。


命中率は低いがないよりはましだし当たらなくても運が良ければラピアがもう一回魔法を使う隙を作る事ができる。

ただ外した石が変な方向に飛んで近くに居た小動物が逃げてしまうのは愛嬌だ。


良し悪しだが投げる練習にもなるし追い立てるだけじゃ俺達も暇だからな。


 浅瀬でも色々な野草を見つけた。

中には食べられる物もあったが調理器具がないからお預けだ。


大量に取れる物だったらフォレの所に持っていけるが少量の葉っぱを取った所で腹の足しにならない。

勿体無さを感じつつも狩りに力を入れる。


 突然メリが俺達に静止の合図をした。

俺達は足を止めて気配察知に集中する。


メリがゆっくり動き始める。

足音を立てないようにゆっくり動いている。


兎かと思ったが気配を探っても見つからない。

蛇が地面に隠れているのか?


蛇だったらこんなに警戒して近付かない。

すると兎が巣に入っているのか。


俺が1人で納得していると先を進むメリからちょっとした迷いが感じられた。

兎が巣に入っている場合は諦める。


巣に篭った兎を取る方法はあるがどうしても荒っぽい手になってしまう。

俺達は兎を狩り尽くす事を目標としているわけではないのでやりすぎはよくない。


特に魔境では小動物がたくさんいるのでさっさと別の場所を探した方が楽だ。

しかしメリはまだ観察の姿勢を崩さない。


俺はあれっと思いながらもメリに倣った。

俺もやっと気配を感じ取れた。


ゆっくりとした動きだ。

しかし良く観察してみると兎の動きではない。


兎の動きよりも小刻みな動きだ。

兎は飛び跳ねて動くのでわかりやすい部類に入る。


巣穴の中なので地上のように軽やかな動きではないが今観察している生き物の動きは例えるとモゾモゾしている。

ここまで見てやっと俺も気が付いた。


もぐらだ。

俺はもぐらの気配ではなく周りの地上の様子を改めて眺めた。


視界の端にもぐら塚を見つけた。

俺は納得したがもぐらはどうやって取るのだろうか。


魔境の外なら罠を張れば良いが魔境だと土が硬すぎて大変だ。

兎を探しにいったほうが有意義だと思う。


メリも同じ考えだろう。

どうするんだろう。


もぐらの肉はまずいがその毛皮は高く売れる。

特に魔境のもぐらならより高く売れるだろう。


俺達が迷っているともぐらの気配が近付いてきた。

メリは俺とラピアを見た。


俺は首を振ってメリに向けて手でどうぞと合図した。

ラピアも首を振るだけだ。


メリが頷いて魔境の木刀を握った。

メリは飛び上がり、地下のもぐらに向かって木刀を突き刺した。


「痛いー」

しかし木刀は地面に少し突き刺さっただけでもぐらまで届かなかった。

メリは手の平を真っ赤にさせてふーふーと息を吹きかけた。


もぐらの気配は既に一目散に逃げ去っている。

もぐらの足の速さはそこまで早くないので追いかけることもできるが地下の穴まで攻撃が通らなければ意味がない。


となると方法は罠か。

もぐらが掘った土を捨てる為のもぐら塚なら他の場所に比べて掘るのが簡単だ。


けど罠もないし現時点では難しい。

罠を買った所で魔境のもぐらに通用するかも怪しい。


結局、綺麗に倒せる方法は思い浮かばなかった。

これは後で要相談だ。


俺達は切り替えて再び獲物を探し始めた。


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