表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/139

101


「ふー。目標達成だな」


時間は昼過ぎといった所だ。

俺達は魔境から少し離れた位置で座って昼飯を食べ始めた。


「かたひ」


メリが2度焼きパンと悪戦苦闘している。

俺は強化を使って無理やり小さく砕いてから口に入れて柔らかくなるのを待っている。

口に物を入れながらしゃべるのはマナー違反だが待っている時間が暇だ。


「取った木はそこらへんに隠しておいて次は行者ニンニクを採取しようか。それが終わったら狩りの時間だ!」


本来は狩りをしてから採取した方が匂いの関係もあっていいのだが今回は確実に取れる物を取っておこう。


「やった!お肉を取るぞ」

「ラピア、何かお金になりそうな薬草はなかった?」


「食べられそうな物はあったけどお金になりそうなのはなかったよ」

「早々上手く行かないか」


「もう少し時期が早ければ野草も食べられるのがいっぱいあったからまた春に来よう。行者にんにくの群生地を見つけられたのは大収穫だよ」


メリは俺達の話しを聞かずに急いでパンに齧りついているが俺達が食べ終わらないと飯は終わらない。

そんなメリを見て俺達も急いで食べるのだった。



昼飯が終わると俺達は取った木を隠した。

目印を残しておいて採取を始める。


2度焼きパンは量が少ない上に硬いのであごが疲れた。

普段はしっかり食べているので余計に腹が減る。

それでも食べ過ぎて眠くなるよりはましかもしれない。


気持ちを切り替えてまずは行者にんにくだ。

俺達は足早に群生地に向かった。


「まず収穫する前に注意があるよ。行者にんにくはスズランに良く似てるから注意だよ。私がまず行者にんにくの葉っぱを取るからそれと同じのだけを採取してね。後で確認はするけど量が多いから疑わしいのは取らないで確実に集めよう」


「わかった」


俺達は採取を始めた。

俺は周囲の警戒に力を入れつつも採取もそこそここなした。


ラピアを中心にして俺とメリがその外側に陣取った。

最初は楽しかったがなんせ量が多いので途中から飽きそうになってきた。


けどこれは食べ物だから気が抜けない。

メリは早く狩りをしたくて一生懸命集めているようだ。


背負い袋にいっぱいの行者にんにくの葉っぱを集めた。

匂いがすごい。


食欲が刺激される匂いだ。

軽く炒めて食べたいが鍋が無いのでフォレの所で借りなくてはならない。


鍋は高いがほしくなってきたな。

鍋さえあれば食べられる野草をちょこちょこ摘み取ってスープに入れられる。


野菜類も生だと酸味とか辛味とかの味が強いの物も火を通せれば普通に食べられるようになる。

食の幅が広がるな。



にんにくの匂いがぷんぷんする背負い袋をラピアにまかせて俺達は狩りを始めた。

魔境の中は魔力が濃くて小さい気配は捕らえづらいが午前中に歩き回っていただけあって少し慣れて来た。


俺とメリは足音を消しながら気配を探った。

外と違って生物が多い。


中でも鳥が目立つ。

グリエ町の周りは平原なのであんまり鳥を見かける機会は無いので余計に気になる。


遠距離攻撃で使えるのはラピアの水魔法しかないので厳しそうだ。

水魔法は他の魔法に比べるとどうしても速度が遅くなってしまうのが弱点だ。


鳥に魔法を打っても良いが成功してもしなくても魔法を使うことで周りの生物に気付かれてしまう。まずは俺とメリが気配と音を抑えて狩ってみる。


狩りを始めて分かった事がある。

確実に狩れるのは蛇だけだという事とここの魔境にいる魔物や獣はあんまり強くないという事だ。


もちろん魔境の入り口付近の浅瀬での話しになる。

蛇は木の上に逃げない限りはすぐ捕まえられる。


ここの魔境の魔物があんまり強くないと思った理由は兎や狐の警戒心が比較的緩い事だ。

強い魔物が居る場所では獲物になるものも必然と警戒心が増す。


そうしなければ生き残れないからだ。

しかしここの獲物に属する弱い動物達は警戒心が思ったより強くない。

鳥達も俺達人間を見かけても余裕の態である。


他の動物も同様で近くまで忍び寄る事ができる。

瞬発力と体の小ささ、障害物の多さで逃げられてはいるが工夫をすれば取れないわけではなさそうだ。


蛇が多いが時折、兎や狐を見つける事ができる。

鳥には手を出さないでおく。


今見つけたのは兎だ。

兎といっても魔境の兎なので噛み付かれたら大変な事になる。


注意を怠らずに行かなければ骨折程度じゃ済まされない。

さっきまでは力押しで狩ろうとしていたがそろそろ頭を使って行く。


と言っても俺とメリで追い立ててラピアの魔法を当てるという単純な作戦だ。

ここの動物は警戒心がまだ緩い方なので近付いただけで見つかって逃げられる事が無いのが救いだ。


俺とメリは左右に分かれて兎を包囲するように回り込む。

後はラピアが居る方に誘導するだけだ。


メリが俺を見て合図をする。

俺とメリはわかりやすく強化を使って兎へ肉薄する。


兎は俺達から逃れようと俺とメリの逆方向に正に脱兎の如く駆ける。

兎が一直線に走った先には魔力を察知されないようにゆっくりと貯めていたラピアがアイスアローを放った。


魔法が兎を貫くと兎は息絶えた。

本当なら傷を付けずに獲りたかったが最初なので確実な方法を取る。


毛皮の事を考えればもっと綺麗に倒したいが今回はそれが目的ではない。

しかしここからは血の臭いを隠せなくなるので以前よりも周りの警戒心も増すだろう。


血の臭いを嗅ぎつけた魔物や獣が来る可能性が一気に高まる。

それに加えて行者にんにくのお陰ですごい匂いだ。


ここからは時間が勝負だ。

兎を持つのをラピアにまかせて俺達は血の臭いが周りに広まる前に急いで移動を始めた。


弓をしっかり習っていれば良かったと今更ながら思うが自分で剣に集中する事を選択したのでしょうがない。


それに弓はかさ張るし相当習熟しないと使い物にならない。

ただでさえ魔法は無属性の強化に重点を置いていて光魔法が若干おざなりになってしまっているのにこれ以上やることを増やして上手くやる自信はない。


軽く使えるようになる程度なら少しやれば多少は形になるだろうけど安定して確実にとなると絶対に無理だ。

メリも悔しそうにしているができない物を諦めるのもまた強さだ。


もしメリが弓に手を出すと言いはじめたら絶対に止める。

剣と強化、これだけでメリならもっと高みを目指せるので下手に手を出すのは絶対に駄目だ。


しっかり習える場所と時間があるなら良いのだがそんな都合の良い状況はやってこないだろう。

それなら投石の練習をした方が実用的だ。


取捨選択をした上でやっと今の強さなのだから横道に逸れている余裕はない。

しかしそれだけではおもしろくない。


そうだ、今度石の投げ合いをしよう。

メリが喜びそうな訓練だ。


強化の練習にもなるし楽しめるし一石二鳥だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ