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10話

「カーンカーンカーン。」


朝の鐘が鳴る。

昨日は緊張していつもより寝入るのが遅かったがそれでもしっかり寝れたのですっきりとした朝を迎えられた。


「おはよう。みんな今日は祭りだぞ!」


今日は多くの子供達は祭りの興奮からしっかり目覚めたようだ。

逆に興奮しすぎて眠れなかったのか起きれない子が何人か居た。


俺は心地よくない緊張感と共にみんなと食堂へ向かった。

食堂はいつもより賑やかでこれから始まる一年に一度の祭りにみんな期待しているようだ。


今日の流れは、魔力部門、学力部門、武力部門の順に行われ、それが終わった後に各部門の勝者が順に結婚を申し込むことになる。

そしてその後、宴会が始まるといった流れになる。


俺は緊張でガチガチになっているラピアに話しかけた。


「ラピア、大丈夫か。」

「あ、うん。大丈夫だよ。」


よく見るとラピアの手が震えている。

俺はそんなラピアの手を握った。


「普段通りできれば良い成績が残せるよ。ラピアなら絶対薬師になれる。」

「今日の結果で人生が決まるとなるとやっぱり不安だよ。」


昔はよくラピアはよく弱音を吐いていたが最近はめっきり無くなった。

しかしやっぱり不安なんだろう。

握った手はまだ震えが収まらない。


「私もがんばるからラピアもがんばろう!」


メリがラピアに後ろから抱きついた。


「うん。」


ラピアはうつむき、目を閉じてゆっくり深呼吸をしている。

数回深呼吸をした後、顔を上げた。


「まだ緊張は抜けないけど少し落ち着いたよ。」

「よし。じゃあ席に着こう。」


周りの11歳はみんな同じように友達や家族に囲まれて励まされている。

そんな中グロウだけは早く飯を食おうぜという顔でいた。


しばらく経って多くの祭り参加者が落ち着きを取り戻し始めた。

それを見計らって村長が話し始めた。


「今日は一年に一度の大事な祭りの日だ。参加者、特に11歳の者は仕事と結婚が決まる重要な日になる。みんな悔いが残らないよう精一杯全力を出し切ってくれ。ではいただきます。」


今日は朝から白パンと味の濃い肉の入った野菜スープだ。

参加者達は食べ物を味わうというより祭りの1日を噛み締めるといった様子である。


そんな雰囲気の中、朝飯が終わった。


そしてついに魔力部門の勝ち抜き戦が始まった。



魔力部門の勝ち抜き戦は如何に少ない魔力で勝つかが重要だ。


移動有りにすると魔力が尽きるまで勝負が付かない事が多いので移動なしの力勝負だ。

大人に体のギリギリに魔法障壁を張ってもらい、それに触れられたら負けになる。


魔法障壁は強化とほぼ一緒だ。

体に纏わせるか外に壁として出すかの違いだ。


魔法を受けるときには強化をすると魔法攻撃を軽減する事ができる。

つまり無属性適性がある人は強化だけをやっているだけで身体能力の高くなり、魔法攻撃にも強くなる。


俺が強化にこだわるのはこれに尽きる。

しかし完全に防ぎきるには障壁として体の外に大きく囲わないといけない。


魔法の威力が高い場合には体に纏わせている強化では防ぎきるのは難しい。

その場合は障壁として体の外を大きく囲うか強化を強くして密度を上げるかになる。

しかしそれでも熟練者は障壁ごと打ち抜いてくるので恐ろしい。


今回は参加者は8人なので優勝するには3回勝たなければならない。

規模が大きいと4回戦まであって決勝ではほとんど魔力がない者同士の戦いとなってしまう。


魔力が多い人、魔力の回復が遅い人は魔力の回復に数日かかってしまうので3回戦位が丁度よさそうだ。


参加者が会場に集まり始めた。

対戦相手を決めるくじを引くようだ。


ラピアはやっぱり緊張していて動きがぎこちない。


対照的にラピアと優勝争いをするであろうセリナは少し緊張しているようだが堂々としている。


くじを引いた結果ラピアは最終組、セリナは最初の組になった。

初戦にセリナと当たることはなく、見たところ決勝までは行けそうなので俺はほっとした。

そんなことを考えてると初戦が始まろうとしていた。


セリナと対戦相手は指定された位置について精神を集中している。

二人の準備完了の合図が出た後に戦いは始まる。


セリナの対戦相手は初戦がセリナということで絶望的な顔をしていて見ているこっちが可愛そうになってくる。


「私は準備できました。」


セリナが周囲に通る声で宣言する。


「私も大丈夫です。」

「二人とも準備ができたましたね。礼!」


二人は礼を行った。


「では・・・・・・。開始!」

「ウィンドアロー!」

「ファイアアロー!」


「勝者セリナ!」


勝負は一瞬で付いた。

セリナの素早いウィンドアローが対戦相手のファイアアローを打ち消し大人達が展開する対戦相手の魔法障壁にぶつかった。


属性的に威力の強いファイアアローを打ち消したことには驚かされるが一番厄介なのはその展開スピードだ。

開始と同時に両者アローを放ったが明らかにセリナのほうが発動が早く、アローの弾速も早かった。


これでは相手が開始同時にウォール系を打ったとしても下手すると間に合わない可能性がある。

アローより威力の高いランスでは確実に発動が間に合わない。


セリナは初戦で圧倒的な力の差を見せ付けたのだった。

消費魔力も最小限に抑えて最速で勝った事に大人達も関心しているようだ。


ラピアが勝てるか心配になる強さだ。


最後にセリナ達は互いに礼をして会場から離れた。

そして次の試合が始まったが両者はアローの打ち合いでどっちが勝ってもセリナに勝てないであろうことは一目瞭然だった。


第3試合は勝った方がラピアと当たるので俺もドキドキして見た。

しかし前回と同じくアローの打ち合いに終始し観客者もセリナとラピアの決勝が目玉だと悟ったようだ。


ついにラピアの出番が来た。

いくら実力通りなら勝てると言ってもハラハラすることに変わりはない。


メリも俺と同じ様な顔をしている。

そんな俺達の心配とは裏腹に二人は位置について戦闘が始まった。


「アースアロー!」

「アイスアロー。」


対戦相手が先に魔法を唱えたようだ。

ラピアは相手が魔法を打った後に落ち着いて魔法を唱えた。


相手のアースアローをラピアの出したアイスアローが打ち消し対戦相手へと向かった。

対戦相手は急いで次の魔法を打とうとするが間に合わず障壁に攻撃が当たった。


「ラピアおめでとう!」

「やったー。」


俺とメリは歓声を上げた。

終わって見れば落ち着いた安定感のある戦いだったな。


俺達が歓声を上げているとラピアはチラリとこちらを見て手を振った。

俺は思った以上にそれが嬉しくてちょっと赤くなってしまった。


「この様子なら次も勝てるな。」

「そうだね。そうすると決勝はセリナとラピアかあ。そこが山場だね。」


ラピアの試合が終わるとすぐセリナの戦いが始まる。

そして予想通りセリナが勝った。


セリナの対戦相手は初手にウォールを使おうとしたがセリナは初戦で見せたより威力が低いがスピードのあるアローを使い、相手がウォールを使う前に終わらせた。


「手強いな。初戦のより早いアローが来るなんて・・・・・・。」

「属性的には風の方が水より攻撃力もスピードも勝っているからラピアは大変ね。」


次はラピアの試合だ。


ラピアはどうやら緊張が少し抜けてきたようだ。


ラピアは前回の試合と同様に冷静に相手の動きに合わせて相手の魔法を打ち消して勝った。


「よっしゃー!次が決勝だ。がんばれラピアー!」

「ラピア。落ち着いて戦えてるよー。がんば!」


セリナ対ラピアの決勝が始まる。



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