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1話

初投稿です。

よろしくお願いします。


当分は毎日更新したいと思います。


魔境と呼ばれる場所がある。魔素が濃く魔物や魔獣が闊歩する土地だ。

魔境は魔物を生み出し、魔物は人を狩る。

魔物が侵食した場所はやがて魔素が溜まり、魔境と化す。人と魔の戦いは記録がない昔からずっと続いている。


と言うのが通説である。

しかし人は魔でも聖でも使える物はなんでも使う逞しい生物だ。

俺はそんな逞しい奴らの最前線、魔境を切り開いてできた開拓村の一つ、ミュッケ開拓村に住んでいる。


開拓村の意義は魔境を開拓し、土地を浄化するという崇高なお題目を掲げている。

魔力が魔に傾いたものを魔素と大雑把に言われていてる。

魔素は人が使うと毒が抜けてただの魔力になるという話しだ。


要するに人が魔境に住むと魔素が浄化されて人にとって使いやすい土地になるってことだ。

浄化といっても魔素がただの魔力になるだけで俺から見たら違いは全くわからない。

今の説明だって全部大人達や本からの受け売りだ。


だからと言って魔素が悪い物かと言われるとそうでもない。


現にミュッケ開拓村では魔素をたっぷり吸った質の良い作物ができている。

魔素が濃い土地に植物を植えると普通の土地に比べて魔力が多い質の良い生産物ができる。

今の世の中は魔力が多い物がなんでもいいっていう風潮だから開拓村産生産物は高く売れるのだ。


ミュッケ開拓村は森林地帯の魔境を切り開いているので切った木も売っている。


ただ問題なのはその木がとんでもなく硬いことだ。

慣れてない奴が木を切ろうとすると鉄の斧があっという間にボロボロになる。

きこりは魔力の扱いに長けた人間のみがなれる村では花形の職業の一つなのだ。


花形の職業というとやっぱり兵士が一番になる。

兵士は村の警備や魔境での間引き、他の村や町に移動する時の警護など戦闘全般を担当している。

一番死亡率の高い仕事だがミュッケ開拓村から出たことのない俺には輝いて見える。


しかし俺が目指している職業は兵士ではない。

村を出て冒険者になるのも憧れるが、冒険者も危険な仕事である。


何事も命あっての物種であるから俺は危険が少ない事務、会計の仕事に就きたいと思っている。

そしてその将来の仕事が決定する時期がだんだんと近づいてきている。


俺の名前はロッシュ、10歳だ。

両親は病気が原因で俺が小さい頃に亡くなっている。

今は同じように親を失くした子供達が集まる孤児院に住んでいる。


成人年齢は12才なので、村では子供は11歳の冬になると自分のこれからの職業を決める。

村では12才になると小さな家を与えられ、各自の仕事に付くことになる。

11歳の冬にある祭りは特別でそこで自分のこれからの職業が決まるのだ。

俺は10歳なので職業が決まるのは来年になるが問題は職業ついでに結婚相手も決まるって所だ。


ミュッケ村は実力主義で祭りでは学力、武力、魔力が競われる。


祭りの参加者は村の9歳から11歳で各部門で順位を決める。

そして11歳の者は成績上位者から順番に部門に沿った職業を選ぶ。


わかりやすい例を上げるとすると学力が優れていれば会計などの事務職、武力または魔力に優れていれば兵士などの戦闘職である。


その中でも薬師は聖魔法に適正があり、学力が高い者にしかなれない。

しかし実力が微妙でも年ごとの枠が開いていれば運よくなりたい職業になれたりする。

ミュッケ開拓村では職業の数を村長達が相談して決めているからだ。


しかし戦闘職などの空きがでやすい職業は後から変更することも可能だ。

何故9歳から11歳までが参加するのかというと2年、3年に一人という職業の適正を見る為である。


それと結婚にも関わってくるからだ。

11歳の成績上位者から順番に好きな相手を選んでいく。

といっても強制力が強いわけではないが、実力主義の村では強い者が発言力があるのは当然の事といえよう。


11歳の子供が決めるとなると不安になるだろうが親も周りの大人も関わって村一番の大行事になっている。

その上で本人の実力勝負となる。

しかしそれでは選ぶ者が有利で選ばれる者が不利になるので結婚相手を選ばない9歳と10歳の者も参加し、良い成績を出せば拒否権を得ることができるという具合になっている。


今年はウカリスという誰もが認める村一番の美少女が9歳になって婚約を受けることができる年齢に達したので祭り参加者の男達は殺気立っている。


俺はというと同じ孤児院に住んでいる11歳のメリかラピアに告白されるんじゃないかと内心ドキドキしている。

孤児院では年長の子供は俺とメリとラピア、それと10歳のグロウがいる。

今回祭りに参加するのはその4人だ。

同じ孤児院の仲間とあって俺達は特に仲がいいと思う。


男のグロウはまだ相手が決まった様子はないのでわからない。


メリは茶髪で明るいやつで背がやたら高い。

成長が早いことと相まって戦闘が強く、剣の扱いが上手い。

今年の祭りの武力部門1位は彼女になるだろう。


ラピアは青髪で優しくてちょっと気が弱い普通の女の子だ。

しかし魔力と学力は今回1~2位を争う程高く、聖魔法に適正があるので薬師になることがほぼ決まったようなものだ。


同い年の女の子でも仲が良い子はいるがメリとラピア、2人のうちどちからに告白されれば俺はもちろん了承するだろう。


俺は二人とも好きだからな。

問題は二人とも1位だった場合どちらを選んでいいのかわからないことだ。まだ自分が選ばれてもいないのにそんな事を考えていて少し恥ずかしくはあるが何も考えていないよりはましだろうと思う。


しかしそこまで真剣に悩んでいないのはラピアが薬師にほぼ決まっているからである。

薬師は村の中でも影響力が強い上に戦闘職でないので死ににくい。


男子の1番人気がウカリスとすると大人達の1番人気はラピアだ。


何度かラピアが子を持つ親に話しかけられているのを見たし、本人からそういった話があったことを聞いた。

ラピアは持ち家のあるしっかりとした奴と結婚するのが性格的にも一番なのではないだろうかと思う。


若干嫉妬はするものの、俺は孤児で仕事も会計狙いで、もしなれたとしても常に村にいるわけではない。

村から村、町へ移動していたりして何が起こるかわからないからな。


色々思うところはあるが疲れるから楽観的でいこうと思う。

それが楽だし、まだ何も決まっていないからな。


俺も会計の為に今回は学力の3位にはなりたいから勉強しないといけない。


孤児院の唯一の利点は勉強用の資料がしっかりあるってところだ。

持ち家に住んでる子供は稽古も勉強も親に教えてもらえるが孤児院だとそうもいかない。

しかし勉強用の資料だけはあるのでやろうと思えば学力の上位は狙えるだろう。


不利な状況で武力とか魔力の1~2位を狙えるメリとラピアがすごいだけなのだ。

今回は学力の3位を取って婚約の拒否権を確保しつつ、来年に1~2位を取ることができれば会計になれるだろう。


正直この歳で結婚と言われてもぼんやりしたものだからな。


村内の地位を強くしようとかそういう気はなく、ただ生き延びれればいい。

グロウは農民になるって言ってたし会計が駄目だったら俺も農民でいい。


いや、きこりもいいかな。

冒険者とか兵士に憧れがないとわけではないが子供が出来た時に子供を孤児にはしたくないからな。


この村の孤児はそういった意味では恵まれていると思う。

勉強も戦闘訓練もこの村では子供達が合同でやるが、町にいったら孤児にはどちらも無理だろう。


親に金のある家だけが子供に力と知恵を与えることができ、その子が大人になりまた子供に優れた教育をする。


金がない家の子供は両親の仕事を継ぐか独学または周りの人にお金を払って教えを乞わなくてはならない。

金がない家の子は金が稼げない仕事に就くのが大半だ。


そのことを考えると町の生活は輝きと同時に暗い影を感じる。


町に行った事はないが俺はこの村が大好きだからこの村で生きて死んでいくんだろうと思う。

子供を2人以上は作って一人は村に残ればそれで十分だ。


などと言うと周りからは大人びてるなと言われるがあと1年もすれば成人だからみんなも色々考えてるはず・・・だよな?


そんな俺の考えとはおかまいなしに時間はすぎていく。

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