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出会いⅣ

僕はゆっくり一度息を吐き、気持ちを落ち着かせようとする。


(ダメだ、全く鼓動がおさまらない)


インヴァネラの前に立った時から僕の心臓は激しく脈を打っている。


(何か武器を持たないと……)


手ぶらだった僕はインヴァネラを刺激しないようゆっくりと動き、近くに置いてあった分厚めの本をつかむ。


全くもって心細い武器だがないよりかはマシだ。


インヴァネラのすぐそばでは母親が娘をかばっている。


(なんとかして、あの親子から離さないと……)



僕は少しずつインヴァネラとの距離を縮める。

インヴァネラはこちらを向いたまま動かない。ただずっと僕を観察している。


嫌な汗をかき、本はじっとりしている。

3メートルほどまで詰め寄った僕は隙を与えることなく思いっきり本を投げつけた。


本はインヴァネラの顔面に直撃する。

間髪いれずにレジ横に置いてある看板を手に取り、インヴァネラの胴体にぶつけた。

あまりに力一杯看板を振ったため、僕は体勢を崩してその場に転んだ。

転びながら僕はインヴァネラを見上げた。


(全然効いてない……)


インヴァネラの姿勢はさっきと全く変わっていない。

そして、インヴァネラの顔が機械のようにグイッと動き僕を見下げる。


再び僕はインヴァネラと目があう。


だがそんな場合ではなくなった。


先ほどまでとは比べものにならない速さで、鎌を振りかぶり、僕のすぐ目の前の床を貫いた。


一瞬心臓が止まったような気がした。

少しずれていたら頭部が真っ二つになっていた。

その事実に恐怖した。


僕はすぐに起き上がって後ろに飛びインヴァネラと少し距離をとる。


(これで、標的は僕になっ………)


「げはっ」


全身に激痛が走る。

本棚にぶつかり一緒に僕はその場に横たわっていた。


(インヴァネラにやられたのか………)


朦朧とする頭でそのことだけは理解した。

一瞬のことで全くわからなかったが、峰打ちをされたようだ。


腹部に強い痛みを感じ抑える。斬られていないが、内臓がかき回されたような激痛と激しい吐き気が押し寄せてくる。


あまりの苦しさに声も出せず、意識は混濁していた。


怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。


もう何がなんだかわからない。


(座る時は三角座りしなきゃ)

母さんに言われたことを思い出す。


ゆっくり動き、頭を膝の間に埋め、両膝を組んだ。


(あれ、僕は今何に怯えているんだ………)



記憶が錯綜し、昔のビジョンが、小学生低学年くらいから今にかけての記憶が脳内に映し出される。


(そうか、怖いのは母さんじゃなくて、今はインヴァネラだ。あいつに殺されそうなんだ)


少し冷静になる。

先ほどまでの恐怖はなくなっていた。



すぐ前に何者かが近寄ってくる気配を感じる。


僕はゆっくりと顔をあげた。


「インヴァネラ……」


銀色の怪物は僕の前でゆっくりとその大きな鎌を構え、そして……



風を斬る音と、切断音が店内に響いた。

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