三話
さあ、どっちだろう! 奇跡か、あるいは必然か。
え? わからない?
それは困る。間違いなくこれがきっかけなのだが……わからないって? 本当に? ……ふうん。
……よし、こうしよう。私が出しゃばるのはもう止すとして、六郷レイジ、彼のことをもう少しの間だけ見ていてもらいたい。必要なのは第三者の目だからだ。
彼はいたって普通の男子生徒。目に余る部分もあるかもしれないが、どうぞお静かに。
質問の答えはまた後で聞くとしよう。
おっと、少女と一緒にいる男子生徒が口を開いたようだ。私は退散しよう。
……退散するからね、もうしばらくは呼んでも出てこないから、そのつもりで。いいね?
主張たっぷりにフェードアウト。
「申し訳ありません。私どもの不手際でございます」
「ふん」
レイジは頭で足を押し返そうとした。少し持ち上がったぞ! やった!
ゴキン。
やってなーい!
足に込められる力が増し、額が地面に激突した。
聞いたことがない音が鳴ったぞ、今。
転入初日から無視されただけでなく、転ばされて、足で踏まれて、強制土下座とは。
俺が何かしたのでしょうか? おしりも、おでこも酷く痛む。
「おい、見たか。今、抵抗したぞ」
「私にも押し返したように見えました」
ソールがぐりっと押しつけられた。
「気にいった」
後頭部を押さえつけていた力が消えたかと思うと、脇腹に蹴りが食いこむ。仰向けに転がされる。
ああ、そうか。これは学園をくだらないと言った罰か。そうに違いない。
レイジに非道の限りを尽くした女子の姿は、逆光でよく見えない。意識が朦朧とする。
「こいつは、奴隷にする」
その言葉を境にレイジは意識を失った。
もう学園を悪く言いません。だから、許して。