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懺悔  作者: 藤見日菜
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 土曜日の午後、萌子が教会の周りを掃除していると、都が教会から出てくるのが見えたので、声を掛ける。

「都さん」

「ああ、萌子そんなところにいたの。道理で見つからないわけね」

どうやら入れ違いになってしまっていたようだ。萌子は掃除道具持って、都と共に教会の中に戻った。

「今日はいい天気ね」

「そうね、洗濯物がよく乾いて嬉しいわ」

最近梅雨が明けたばかりで、久しぶりの晴天だった。気持ちもなんとなく軽くなる。いつになく朗らかな萌子を見て、都も笑みを深めた。

「今日は萌子にあげたいものがあって」

「なに?」

都は持っていたポーチの中から小さな袋を取り出した。不思議そうな顔で見つめる萌子の手にそれを握らせる。

「なに、これ」

「いいから開けてみて」

袋の中にはブレスレッドだった。白と水色のストーンでできていて、とても綺麗だ。萌子はしばらくうっとりと眺めた。しかしますます首を傾げることにもなった。

「これね、あたしが作ったの」

「都さんが? こういうの作るのが仕事なの?」

「まあね。これはパワーストーンで出来てるの。あなたを邪悪なものから守ってくれる」

都は萌子の手からブレスレッドを取ると、萌子の腕に着けてやった。サイズはぴったりで、修道服ともよく合っている。都は満足したように、にっこりと笑った。

「うん、よく似合ってる」

「でも、こんなのもらう理由ないのに」

「別に理由なんてないんだけど……あたしがあげたかったから、じゃ駄目? せっかく作ったし、もらってよ。萌子のために作ったんだから、返してもらってもどうしようもないし」

萌子はしばらく黙っていたが、やがて小さく「ありがと」と言った。その顔には、ほんの少し、笑みが浮かんでいた。



 都は萌子に見送られて、家への道を歩いていた。教会を出てすぐ、幼稚園から出てきた男とすれ違った。なんとなく気になって、都は男の方へと振り向いた。都が振り向いたとき、男は小走りになっていた。その先には、教会のなかに戻ろうとしていた萌子。都はすっと目を細め、並んで中へと入っていく二人をしばらく見つめていた。


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