第4話・常識、破壊《こわ》す規格外 ~魔力と魔力が関わって
第1章 制御不能の幼き見習い
第4話・常識、破壊す規格外 ~魔力と魔力が関わって~
回復魔法というのは、患者の治癒力を高めることで怪我や病気を治す魔法である。
そのため、治癒力を支える気力や体力がない者にかけると、逆に命を奪う危険性がある。
だから医呪神官は医学を学び、人の体がどうできていて、どのように治癒力を高めさせれば、より患者に負担なく治療できるかを学び続ける。
例えば、医呪神官が行う神経の修復というのは、回復魔法で人体に存在している神経という物質が正しく繋がるよう、集中的にその部分の治癒力を高めることで実現させる。
だから、神経と言うものがどういったもので、どのように繋がっているのかを知っていなければいけない。
それが常識であり、正しいアプローチの仕方だ。
だというのに……
(魔力を視認できるからと言って、その流れを整える? できるか!!)
どうやって『他人の魔力』に干渉するというのか……
魔法を使う際に他の存在から魔力を『借りる』のとは全く違う。
魔法は、自身の魔力を呼び水のようにして……言うならば、捧げることで……起こしたい現象を起こせる存在に力を借りて実現させる。
風を吹かせたいのなら風の精霊に力を借り、雨を降らせたいのならば水の精霊に力を借りるといったようなものだ。
回復魔法なら、神族に力を借りて、患者の治癒力を高めてもらう。
その際に、どこの治癒力を、どのように高めて欲しいのかを事細かに指定していく。
やりすぎれば治っても死なせてしまうし、足りなければ治しきれない。
それが当然の理で、「他者の魔力に干渉して流れを変える。」なんてことはできるはずのない行為。
神業どころか禁忌の技。
しかもそれで治るというのなら、ぜひとも干渉する方法を教えて欲しいくらいだ。
そうはいっても……
(魔力を視認できるアインだからできたことだろうな……)
感じ取れるだけでできるのならば、とっくの昔に誰かがその手法を見つけ出し、実現可能な領域まで落とし込んでいただろう。
いや。もしかすると……
(他人の魔力に干渉することで、何らかの弊害が双方に出る可能性もあるのか……どうなんだ? インスとアイン……この二人の間にある、異常なほどの依存性はそこから来ているのか? いや……そうだとしたら……いつからだ?)
頭が痛くなってきた。
愕然と繰り返した後、顔を強張らせて絶句してしまったシリウムに、アインがオロオロとして泣きそうになっている。
様子は分かっていたが、流石に余裕がない。
アインの肩に置いた手にも無意識に力が入っていたようで、びくりと震えて顔を顰めていた。
怖い顔をして……真顔になっていたので、アインの目からは怖い顔に見えた……黙り込んでしまったシリウムの様子に、何か、また悪いことをしていたのかと、アインも動揺して泣きそうになる。
肩に置かれた手が強く掴んできて、あまりの力の強さに震えた。
怒られるのか。呆れられるのか……
それとも……
と、不安に呑まれて目の前が真っ暗になる。
ぐるぐると、世界が回って、気持ち悪さで呼吸が乱れていく。
そんなアインの様子に、余裕は皆無だが医師として見過ごすこともできず、シリウムは大きく息を吐くともう一度、呼吸を補助する魔法をかけた。
びくりと大きく震えたアインは、直後にかけられた補助魔法でゆっくりと、深く呼吸をすることができるようになり、それに合わせて吐き気や眩暈も少しずつ治まっていく。
「……アイン。お前の目に、世界はどんなふうに映っている……?」
「……せ、かい……?」
それから、ゆっくりと口を開いたシリウムの新たな問いかけに、アインは涙目のままで首を傾げた。
第1章第4話をお読みいただきありがとうございます。
アインが放った「魔力の流れを整えた」という爆弾発言。
回復魔法の正しいアプローチ(常識)を知っている最高医師からすれば、アインがやってのけたことはもはや理解の範疇を超えた禁忌の技です。
魔力を視認できるアインだからこそ成し得た奇跡ですが、シリウムは同時に「他人の魔力に干渉したことによる弊害」の可能性に思い至ります。
謎が深まり、真剣に思考の海に沈むシリウム。
しかし、その「余裕のない沈黙」は、アインの心に「また悪いことをした」という極限の恐怖と絶望を呼び起こしてしまいます。
互いを思いやりながらも決定的に噛み合わない二人。
呼吸を乱すアインに対し、シリウムが彼を理解するために放った「ある質問」。
アインの口から何が語られるのか?
次回もお楽しみに!
【今後の連載スケジュールについて】
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【第6弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】
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ノリト&ミコト




