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第3話・神秘の瞳が視たものは ~あの日の恐怖を思い出す~

第1章 制御不能の幼き見習い



     第3話・神秘の瞳が視たものは ~あの日の恐怖を思い出す~



 神経の修復はもちろん、人の体の構造を知らなければ、大きな怪我や病気の治療など、できるはずがない。



 なぜなら、どこに何があって、どのような仕組みで成り立っているのかの『正解』を知らずに、適当に治療しようとしたところで『正しく』治せるはずなどないから。



「……僕……勉強、してない……です……」



 恐れるように、か細い声がアインの唇から零れ落ちる。




 だよなぁ。とシリウムは内心で頷き、若干遠い目をした。



 ただし、一瞬。その一瞬であっても、敏感に察したアインがびくりと身を震わせたのを見て、溜め息を飲み込む。




「確かに、お前の授業内容に解剖学などの専門分野にかかわる物はなかった」



 けれど、それでもアインは神経の修復を()()()()()いるのだ。



「知らないのなら、なぜできた? あの時、どうやって修復させた?」



 だから、それを聞き出す必要がある。




 あの直後は、他のことが気になっていたため、気づくのが遅れたが、よくよく考えるまでもなく、知りもしない事を成し遂げるなんて神業、普通にできるはずがない。




 どうやって修復させたのか?



 その問いかけに、アインは懸命にあの時のことを思い出そうと記憶を辿る。



 何しろ、あの時はアイン自身もギリギリの綱渡りのような状態で、更に必死であったため、言葉にして説明するとなると……きちんと考えて、順序立てなくてはいけない。




「……ええと……まず、インス様の肩に、何か、霞のようなものが、見えました……」




 それは、見間違いかとも思えるほどの微かなもので、だからずいぶんと集中して、しっかりと『見よう』とした。



 目で見るだけではなくて、感じ取るために掌を向けて……そうやって、そこにあるのが何なのか、そもそも本当にあるのかを、確かめた。



「……それでインスの怪我に、神剣の力が混じったお前の魔力の残滓があると気づいたんだったな?」



 見習いが、回復魔法をかけたいと言い出したのだ。



 当然理由を聞き出し、許可するかどうかを検討する必要がある。



 だからその辺りのことはシリウムも、実際に魔法をかけさせる前に聞いていた。



 確認に、こくりと頷いたアインはどんな風に見えたのか。どう感じ取れたのかの説明を続ける。




「……すごく、細い、糸みたいに、魔力が絡み合っていました……」




 口にして、こんな言い方でちゃんと説明できているのかと不安になる。




 けれど、別に光って見えたわけでも、あるいは逆に影があるように見えたわけでもなく、ただ細い線のような、糸のような魔力があっただけ。



 それが複雑に絡み合って、まるで小さな糸玉ができているような感じであっただけだ。



 ただそれも、よく見るとインスの魔力を纏った糸と、それとは別の糸の二種類があって……インスのものではない魔力が、インスの魔力の糸に絡みついていた。



 その、絡みつく魔力が、自分の魔力を帯びていることに気づいて青ざめた。




 全く同一ではない。それは確かだ。変質していた。



 けれど、間違いなく自分の魔力を帯びていて……怖くなった。




 知らないうちに、自分がインスを傷つけて、怪我をさせてしまったのだろうか?




(……インスさまを……傷つけたり、苦しませたりなんか……ぜったいに、したく、ないのに……)




 そのはずなのに……



 もしかして、ずっとそばにいて欲しいと願って、呪いのように怪我が治らないようにと、魔力を絡めてしまった?




 そう思ったら、そんなことをしてしまった自分を、嫌いになるんじゃないかと……



 それどころか、憎まれたり、恨まれたりするかもしれない……



 それとも……




(……もう、僕を、気にしてくれなく、なるかもしれない……)




 何かの気持ちを向けて貰えるのなら、それはまだマシだ。



 けれど、関心をなくされてしまったら……どうすることもできなくなる。



 その方が怖くて……



 それが、自分の我儘だとは分かっていたけれど、それでも、インスにまで『居ない者』として扱われたら……



 思い出してゾッとする。




(たとえ、神さまが僕を『居ない者(アイン)』だと言っても、インスさまがぼくを……)




 記憶もなく、どこから来たのかもわからないアインの手がかりを得ようとした占いで、神が応えた結果は『居ない者』。



 だからアインは『居ない者(アイン)』という呼び名を与えられた。




「その絡み合った糸のような魔力を繋いだのか?」



 思考の海に墜ちて、顔面蒼白になったアインを宥めるように肩に手を置き、確認するシリウムに、必死で息をして、気持ちを落ち着けようとしながら、アインは首を横に振る。



「……絡んでいた、僕の魔力を剥がして、インス様の方の、魔力の流れを整えました」


「……魔力の、流れを、整えた……?」



 返答に、目を見開いたシリウムの口から、愕然とした呟きが繰り返す様に零れ落ちた。


第1章第3話をお読みいただきありがとうございます。


「人体の構造をどこで学んだ?」と真剣に問われて、「勉強してないです……」と怯えながら答えるアイン。


アインなりに一生懸命、あの時「何が見えて、どうしたのか」を説明してくれたのですが……。


インスの怪我に自分の魔力が絡んでいるのを見て絶望し、「嫌われたくない」という一心で彼が行ったアプローチは、医学でもなんでもない「他人の魔力の流れを整える」というとんでもない神業(禁忌)でした!


物理的な神経を繋いだわけではなく、魔力そのものに干渉していたという真実に、シリウム神官長はまたしても絶句してしまいます。


常識が通じない幼き見習いと、振り回される大人の問答はまだまだ続きます。


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第6弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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