第5話・建前と本音 ~煽り煽られ泣きそうに~
第4章 皇宮医務殿での授業
第5話・建前と本音 ~煽り煽られ泣きそうに~
「一応言っておくが、私は授業で呼んだつもりはなかったぞ?」
視線を逸らしたままぼそりと言い訳するウスニーに、「へえ?」と返したインスの目には温度がない。
「そうだな。私のところに来たのも、授業で使えないかという相談ではなかった。ただ……」
そのウスニーの言葉を肯定したのはシリウムの方。
言いながらも視線はずっとアインを見ていて、居心地悪そうにアインはインスに頭を摺り寄せる。
「……そういう名目でも付けないと、連れ出すことができない状況になっているというだけだ……」
「…………へえ?」
後を継いで説明を続けたウスニーの言葉に、一瞬無になったインスの返答が先ほどよりも数段冷えていた。
「……アイン……」
溜め息を一つ吐いて、気持ちを切り替えたウスニーが呼び掛ける。
正直、これ以上インスと話していると室温が下がりすぎて風邪を引きそうだ。
「っ。……はい……」
一瞬びくっとしたアインは、それでも恐る恐る顔を向けて返事をする。
「お前に皇宮医務殿に来て欲しかった理由は、インスの検査のためだ」
「えっ!?」
「はい?」
その言葉に、驚いてアインはインスを見上げ、インスは目を丸くして首を傾げた。
「っ! インスさま、どこか……っ!!」
「ちょ。落ち着いて下さい。アイン君……私は何とも……」
一瞬だけ動きを止めたアインはすぐにインスを問い詰めるように言葉を重ね、そのままベッドに押し倒す勢いで抱き着いたままの体に体重をかけてくる。
慌てて宥めるインスの言葉も聞こえていないようで、真っ青になって涙目。
「数日前に心臓発作を起こしただろうが?」
「ウスニーさんっ!!」
「ええっ!!??」
何ともない。と言いかけたインスを遮って、ジト目で断言したウスニーを、インスは非難を色濃く乗せた悲鳴で呼び、アインは大きく目を見開いて文字通り悲鳴を上げた。
「あなた! 何の異常もなかったと! それに、心臓発作じゃないでしょうっ!?」
「原因がわからんと言っただけだ。心臓発作かどうかもはっきりはしないが、起こった症状はソレが一番近いんだから、説明するならそうなるだろう?」
「っ! インスさまっ!! 寝てくださいっ!!」
落ち着かせようとしているのにぶっこんでくるウスニーに文句をつけるインスだったが、あっさり、きっぱり、はっきり言い切ったウスニーの言葉を聞いて、アインが更に悲鳴を上げる。
「分かりました! 分かりましたから、落ち着いて!!」
ぐいぐいと肩を押されたインスは、とうとうそう言って、アインを抱きしめたままベッドに横になった。
「「……………」」
疲れたように溜め息を漏らしたインスと、抱かれたまま一緒に横になったことで驚いたアインが一瞬黙り込む。
「……全員、少し落ち着け……」
呆れた様子でシリウムが一喝した。
「まったく。……ウスニー。お前も、わざわざ煽るな。アインの負担になる」
「は……。申し訳ありません……」
溜め息を吐いて、最初に医師であるウスニーを叱ったシリウムの言葉に、反論の余地もなくて素直に謝罪する。
「インス。お前は自分の体のことを軽視し過ぎだ。もう少し、ちゃんと気にしろ」
「……分かりました……」
続いてシリウムがぎろりと睨んだのはインスの方。
泣きそうになっているアインの、その不安げな顔を見てしまえばインスとしても素直に頷くしかない。
「アイン。お前も、心配なのはわかるが、話をちゃんと聞け。それと、患者に負担をかけるな」
「はい。ごめんなさい……」
幾分声音を緩めて、けれども注意点ははっきり伝えられて、アインも小さくなって謝る。
「……それで? ウスニー。最初から、全員にわかるように説明しろ」
「かしこまりました」
もう一度溜め息。再度、説明を促したシリウムに頷いて、今度こそきちんと、落ち着いた状態での説明をウスニーが始めた。
第4章第5話をお読みいただきありがとうございます。
「ここにも欲にまみれた大人がいる」とインスに冷ややかな目を向けられていたシリウムとウスニーですが、彼らがアインを呼んだ本当の目的は、他でもない「インスの検査」でした。
自分のために呼ばれたのだと知り驚くインスと、インスの身に何かあったのだと察してアインは大パニック!
インスを押し倒す勢いで抱きつき、涙目になってしまいます。
慌てて宥めようとするインスですが、ここでウスニーが「数日前に心臓発作を起こしただろうが」と容赦ない爆弾発言を投下。
これにはインスもアインも揃って悲鳴を上げるという、最高のカオス空間が出来上がってしまいました!
涙目で自分にしがみつくアインを抱きしめるインスと、事態を収拾してきちんとした説明を促すシリウム。
アインにしかできない「検査」とは一体……?
次回もお楽しみに!
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ノリト&ミコト




