第4話・三者三様、悲喜交々 ~彼も彼らも同じく人間だから~
第4章 皇宮医務殿での授業
第4話・三者三様、悲喜交々 ~彼も彼らも同じく人間だから~
「……なるほど……」
アインから、ここ数日の間に起きていた出来事を聞き出したインスは、表情にも声音にも一切の揺らぎを見せない。
「「……………」」
その穏やかさがむしろ逆に恐ろしく感じて、二人のやり取りを黙ってみていることしかできないシリウムとウスニーは内心で頭を抱えていた。
特に、普段主神殿で過ごしているシリウムの方がヴィロバをよく知っているだけに頭痛が酷い。
(……あいつは熱心ではあるんだ……ただただ熱心なだけではあるんだが……)
それが、最悪の形でアインに向けられている。
(神官呪師学校の校長が、何をやっているんだ……! 信仰心が歪み過ぎだろう!!)
逆に、普段から皇宮にある神殿で過ごしているウスニーは、それほど頻繁に会う相手ではないので、そう詳しく為人を知らない。
だからこそシリウムよりも客観的に状況を見ていた。
「……アイン君は、神殿の方にはそういったお話をする相手はいないのですか……?」
「…………ぇ……っと……」
少し首を傾げて問いかけたインスに、アインは視線を彷徨わせ、口籠る。
「……なるほど……?」
声音も表情も一切変わっていないのに、室温が一気に下がった気がするのは気のせいか?
「……あ~。悪いが、その話はそこまでで……」
ぶるっと一度身を震わせて、わざとらしく咳払いしたシリウムが割って入る。
「はい?」
「……ぁ……」
笑顔のままのインスの声はオクターブ語尾が上がっていて、アインの方はハッと気づいたように小さく声を上げた。
「ちゃんと決着は付ける。だから、とりあえず――先に授業をさせろ」
そう言われて、アインはオロオロと三人の顔を見回し、インスは目をしばたたく。
「……授業……?」
「……今日、アインを皇宮医務殿に呼んだのは授業の一環だ」
何を言っているのか分からないと言いたげに繰り返したインスに、溜め息混じりでウスニーが伝えた。
「……わざわざ……? どうして?」
ますます訝し気に眉を顰めたインスは、胡乱げにシリウムとウスニーを見た。
神官呪師としての学習なら、主神殿にある学校でできるはず。
いや。むしろ、学校以外での魔法の知識の授与は極刑。
だから、何かの『知識』を与えるものではない。
医務殿で行われるということは……治療魔法の技術向上を目的とする実技と言うことか。
しかし……
(……一気にキナ臭い話になってきましたけれど……?)
ジトっとしたインスの眼差しに、ウスニーはスイっと視線を逸らし、シリウムは少し、興味深そうにアインを見ている。
この温度差も怪しい……
「……ここにも、欲にまみれた汚い大人がいるようですね……」
「……ぇ……?」
ぼそりと呟いたインスの声がよく聞き取れなくて、アインは不思議そうに首を傾げた。
第4章第4話をお読みいただきありがとうございます。
アインから語られた、神殿側での過酷な詰め込みと歪んだ囲い込みの実態。
話を聞き終えたインスは一切の感情を顔に出しませんでしたが、その「無」の反応こそが何より恐ろしく、シリウムたち大人を戦慄させます。
怒らせてはいけない人を本気で怒らせてしまった……。
耐えきれなくなったシリウムが「とりあえず授業をさせろ!」と強引に話題を逸らしますが、鋭いインスは「わざわざ皇宮に呼んだ裏の理由(大人たちの思惑)」に気づき、ジト目を向けて……。
「欲にまみれた大人」認定されてしまうシリウムたちと、一人だけ「???」と首を傾げるアイン。
果たして「授業」の本当の目的とは?
次回もお楽しみに!
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ノリト&ミコト




