第3話・重い話を軽くして ~全く軽くない中身~
第4章 皇宮医務殿での授業
第3話・重い話を軽くして ~全く軽くない中身~
アインの、この変なところだけ察しが悪いのはなぜなんだ?
疲れ切って、重い溜め息を吐くシリウムの様子に、オロオロと視線を揺らすアインは、無意識に自身を抱くインスを見上げる。
穏やかな微笑を浮かべて、アインを見下ろし、ずっと背を撫でて落ち着かせているインスは、その縋るような眼差しにほわりと笑みを深めた。
「……つまり、アイン君に意地悪している人がいっぱいいる。というお話しです」
「……いじわる……?」
「「……意地悪……」」
ぶっちゃけたインスの物言いに、アインはパチパチと瞬きを繰り返し、シリウムとウスニーはドッと疲れを感じて顔から表情が抜け落ちる。
いや。そんな次元の話ではないぞ?
まあ。分かっていてそう言っているのだろうが……
シリウムが、ウスニーが、それぞれに心の中でツッコミを入れるが、声には出さない。
「……アイン君。最近、何かちょっと嫌だな。とか、怖いな。とか、思うようなことはありませんでしたか?」
「…………ぁ……」
ほんの少し眉を下げて、心配そうに問いかけたインスに、サーっと顔から血の気が引いたアインが震える。
掠れた吐息が唇から零れ落ちて、ぎゅっと、インスにしがみついた。
「……何か、そう思うようなことがあったのですね……?」
抱き着いてきたアインを少し強めに抱きしめ、頭を撫でながら囁くインスにだけ、辛うじてわかる程度に、ごく微かに頷いたアインに、ほんの一瞬、インスの表情が氷のごとき冷たさを覗かせる。
「「……っ……!?」」
その、ほんの一瞬の変化を見せられたシリウムとウスニーが硬直し、信じられないと言いたげにインスを凝視した。
「……アイン君が、そう思ってしまうことは、悪いことではありません……」
「…………でも……」
刹那の極寒を感じさせない、穏やかな声で伝えるインスに、アインは何かに怯えるように、首を横に振る。
「アイン君。君は、いつもちゃんと、精一杯、頑張っているのでしょう?」
「……それは……はい……でも……」
囁きが、甘い誘惑のようにも感じて、アインの声音が揺れる。
「アイン君」
「……っ」
納得しきれていない。あるいは、納得してはいけないというかのような揺らぎに、インスは少し、強い声でアインを呼んだ。
びくっと、ほんの僅かに震えたアインの顔を上げさせる。
そっと、頬に片手を添えて、決して無理には上げさせない。
アイン自身が、ゆっくりとでもちゃんと自分を見るのを待つ。
穏やかに促されて、恐る恐る顔を上げたアインが見たのは、優しくてあたたかな眼差しと、慈しむような微笑で。
(……全然……ちがう……)
ぱちりと、一度大きく瞬きをしたアインがじっとその目を見つめ返した。
「言ったでしょう? 無理はしないで、頑張ってください。と」
「………ぁ……」
やさしい、やわらかい、あたたかい言葉が、胸の奥の、渇いたところに染みていく。
掠れた熱と同時に、ぽろりと涙が頬を伝った。
第4章第3話をお読みいただきありがとうございます。
シリウムの真面目すぎる説明を、インスが「意地悪されているってことです」と一刀両断!
これにはシリウムもウスニーも完全に顔から表情が抜け落ちてしまいます。
自分を取り巻く大人たちの悪意(欲)に気づけない純粋なアイン。
ですが、インスからの「最近、怖いなと思うことはありませんでしたか?」という優しい問いかけには、隠しきれない恐怖が溢れ出します。
アインの抱える恐怖に触れた瞬間、インスが見せた一瞬の「極寒の表情」に大人たちは再び戦慄することに……。
そんな裏の顔は一切見せず、アインにはとことん甘く優しく接するインス。
傷ついた幼子の心を、圧倒的な優しさで包み込み、そのあたたかい言葉にアインもポロリと涙をこぼします。
二人の絆がさらに深まっていくようですが、果たして……?
次回もお楽しみに!
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ノリト&ミコト




