第5話・奥歯に挟まる棘よりも ~限界超えて弾け飛び~
第3章 神殿の呪師たち
第5話・奥歯に挟まる棘よりも ~限界超えて弾け飛び~
怯えて震えるアインが落ち着くのを待っていると、授業の時間に遅れてしまう。
だからクロードはできるだけ怖がらせないように注意して、声をかけながら抱き上げると、そのまま呪師寮を出た。
向かった先が主神殿の医務殿で、そう指示されたクロード自身も不思議に思ったが、アインも不思議そうに首を傾げる。
「……あの……」
「指示」
「……………」
疑問のままに声をかけたアインに一言で返し、そこから先はお互いに無言のまま。
主神殿の医務殿では医呪神官長のシリウムと合流し、シリウムに付く神殿護衛官と合わせて四人で皇宮医務殿へと向かう。
どことなく漂う緊張感に、着いたころにはアインはぐったりと疲れ切ってしまっていた。
「……お待ちしていました」
「悪いな。借りるぞ」
皇宮医務殿で迎えに出てきたウスニーに対し、シリウムはそう告げて、一瞬だけ自身に付いている護衛官を目で示す。
護衛官は、どういう訳かアインの全身をチラリ、チラリと見ていて、護衛対象のはずのシリウムの様子も、相対しているウスニーの様子もろくに見ていない。
その視線が足元、左の腕。
……一瞬、首元に跳ねて――すぐにまた足元へ落ちる。
(気のせい? でも……多い……)
きゅっと唇を結んで俯くアインに、ウスニーは一瞬だけ目をやって……
「いえ。学びの役に立つのでしたら、喜んで……」
察しはしたが、口に出したのはこれだけ。
そのまま一同を促し、入院棟へと向かった。
「…………っ!?」
向かう先がどこなのか。
途中で気づいたアインが一瞬びくりと体を震わせて……
「……アイン……?」
抱いているクロードが不思議そうに……とてもそうは見えないが……声をかける。
「……ぁ……。だ、大丈夫……です……」
青ざめて、とても大丈夫そうには見えない顔で応じたアインの視線がウスニーを見つめた。
気づいてはいたが何も反応せずに先を促すウスニーは、シリウムと二言、三言と話をしていて、何でもない様子。
けれど……
(……今日の、授業……何か……)
ザラリとした違和感がアインの胸に広がって、嫌な鼓動にどんどん圧迫されていく。
どうして、今日に限ってクロードが付き添いなのだろう?
――あの事件から、一度も会って貰えなかったのに。
どうして、今日の授業は神殿内ではなくて、わざわざ皇宮にある神殿の医務殿で行われるのだろう?
――実技の復習なら、主神殿の医務殿でもできるはずなのに。
どうして……
――シリウム様の護衛官の人は、ずっと、僕を見ているのだろう?
また、首元? を……見た?
まるで……
『君が居ていいのは神殿です。そして居られるのは、神殿が引き受けているからです。……そのことを……。……決して……忘れてはいけませんよ……?』
頭の奥で、神官呪師学校の校長・ヴィロバの意志が反響する。
撫でる指先の……強くはないのに、動けなくなる熱さが……放されても残る感覚までもが甦って、ゾワリと全身に悪寒が走った。
「…………っ!!」
「? ……アイン?」
息を詰まらせたアインが硬直したのを、クロードが軽く、あやすように揺らして宥めた。
「……どうした?」
クロードの声に、振り返ったシリウムは、真っ青になって硬直しているアインと、眉一つ動いていないように見えて、困惑しきりと言った様子のクロードとを見て、微かに顔を顰める。
「……何だ? アイン。具合でも悪いのか?」
「……ぁ……。い……ぃいえ。……だ……だいじょ、ぶ……で……す」
問われて、必死に首を横に振る。
大丈夫。大丈夫じゃないと……!
「……先に少し、休憩させますか?」
「っ!? だ、大丈夫、です……!!」
同様に、眉を顰めたウスニーの言葉に、悲鳴じみた声が静かな医務殿の廊下に響いた。
第3章第5話をお読みいただきありがとうございます。
クロードに抱っこされて皇宮医務殿にやってきたアインですが……。
シリウムの護衛官からジロジロ見られたことで、完全にキャパオーバーになってしまいました(泣)。
護衛官からすればただの仕事(見張り)だったのかもしれませんが、アインの頭の中ではヴィロバの「神殿の人間であることを忘れるなよ(圧)」というホラーな笑顔がフラッシュバック!
心配したウスニーが「少し休むか?」と聞いたのに、「休んだら捨てられる!」と勘違いして「大丈夫です!!」と廊下に悲鳴を響かせてしまいます。
限界を迎えたアインの心。
張り詰めた糸が切れる寸前の皇宮医務殿で、何が起こるのか?
次回もお楽しみに!
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続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!
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【第6弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】
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ノリト&ミコト




