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第4話・言葉足らずと思い込み ~見えない溝は明確に~

第3章 神殿の呪師たち



      第4話・言葉足らずと思い込み ~見えない溝は明確に~



 本日の担当神殿護衛官がクロードだったことに、アインは一瞬、安堵して……




(…………すごく、久しぶり……?)




 気づいた瞬間にびくりと身を震わせた。




 クロードは、アインを保護して神殿に連れて来てくれた恩人。



 だから、ずっと気にかけてくれていて……皇宮で授業を受ける時の付き添いでよく担当してくれていた。




 けれど、そろそろ二か月半ほど経ったか……魔族にこの国のお姫さまが狙われた事件で……



 アイン(じぶん)も死にかけた事件で、医務殿に入院してから()()()()()()会っていなかった。




「……ぁ……」


「? アイン?」




 青ざめて、震えたアインが凝視してくるのを、クロードは表情を動かすことなく首を傾げて見下ろす。




 クロードは、大柄な体格で、口下手で強面な上、あまり表情の変化が分からないから、初見の子供などにはよく怯えられる。



 けれど、アインを保護したことからも分かるように、その性質は超の付くお人よし。



 よく小動物なども拾ってきては里親探しに四苦八苦しているし、アインと同室の兄弟子であるペルフィーとも仲は良い。



 アインも、他の誰よりもなついていた相手。



 けれど……




(……ぼ、く……お……ひめ、さま……を……)




 刺した。クロードの目の前で。



 クロードが守っていた、この国の皇孫皇女・ジャンヌを。




 もちろん、それはアインの意思ではない。



 魔族によって心を抜かれた、空っぽの身体(うつわ)を操られてのこと。




 でも、その時の『感覚』をすべて共有させられていたアインからすれば、()()()やったこと。



 だからきっと、クロードも()()()いるはずだ。



 現に、それ以降、一度もクロードと会えなかったのだから……




 真っ青になって凝視するアインと、無言で見下ろすクロードとがしばし無言で見つめ合い、ふと、クロードが眉を顰めた。




「……アイン。腕?」


「…………ぇ? …………っ!?」




 そっと、クロードがアインの左腕に手を伸ばす。



 一瞬首を傾げたアインは途端にびくりと大きく震え、その腕を庇うようにして身を竦めた。




「「……………」」




 驚いたクロードが動きを止め、アインはぎゅっと目を瞑って小さくなる。




「……アイン……」




 スッと、その場で膝をつき、視線を合わせたクロードが呼び掛ける。




「……………っ」




 震えながら、そっと顔を上げたアインは無言。



 声を出せないくらいに怯えて、泣きそうな顔で見つめ返す。




「……腕、まだ治ってない……?」


「…………ぁ」




 ほんの僅か、よく知らない者が見れば気づかない程度に眉を下げ、心配そうに問いかけられて、アインの唇から微かな吐息が零れる。




「……この怪我は、治せない、です……」


「……どうして……?」




 それから、震える声が告げると、クロードは更に問いを重ねた。



 目に涙を溜めて、微かに微笑んだアインは、一度、そっと左腕を撫でると、クロードに向き直る。




「……罰、だから……」


「…………?」




 瞬きの拍子に零れた雫が、ポツリと床に染みを作った。




「……お姫さまを、傷つけた僕に、ファン様が、残した罰……だから……」


「……………」




 アインの言っていることが分からなくて、クロードは真顔になって沈黙する。




 ファンというのは、皇孫皇女ジャンヌの専属護衛騎士団・団長を務めるファン卿ディアス。



 どういう訳か以前からアインを厭っている態度を隠しもしない彼は、魔族に操られてジャンヌを刺したアインに対して厳罰を要求していた。




 けれど、その要求は退けられていて、だからアインは今も神殿の呪師寮にいて授業を受けている。



 今日は皇宮医務殿での実技だと聞かされているクロードは、どうしてそれで『ファンが残した罰』があるのかも、なぜ治さないのかも、全く理解できない。




(……この二か月半。ジャンヌやリオン、それに皇子の件もあって、アインに付くことはなかったが……)




 入院している間に、見舞いにも行けなかったことが悔やまれる。




 今、明らかに、クロードとアインの間には、見えない距離が開いていることを……アインの態度で明確に突き付けられていた。


第3章第4話をお読みいただきありがとうございます。


今日の神殿護衛官は、久しぶりに登場のクロード!


恩人である彼との再会に喜ぶかと思いきや……


アインの心には「お姫様ジャンヌを刺した自分は、クロードにも嫌われたんだ」という深い罪悪感と恐怖が根付いてしまっていました。


そんなアインの様子に戸惑うクロードですが、さらに彼は、アインの腕の怪我が二か月半経った今も全く治っていないことに気づきます。


まだ治っていないのか心配したクロードに、アインは涙ながらに「ファン様が残した罰だから治してはいけない」と告げます。


ファンの厳格な性格を知っているからこそ、そんな陰湿な罰などあり得ないと理解できないクロード。


二か月の空白が生み出してしまった「見えない溝」。


果たして、二人の関係は修復できるのか?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第6弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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