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第2話・言えない本音を気にしない ~読みたくないのに読めた裏側~

第3章 神殿の呪師たち



    第2話・言えない本音を気にしない ~読みたくないのに読めた裏側~



 幸いと言うべきか、思いがけずというべきか……




 心臓発作のような症状を起こして昏倒したインスは、翌朝には普通に目を覚まし、いつも通りに食事も機能訓練も可能になっていた。




「……そうは言っても、いきなり発作を起こして倒れたことに違いはない……」


「……そのようですが……何ともありませんよ……?」




 難しい顔でインスを睨むウスニーに、インスの方は困ったように首を傾げるだけ。




 確かに、あの時は突然の激痛に悲鳴を上げて昏倒してしまったが、今は何ともないし、ウスニーも異常がなかったことを確認し、それをインス本人にも伝えている。




 そして、ここ数日ずっと付き纏っていた秘薬による不快感が大分軽減されたことで、インスとしてはむしろ調子が良いと感じていた。




「……ソレは単に日数が経過して効果が薄れてきたからにすぎん。つまり、順調に回復していること()()は確かだ……」




 ここのところずっとベッドで唸っていたインスが、今日は少し楽そうな様子であることと、実際に自己申告でもずいぶん楽になったことを聞いて、ウスニーは胡乱げな眼差しで睨み据える。




「だが、原因不明の発作など、次にいつ起きるかわからない危険因子だ……検査が終わるまでは退院させられん」


「……いえ。どちらにしろ、まだ完全に不快感が取れたわけではないので、もう数日は復帰は無理だと思いますよ?」




 真面目に告げたウスニーに、インスは確かに楽にはなってきたが、復帰できるほどマシではないとジト目になって文句をつける。




「……なら、もうしばらくは大人しくしていることだな……主神殿に()()()()の派遣を依頼しているから、検査はそれからになる……」




 インスは、アインが自分の精神体の状態を『視認』し、その心臓部の損傷が治りきっていないことを伝えたとは知らない。




 だからウスニーは『アインを呼ぶ』ことを明確には伝えない。




 そもそも、申請は出したが、神殿側がアインの囲い込みを強化しようと考えているのなら、その()()が認められることはないだろう。




(……ゾナール神官長をはじめ、最上層部にアインを囲い込み、神子や聖人として擁立する意向は()()……。ないというより()()()()と理解していらっしゃる……)




 医呪神官長のシリウム=ゾナールを始めとした各専門を統括する神官長たち。



 そして主神殿の総括である大神官と、この国のすべての神殿のトップである教皇と言う最上層部。




 彼らはアインを囲い込むつもりはない。



 ウスニーが考えているように『できない』ことを理解しているから。




 けれど……




(……問題は、その下の上層部……中途半端に真実を知っていて、すべての情報を持っていないから暴走する……とはいえ、国家機密をそうそう流布できる筈もない……)




 それが、事態の悪化を招いているのは分かっているが、聖皇国(このくに)の最上層部である皇帝の認可がない状態で不用意に口に出せるはずもなく……




「わざわざ主神殿から技師を呼ぶ必要があるんですか?」




 ウスニーの言葉を表面通りに受け止めて首を傾げるインスを見ながら……




「……あるに決まってるだろう。バカ者が……」




 軽く、インスの頭をはたいて叱りつけるウスニーは、最悪国が割れかねない不穏さに背筋が凍るのを感じつつも、今は真実を黙し、これ以上、状況が悪化しないことを神に祈ることしかできなかった。



――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 思ったよりもすんなりと申請が通ったことに、ウスニーはホッと胸を撫で下ろす。




 インスの身を襲った異変の原因を探るため、アインの持つ見者けんじゃとしての視界が必要と判断したウスニーが申請という名の相談を持ち掛けた先は、もちろん直属の上官である医呪神官長のシリウムに対して。



 そうは言っても、一部でアインを囲い込もうとする動きがあるのも事実で……最悪、今後一切アインが神殿の敷地から外には出して貰えない可能性も高かった。




 一体どうやって反対するであろう層を黙らせたのかは知らないが……知りたくもないが……皇宮医務殿にアインを呼ぶことには成功した。




 その決定が連絡されるまでに三日かかったのは……やはり、色々と揉めたからだろう。




(……どんなやり取りがあったのかは知りたくないがな……)




 少なくとも教皇命令(強権発動)ではないことだけは確かだった。



 訪問予定日は二日後。授業の一環としての訪問となるらしく……




(……あ……っ!)




 そこまで読んで察してしまった……




 頭を抱えたウスニーは、だが、溜め息一つで切り替える。




(……仕方ない。それでも、前進は前進だ……)




 例え、微々たるものであったとしても変化は変化。



 その小さな変化が、後々大きな変化になることはこれまでの歴史が証明しているし、自分の体験としても()っている。




「……何事もなく終わらないことだけは、確定だな……」




 しかし、そうは言っても喜ばしい状況とはとても言えなくて……




 呟くウスニーの声にも表情にも、隠しきれない疲労が滲んでいた。


第3章第2話をお読みいただきありがとうございます。


あんなにシリアスに倒れたインスでしたが……なんと翌朝にはケロッと目を覚まし、普通に食事も機能訓練もこなしていました(笑)。


拍子抜けするほど元気なインスに対し、「原因不明の発作は危険因子だ!」と頭を抱えるウスニー。


アインを「神子」や「聖人」として擁立しようとする神殿の暴走。


最上層部がそれを否定していても、中途半端な真実を知る者たちの熱狂は止めることができず、ウスニーも状況の悪化に背筋を凍らせています。


そんなキナ臭い状況の中、インスの原因不明の症状を解明するため、ウスニーはついにアインを皇宮医務殿に呼び寄せる申請を通しました。


連絡までに3日もかかったという事実が、その裏でどれほどの思惑が交錯したかを物語っています。


しかし、アイン君が来るということは、当然すんなり終わるはずがありません。


ウスニー自ら「何事もなく終わらないのが確定」と盛大なフラグを立ててくれましたが、果たして……?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第6弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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