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第5話・異常の理由が見つからず ~表面的と裏側と~

第2章 皇宮医務殿での日常



       第5話・異常の理由が見つからず ~表面的と裏側と~



「……メンテ呪師。ラント呪師の容体は……?」




 突然心臓発作を起こしたかのように胸を押さえ、意識を失ったインスの診察と治療を終えて、そっと息を吐くウスニーに、居合わせたがゆえに目撃し、処置が終わるのを待っていたディオネラが問いかける。




 ディオネラは皇宮呪師学校の校長。



 だから現場で生死をかけた戦いに身を置くようなことは殆どない。



 むしろ、生徒である見習い呪師たちを、そういった危険からは遠ざけ、修業に集中できるように采配を振るうのが役目だ。



 正直、今回のような事態への耐性は低く、今も心臓が嫌な高鳴りを続け、指先まで冷え切っている。




「もう落ち着いた。だが……異常がないのが()()……と言った感じだな……」


「……はい?」




 もう一度溜め息を吐いてから答えたウスニーの返答に、ディオネラは瞬きしつつ首を傾げた。





 ほんの一瞬。気のせいかとも思えるほどの微かな魔力の揺らめきの直後。



 身を震わせ、胸を掴んで悲鳴を上げたインスの様子は、明らかに心臓発作のように見えた。



 けれど、意識を失ってしまったインスの診察をして、細部まで確認してみたが、異常が見つからない。




 いや。流石に最初は多少、脈が乱れ、早くなってはいたのだが……それは原因ではなく結果だ。




 心臓に異常があったわけでもなければ、落ち着いてきた今となっては、そんな異変が起きたことすら分からない。




 もし、目撃する者がいなければ、誰にも気づかれることなく……インスの性格からして、気のせいだった。で済ませそうなほどには異常がない。




「……神殿の秘薬が原因……と言った可能性は……?」




 腕を組み、難しい顔で考え込むウスニーに、そういえば……とディオネラは確認する。




 数日前に神殿の秘薬と呼ばれる……半ば無理やり体調が整うようにと体の機能を調整する薬を飲まされ、今日もまだその副作用である不快感に潰されかかっていたインスを思い出す。




「それはない」




 軽く片眉を跳ね上げたウスニーは、だがそこに関してはきっぱりと否定する。




「確かに、あの薬は不快感がとんでもないことになるし、身体機能は整うが気分的には最悪な薬ではある……けれど、ごく薄い濃度の物はよく処方されていて、間違いなくあなたも飲んだことはあるものだ」


「…………はい?」




 思いもかけない説明に、ディオネラが硬直した。




(……私も、飲んだことが……ある……? あの、多くの皇宮呪師を地獄の底に引きずり込んだと噂される、神殿の秘薬を……?)




 硬直したまま青ざめ、理解できない説明を、理解するのを拒みながらも……分からないままの方が恐ろしくて、思考はそのまま空回って考える。




「…………一応言っておくが、アレはちゃんと薬学に基づいて生成されている薬だぞ……?」




 その様子に、若干胡乱げな眼差しとなったウスニーが釘を刺す。




 別に毒物として作っている訳でもなければ、薬効その他が保証されているから利用されているのだ。




「……これは、できれば秘密にしておいていただきたいのだが……」


「いえ。結構です。聞きたくありません」




 納得できないなら……と説明しかけたウスニーを遮る。



 知らない方がよいことだとその発言で理解できた。



 知らずに済むのであれば、避けるのが賢い行いだろう。




「……そうか? まあ、そんなわけで、秘薬が原因と言うことはあり得ない……考えられる可能性は、あるにはあるが……」




(……そのためには、()()()を連れてくる必要がある……)




 ウスニーが考える可能性。



 それを確認する方法を、唯一持っているのはアインだけだ。




「……あ~。一応……申請は出してみるか……」


「何か心当たりがおありのようですが……伺わない方がよさそうですね……」




 重い溜め息と、何とも言えない困難の気配に、ディオネラは素早く一線を引く。




「……今は、それでいいだろう……だが、必要と判断されれば、嫌でも知らされるだろうから、覚悟だけは決めておいた方がいい……」




 チラリとディオネラに視線を投げたウスニーに対し、一瞬無になったディオネラは……




「……ご忠告。感謝いたします……そして、そうならないことを祈りましょう……」




 にこりと微笑んで拒絶を伝え、進捗があれば連絡を。と言い残して逃げるように去って行く。




 けれど……




((……おそらく、逃げられない……))





 そのことを、ウスニーもディオネラも、口には出さずに悟っていた。


第2章第5話をお読みいただきありがとうございます。


前回のラストで突然倒れたインス。


しかし、ウスニーがいくら診察しても「異常がないのが異常」というほど、身体的には何の問題も見つかりません。


原因はあの「神殿の秘薬(劇物)」の副作用では? と疑うディオネラに対し、ウスニーはあっさりと否定。


しかも「あなたも飲んだことがあるはずだ」という衝撃の事実を突きつけます!


多くの皇宮呪師を地獄に引きずり込んだ劇物を自分も飲まされていたと知り、青ざめるディオネラが最高ですね(笑)。


インスの異変の謎を解くため、ウスニーが思い至った「唯一の解決策」とは?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第6弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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