第4話・異常性の正当性 ~そこに絡むは思惑と~
第2章 皇宮医務殿での日常
第4話・異常性の正当性 ~そこに絡むは思惑と~
神殿側が皇宮側の調整を待たずに授業を再開した理由が透けて見えた。
額に揃えた指を当てて頭痛を堪えながら、インスは重く息を吐く。
気持ちは同じというよりも、できれば今すぐ意識を飛ばしてしまいたいディオネラも、同じように溜め息を漏らす。
ウスニーを責めても意味はないと分かってはいるが、ディオネラの目には隠しきれない非難の色が浮かんでいた。
軽く肩を竦めたウスニーとしても、ディオネラの気持ちは分かるので、そんな視線を向けられても甘んじて受け入れるだけ。
正直、自分に言われてもどうしようもないのだが、それはディオネラも分かっている。
分かった上で、それでも抑えきれないだけであることも理解していた。
「……当のアイン君は、どのくらい……?」
「一切理解していない……いや。自分が普通ではないということは多少は理解している。だが、その理解度はこちらのそれとは違うだろう……何しろ、神殿側が囲い込もうとしていることに気づきもせず、いまだにいつ放り出されるかと怯えているようだからな……」
ややあって、問いかけてきたインスに応えたウスニーの声に、若干の憤りと諦念が滲む。
神話の時代の神々の奇跡を起こして見せた……出自不明の記憶のない幼子。
異常な速度で様々なことを覚え、可能にしていったその才能も、幼い身体に見合わない、莫大な魔力も……
見る者が見れば畏怖の塊でしかないその『異常性』すらも、すべてを『正当化』するには、それが一番早いと分かっているから、反対しきれない。
だがそれが、本人の認知が歪んでいることを、まるで『利用』しようとしているかのようで、ウスニー個人としては受け入れがたい事も事実。
ウスニーだけではなく、ほぼすべての上層部は同じ考えだ。
しかし、それでも神殿側がやっていること。やろうとしていることは……
「……では、神殿側は、アイン君を神々の『神子』として……いずれは『聖人』として、擁立する意向があるのですね?」
神族と同等の奇跡を起こせる存在など、誰だって喉から手が出るほど欲しいに決まっている。
その相手が、自分のことを何も理解していない幼子だというのなら、いくらでも好きなように育てられるだろう。
確認するように問いかけたインスの声音からは一切の感情が消えていて、ただ至った結論を確認するようなもの。
「「………………」」
その、恐ろしく静かな声音に、何の感情も浮かばない、平坦な表情に、問われたウスニーだけではなく、ディオネラも背筋を凍らせて沈黙する。
「……どうなんですか……?」
しかし、インスは追及をやめない。
知っている範囲ですべてを教えるようにと言外に促す。
「…………一部で、その考えを持つ者がいることは、確からしい……」
感情の消えた眼差しに射抜かれ、こくりと喉を鳴らしたウスニーは絞り出すように応じる。
微かに目を眇めたインスから、ほんの一瞬、魔力の揺らめきを感じた。
直後……
「……っ……!?」
ビクン。と身を震わせたインスが、胸を掴んで悲鳴を上げる。
「インスっ!?」
「ラント呪師!?」
驚いたウスニーとディオネラに応える余裕もなく……
インスは突然の心臓の痛みにのたうって、そのまま意識を失った。
第2章第4話をお読みいただきありがとうございます。
神話レベルの奇跡を起こしたアインの「異常性」。
そのすべてを正当化するため、神殿側が目論む恐るべき計画の片鱗が、ウスニーの口から語られます。
当のアイン本人は何も知らず、いまだに「いつ放り出されるか」と怯えているだけだというのに……。
大人たちの勝手な思惑に、インスとディオネラは重い溜め息を漏らします。
感情が完全に消え失せた、底冷えするようなインスの追及。
ウスニーやディオネラですら背筋を凍らせるほどの静かな怒りが見え隠れする中……事態は誰も予想しなかった方向へと急転直下します。
インスを襲った突然の異変!
果たして彼の身に何が起きたのか!?
次回もお楽しみに!
【今後の連載スケジュールについて】
続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!
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【第6弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】
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ノリト&ミコト




