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もう何も望まない私を、騎士公爵だけが手放さない  作者: SoL


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3話 迫る影

 私はもう一つの新聞に手を伸ばす。

 こちらは平民向けで貴族のゴシップ多めのものだ。


 “王太子殿下、廃嫡!!”


 そんな見出しとともに、王太子殿下ともう一人、見知った女の顔が大きく描かれていた。


 “王太子殿下と親密な関係にあった

 ローズフィールド子爵令嬢は、

 舞踏会にて不貞の証拠を突きつけられ――“


 ローズフィールド子爵令嬢。彼女は私の元親友…いや、元友人だ。


「はぁ……今日の新聞は頭が痛い」


 新聞を読む気が失せてしまい、私は少し休もうと目を瞑った。



 ……懐かしい。あの日の記憶が蘇る。


 あの日は仕事を休み、ユリウスとのデートの日だった。友人だった彼女にもどこで何をするか話していた。



『エリシア』


『ユリウス!早く!!』



 予約していたディナーへ遅れそうになり、私は走っていた。一方、長い足のユリウスは悠長に歩いていた。

 無事間に合って食べたご飯が、とても美味しかったのを覚えている。



 店を出ると、ちょうど雪が降り始め、辺りを白く染めていた。

 街灯に照らされてキラキラ光る雪。

 私は両手を前にだし、空を見上げていた。


『とても、綺麗ね』


『あぁ。そして雪のおかげでエリシア、君はさらに綺麗だ』



 ユリウスはそう言って、自分が身に付けていたマフラーを私の首へと巻いてくれた。

 そんな紳士な彼の行動に、嬉しくなって微笑みかけた。


 ユリウスは、一瞬固まると顔を真っ赤にさせて微笑み返してくれる。


 まだ離れ難いね。なんて言って、私達は近くのベンチへ腰掛けた。

 私達は手を繋ぎ、しばらく無言でただ雪を眺めていた。


『エリシア、次のデートで、大切な話がある』


『ん?……わかった』


 あの日、あの約束の瞬間が、父が居なくなって以来初めて幸せだと思える日だった。


 そして私達は次のデートの約束をして別れた。

 本当はもう少し一緒にいたかった。しかし、ユリウスはこの後騎士としての夜勤があったので泣く泣く別れた。



 家に向かってしばらく歩いてから、彼にマフラーを返していない事に気付いた。

 私は急いで彼と別れた場所へ戻った。

 もうとっくに王城へ向かっているかもしれない。

 それでも走れば間に合うかも。と、少し火照ってマフラーを外しながら走っていた。


『ユリッ……』


 ………え?ユリウスと…


 そこには、抱き合って口付けをする、ユリウスとローズフィールド子爵令嬢の姿があった。




 ドアがノックされた音で目が覚めた。

 いつの間にか眠ってしまっていたようだ。


「エリシア様。失礼致します」


「どうぞ」


 入って来たのは三人の侍女。みんな、サイズの違う箱を一つずつ抱えている。


「こちら、アレクシス様からのプレゼントです。届きましたのでお持ち致しました」



 そう言って箱を並べ、開けていく。

 1つ目の小さな箱には、彼の瞳の色と同じ宝石で作られたネックレスとイヤリングのセット。

 2つ目の箱には白いハイヒールの靴が。

 最後の、大きな箱には彼の髪と瞳の色と同じドレス。


 いつの間に…これ、私に?


 侍女は一礼すると、手早く衣装部屋へ直し、何も言わずに部屋を出て行ってしまった。


 ……ドレスなんて送られても、外へ出られないのだから着れないわよ。

 彼からの皮肉なのかしら?まぁ、着る気もないし、私には過ぎたものだ。



 そしてまた時間は過ぎ、日が傾き始めた頃、外から馬の嘶く声が聞こえた。

 見ると城門にアレクシス様が乗っていった馬車。

 私は急いで玄関ホールまで向かい、出迎えの準備をする。


 使用人が慌ただしく主人の出迎え準備をしている中、時計だけが静かに時を告げる。

 アレクシス様の歩いてくる足音のように、刻一刻と、時間が刻まれる。


「……お帰りなさいませ。アレクシス様。」


「……あぁ。」


 彼は外套を脱ぎ、侍従へ預けて私の方へ手を差し伸べた。

 私はその手を取り、いつものように黙って彼に着いていく。

次話はside話です!

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