2話 軟禁の優しさ
新聞の一面に目をやる。
“ユリウス・アルヴェーン侯爵子息、近衛騎士副隊長に任命“
慣れ親しんだ名前。今はもう遠い過去の思い出だ。
“今回、アルヴェーン副隊長は
親友であるアレクシス・ヴァルクロード隊長
直々の指名を受けーー”
そういえば、親友だったんだ。あの二人。
昔はアレクシス様ももう少しだけ優しくて、ユリウスはもっと優しくて……って思い出したところで、あの日が帰ってくる訳でもないし、時間の無駄だった。
私は新聞を隅から隅まで読み尽くす。
“バルドリック伯爵、4人目の妻を迎えるのか?”
とあるゴシップ欄が目につき、私は反射的に新聞を閉じた。
バルドリック伯爵。1年前、私に結婚を迫って来ていた男。
バルドリック伯爵は黒い噂が耐えない男だ。
正妻と離婚後、三度の結婚。
いずれの妻も、三ヶ月と経たずに不審死を遂げている。
そんな男の妻になるなんて。
私の容姿は母の生き写しのように似ている。
母は、当時の王太子も想いを寄せるほどの美貌を持っていたが、母は父を選んだ。
恋愛結婚だ。私は両親のような恋愛結婚に憧れている。
なのでもちろん、バルドリック伯爵の求婚は丁重にお断りさせていただいた。
でもそれから、さらに求婚の頻度は増すばかり。
その度に私は、没落して今は平民だから釣り合わない。等の理由をつけてお断りしていた。
そして当時、私はユリウスと付き合っていた。
ゆくゆくは結婚するんだと、信じて疑わなかった。
目を閉じれば、ユリウスとの思い出の日々。
『次のデートで、大切な話がある』
彼はそう言っていた。なのに。それなのに。どうして……
いや、考えても仕方の無いことだ。
私は首を横に振り、考えるのをやめた。
ユリウスも。何もかも、どうでもいい。
アレクシス様……




