27 テレポーテーション完成 ― 宇宙統合の黎明
完成の日は、誰もが気づいていた。
銀河のどの端でも、空気が静かに震えていた。
まるで、すべての文明が息をひそめ、次の瞬間を待っているようだった。
タツヤは深い息をつき、手のひらに載った最終鍵を見つめた。
物質を原子単位で分解し、空間情報を写し取り、別の座標で再構成する
もとは「最資源装置」の副産物として生まれた奇妙な発想。
だが試行錯誤の果てに、それは移動の概念を超える技術へ昇華した。
「行こうか、メグミ。これで本当に、宇宙がつながる。」
メグミは静かにうなずいた。
外交の最前線で、彼女はすでに数百文明の合意を取りつけていた。
文化の保存、倫理規定、使用範囲、事故対応…。
メグミの緻密さと情熱は、タツヤの技術を銀河全体の共通言語にした。
そして
テレポーテーション装置が、初めて完全起動した。
眩い光が広がり、空間が柔らかく折りたたまれる。
対岸の惑星に立つ研究者が、同時にその光の中から現れた。
拍手も歓声も起きない。
ただ、深い静寂。
あまりにも大きすぎる瞬間に、誰も言葉を発せなかった。
その瞬間、宇宙が揺れた
銀河ネットワークを越え、通知が弾けるように全域へ伝わる。
緊急広域ニュース:銀河系で転送技術の完成を確認
外宇宙文明からの通信着信
技術開示の要求宇宙規模
タツヤは逃げなかった。
秘密会議も陰謀も知った上で、彼は公開を選んだ。
スピーチで彼は言った。
「独占しても争いが生まれる。
隠しても恐怖が生まれる。
ならばすべてを開くしかない。
宇宙は、分かちあうために広いんだ。」
データは即座に全宇宙へ開放された。
アルゴリズム、制御理論、倫理条項、失敗例。
隠し事は一つもない完全公開。
宇宙が動き出す
外宇宙から来た文明たちが礼を述べた
彼らは銀河系の成熟、文化の保存努力、生命倫理を評価した。
交流ゲートが次々と開く
大型文明同士の文化祭。
言語交換セッション。
芸術の即時転送。
希少文化財の安全な複製。
市民レベルの交流が爆発的に増える
惑星間の通勤が日常化
料理人が他文明に招かれて一日で帰宅
学生たちが昼休みに別の惑星へ遠足
歴史建造物の修復が各地で進む
消滅寸前だった文化が、最新技術で蘇る
宇宙は1つになった。
皆んな家族だ。
タツヤは夜空を見上げた。
どの星の光も、今は遠く感じない。
メグミが隣に立ち、言った。
「タツヤ。あなたの技術じゃないよ。
みんなの未来が、勝手に動きだしただけ。」
タツヤは笑った。
「それなら、もう止める理由はないな。」
星の海に新たな光が流れた。
それはテレポーテーションライン。
銀河を走るまっすぐな道。
宇宙は、ようやく 家族 になった。




