24 各文明の研究者がタツヤの元に集まり始める
最資源装置が文化復元の可能性を秘めていることが公表され、
さらにタツヤが 「この技術は完成ではない。宇宙全体で共に進化させよう」 と宣言した瞬間から、
銀河は静かにざわめき始めた。
それは、科学文明の深層に潜む渇望が呼び覚まされるような波紋だった。
最初の来訪者 ― 〈シェル=レム種〉の量子数学者
青白い光子の渦がタツヤの研究区画に現れた。
殻を持つ甲虫に似た姿だが、表面に走る紋様は規則正しい数式そのもの。
「タツヤ博士。あなたの装置は瞬間粒子欠損補完の概念に近い。
我々の文明では未完成の理論だ。
ぜひ共同研究を。」
言葉というより、数式がそのまま意識に流れ込んでくる。
タツヤはその瞬間に悟った。
この技術は、一つの文明では扱いきれない。
〈アルン=フォル連合〉の記憶建築師
次に来たのは、光の衣をまとった、性別の概念すら曖昧な種族。
彼らは文化を記憶として保存する技術を持ち、銀河文化庁にも属する知性体だった。
「文化を壊さぬ移送技術は、銀河法の中心概念になるでしょう。
あなたの発想は私たち建築師が待ち続けた答えのひとつです。」
異星の文化守護者が、タツヤに頭を垂れた。
〈ロドリアン機械群〉のデータ・エンジニア
星間跳躍船の中枢AIで構成された文明。
ひとつの合意意識としてタツヤの前に姿を現した。
「テレポーテーション技術は我々にも未踏領域だ。
物質の再構成精度を上げるため、銀河規模のデータ提供を約束する。」
タツヤはその言葉に、背筋が震えた。
彼らは銀河最大の情報文明。
その協力を得られるのは、人類の歴史で前例がない。
〈ヒルデナ砂海帝国〉の未来視研究者
赤褐色の砂をまとったような生命体が来訪した。
砂粒同士が音を奏でるように、ひとつの身体を形成している。
「この技術は、銀河の均衡を揺らす。
だからこそ、監視が必要だ。
だが同時に……その変化を見届けたい。」
彼らは味方とも敵ともいえない。
未来を観測し、影響値を管理する
銀河で最も慎重な文明だ。
タツヤは、自分の技術がここまでの関心を呼ぶとは想像していなかった。
研究室の外は、まるで星々が行列を作っているかのようだった。
各文明の旗、各言語の音声、各種族の気配が混ざり合い、
研究所は突如として小さな銀河中心となった。
しかしタツヤは、胸の奥で奇妙な感覚を抱いていた。
これだけの知性が集まるのに、反対派も同じだけ動いている。
この技術は、銀河の未来そのものを左右する。
高揚と恐怖、その両方がタツヤの中で静かに燃え始める。
この急激な研究者流入の背景には、メグミの外交戦略の成功があった。
彼女が各文明の文化団体・研究機関に向けて行った講演、
銀河会議での文化と技術の両立スピーチが強い波紋を呼び、
タツヤの技術に対して
危険ではあるが、無視できない希望
という評価を定着させていた。
タツヤは、メグミがもたらした巨大な追い風をまだ知らない。




