19 静かなる実験室
銀河連邦の外れにある、一般には存在を知られぬ研究施設。
夜の静寂に包まれたラボは、ただ一点、青白く光る装置の前だけが明るい。
タツヤは弟と二人、慎重に最後の設定を確認していた。
「分解→送信→再構成のプロセスは完璧だ…」
弟が頷く。
「兄ちゃん、失敗したらどうなるの?」
タツヤは肩をすくめ、微笑む。
「まあ…原子単位で壊れるだけさ。人や生き物じゃないから、問題はない」
装置の中央には、最資源装置の縮小版に似た、金属と光の網目構造が広がる。
「これで、物を別の場所に瞬時に移動させられるかもしれない」
タツヤは小さな金属立方体を手に取り、装置の上に置く。
電子の渦が装置内で光を帯び、分子レベルでの分解が始まる。
「よし…いくぞ」
装置の奥、遠隔の受信台に青い光が点滅する。
一瞬の閃光そして、立方体は、数メートル先の受信台に姿を現した。
弟は目を見開く。
「うわ…兄ちゃん、本当に動いた!」
タツヤは目を輝かせながら立方体を手に取る。
「見ただろう? これは…ただの物体の移動じゃない。
銀河を変える力になる」
だが、二人はまだ知らない。
この技術が成功すれば、文化・物流・戦略、果ては生命の移動すら変えることになることを。
そして、科学界と政治界がその存在に気づいたとき、銀河は再び波乱に包まれることになる。
タツヤは装置の光を見つめ、静かに呟く。
「準備は整った。
次は…もっと大きな物体だ」
夜空の星々が、まるで実験の成否を見守るかのように瞬いていた。




