16 文化復元の可能性
タツヤは復旧作業の現場で立ち止まった。
瓦礫となった古代都市を前に、装置を操作する指が止まる。
「文化も、歴史も…物理的に戻せるのか?」
彼の目の前には、崩れかけた建物や散乱した彫刻があった。
弟がそっと言う。
「兄ちゃん、装置の原理を思い出して。
原子や分子を再構成すれば、物質は復元できる。
生命は無理だけど、物は戻せるはず。」
タツヤは装置の画面を見つめ、深く頷く。
「そうか…時間を完全に戻すことはできない。
失われた原子や分子は戻せない。
だけど、現存する破片に足りない分子や原子を追加すれば、形としての文化は再生できる。」
彼の心に光が差し込む。
「つまり、最資源装置は文化の復元装置にもなり得るんだ。」
復元作業を開始すると、壊れた建物の原子が一つずつ再配置されていく。
壁や柱、屋根、彫刻ボロボロだったものが、元の形に近づき、街並みが再び姿を見せる。
完全ではない、過去の時間は戻せない。
しかし、形としての文化は息を吹き返す。
タツヤは装置の操作を続けながら、心の中でつぶやく。
「文化は、形として残すことができる。
人々の記憶や物語は完全ではなくても、触れられる形として未来に残せる。」
弟が笑う。
「やっぱり兄ちゃんはすごい。
技術で歴史を守れるんだ。」
タツヤは微笑み、前を向く。
「技術は道具にすぎない。
でも使い方次第で、文化を守る力にもなれる。
今回の事件で、それがわかった。」
銀河の星々を背に、タツヤの瞳は未来の可能性を映して輝いていた。




