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14 タツヤ覚醒  文化を最資源化するな

 宇宙連邦 倫理会議・緊急招集

 宇宙連邦中央議事堂。

 透明な球体ホールの中央に、タツヤの開発した「最資源さいしげん装置」が投影されている。

 本来は「ゴミ、汚染物、廃棄物」を原子レベルに分解し、

 再構成して新しい資源へ変換する宇宙の魔法 だった。

 だが、いまそれは別の意味を帯びてしまっている。


 議長

「本日の議題は『最資源ブーム』による文化破壊事件。

 古代博物館、惑星歴史区、記念遺構が一般市民の判断で勝手に最資源化される事例が多発している。」


 文化大臣

「昨日は古墳が資源として優秀だと解体されました。

 歴史的価値は実用度では計れないはずです!」


 軍部代表

「しかし軍備拡張にも応用できる。

 兵站がゼロになる革命的技術だ。」


 ツトム(実務責任者)

「最資源装置は我々が宇宙市場にばら撒いた結果でもあります。

 だが想定以上のブームです。

 行動規範が追いついていない。」


 メグミ(外交部)

「宇宙文明間の摩擦も出ています。

 他星系の文化財が勝手に再資源化されたと抗議が来ています。」


 ジンヤ(法務)

「タツヤ本人の見解が必要だ。

 開発者の思想を倫理規範の基準にする。

 今日ここで決める。」


 すべての視線が、タツヤに注がれた。

 天才とは呼ばれるが、タツヤ自身はただの考え続ける人間だった。

 机上に置かれた古い写真が、ふと脳裏に浮かぶ。

 

 かつて、とある惑星で見た光景。

 廃墟となった住宅

 業者が老朽住宅を最資源化した日のことを思い出す。

 係官「これがリサイクル物件です」

 業者「了解、分解します」

 遠くで、おばあさんがぽつりと呟いた。

「…なくなるのね。思い出の家が」

 娘が言った。

「また誰かの役に立つのよ。それでいいでしょ、ね」

 しかし、おばあさんは小さく首を振りながら呟いた。

「思い出はリサイクルできないよ」

 その言葉が消えずに胸を刺す。


(僕は未来を見ていたはずだ。)

(ゴミを資源にして、汚染された惑星を浄化し、人類を豊かにするはずが…)

(なぜ文化まで材料扱いになっている?)


 ふいに、過去に学んだ文明史が頭をよぎる。

 ダイナマイト、レントゲン、抗生物質、ウイルス研究。

 どれも、人を救うために生まれたはずなのに、必ず排他と暴走がついてくる。

 そして思う。

(文明は間違えるから進歩する。

 でも、その間違いが許される範囲は自分が決めるべきだ。)


 タツヤは静かに立ち、議事堂全体に響く声で話し始めた。


「……最資源装置を魔法と呼んだのは僕です。

 でも僕は、文化を消すつもりなんて一度もなかった。

 文化は人の時間そのものです。」


 ホールが静まり返った。


「人は思い出を積み重ね、失い、また次に渡す。

 それは雪のように降り積もり、春には溶けて消えるかもしれない。

 けれど、消えた場所から次の芽が育つ。」


 亡き老女の独り言が、胸奥で光る。

『若者よ、大きく生きよ。そして次への道しるべになりなさい』


 タツヤは続けた。

「僕はゴミを資源にするつもりだった。

 文化まで資源にする未来は、望んでいない。」

「だから、ここで明言します。」

『文化の再資源化は禁止する。

 歴史は資源ではなく、生命だ。』


 ツトム(実務責任者)

(タツヤ…お前、そこまで考えていたのか。

 よし、ルール作りは任せろ。

 売るだけが俺の仕事じゃない。)


 メグミ(外交部)

(青二歳だと思ってたけど…これは文明レベルの演説よ。

 外交の切り札になる。)


 ジンヤ(法務)

(はぁ、また法改正か…。

 でも、これで宇宙裁判沙汰は減る。

 やれやれ。)


 タツヤは最後にこう結んだ。

「文明は、議論で進む。

 間違え、ぶつかり、寄り添い新しい道ができる。」


「最資源装置は、みんなの未来を開く。

 だけど、過去を消す力にしてはいけない。」


 ホール中の種族が立ち上がり、拍手が波のように広がった。

 後日、宇宙連邦の新しい倫理指針に老女の言葉が引用されることになる。


「思い出はリサイクルできない」

「若者よ、大きく生きよ。

 そして次への道しるべになりなさい」

 これが、宇宙文明全体の心の規範となる。


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