09 宇宙資源再構成プロジェクト
兄は観測窓の外に漂う廃棄宇宙船や隕石の残骸を見つめながら、ひとり静かに思考を巡らせていた。
「フードプロセッサーと同じ発想だ…でも、今度は銀河規模だ。」
彼の頭の中で、分子、原子、核力、反物質の磁場が一瞬で結びつく。
原子核と電子を分離し、再構成することで、スクラップは無駄なく資源に変換できる。
ゴミ山も、廃棄宇宙船も、汚染された惑星も、すべてを回収して、誰もが使えるものに変える。
その瞬間、通信端末が震えた。
弟からのメッセージだ。
「兄ちゃん、文章で伝えたいアイデアがあるんだ。
宇宙に住む人々が、物や文化を無駄にせず循環させる世界。
この計画を文学的に形にできるかも。」
兄は微笑む。
「もちろんだ。
文章も技術も、同じ目的のために動かせる。」
翌日、宇宙船ノヴァ・セレニティの中央デッキで、兄はチームを前に指示を出した。
ツトム、メグミ、ジンヤ、そして弟も参加する。
「スクラップや廃棄物を回収し、原子レベルで再構築するプロジェクトを始める。
最初は小規模で、宇宙船やコロニーの廃棄物を対象にする。」
ツトムは即座に販売・物流システムを応用し、回収ルートと資源流通網を設計する。
「了解。既存のフードAIネットワークで回収→変換→配送まで対応可能だ。」
メグミは眉をひそめつつも、計画の重要性を理解する。
「なるほど、銀河規模の資源循環を作るわけね。
このプロジェクトを外交的に利用すれば、連邦内の評価も上がるわ。」
法務のジンヤは淡々と確認する。
「反物質と原子再構成の安全性は、事前に全てチェックする。
問題が起きた場合の責任範囲も明確化済みだ。」
弟はノートにメモを取りながら微笑む。
「文学でも、資源の循環や倫理観を伝えることができる。
技術と文章、二つの力で銀河を変えるんだ。」
プロジェクト初日、宇宙船の外で兄は試験装置を起動した。
反物質による磁場が生成され、原子が分解・再構成される。
小さな隕石の破片が光を帯び、均質な金属や資源ブロックに変わる様は、
フードAIで食材を生成する時と同じ感覚だった。
「やはり…理論通りにいくな。」
兄の目は光を帯び、宇宙船の冷たい金属も、彼の理想の温度を映すかのようだった。
弟は遠隔通信で、プロジェクトの光景を見つめながら原稿にペンを走らせる。
「これが、技術と文化の融合…人々に希望を与える瞬間だ。」
ツトムたちは即座にネットワークを拡張し、回収された資源を効率よく各コロニーや宇宙船に再配布する。
「これで、銀河の資源循環システムが始まったぞ。」
そして、兄弟、ツトム、メグミ、ジンヤ
それぞれの知恵と情熱が結集し、宇宙規模の「理想的循環」が、静かに動き出したのだった。




