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カカオ星

ワープゲートの出口を目指してワープホール空間をブラックキューブのZエネルギーエンジンが轟音をたてて光速飛行をしている。

カカオ星の太陽系に一番近いワープゲートの出口が近づき、無機質な漆黒の闇の先に星々の明かりが照らされ、ワープホールの終わりを知らせてくれる。


アンドロイド人格のオレンジはその長い触手で、手順通りに角張ったモニター機器を角張ったタッチパネルで操作し、ワープゲートを抜ける準備に取り掛かる。


「ちょっと揺れるわよ」


ワープゲートを抜けるとオレンジZエンジンを止めて、推進力をコアエメラルドエンジンに切り替える。


地球時間で言えば後数時間でブラックキューブは目的地の カカオ星 に到着する。



カカオ星は その太陽系の6番目の惑星を周る衛星で大きさは地球とそれほど変わらない星だった。


衛星には分厚い大気の層が存在し、その大気の主成分は窒素とメタンで表面温度はマイナス200℃の超低温の星である。

地表にはメタン液体の海があり、多くの氷山がそびえ立ち、その氷山や低温の平地には、黒色の硬質な葉を持つモミの木に似た植物の木のような物が生えて地表を埋め尽くしていた。メタンの海はメタンの雲を作り、その雲からはメタンの雨が振り注ぐ。

表面的に見れば カカオ星 は生物が繁栄するには過酷な星だった。


しかし、ソレは表向きの仮の姿だった。


カカオ星は衛星そのものに意思がある 星型知的生命体 で本当の姿は超低温世界の殻の下にある地底に開かれた世界だった。


カカオ星の地底には、星生命体の高温の核から発する地熱により、生命体に快適の温度が保たれ、その地熱の熱エネルギーを根から吸い取り栄養分にする多種の植物が生い茂っていた。

多種の草食動物、昆虫がその植物を食する。その草食動物を肉食動物、昆虫が食する。食物連鎖が出来上がている。


植物たちは酸素を吐き、動物たちは二酸化炭素を吐く。この世界は地球の石炭紀によく似た酸素濃度の高い大気が存在していた。


そして特殊なことに、この世界は地底にもかかわらず、地底の空全体が光に満ちていた。

光の正体は、 カカオ星 の氷の表面を覆うように生えている黒色のモミの木で、モミの木の根は表面の殻を突き抜け、突き抜けた無数の根の先には電球のような発光体がびっしりと実っている。

星全体を覆うメタンがモミの木と化学反応を起こして光るその実の光はカカオ星の地底世界を昼間のように照らしていた。



ブラックキューブはカカオ星の大気圏を抜けると、メタンの雨の降る中、氷山に沿って低空飛行を始める。


多くある氷山の中でも、一際高い大きな火口がある氷の山に近づくと、オレンジはカカオ星の核である知的生命体にシグナルを送る。

シグナルを受け取った知的生命体は閉じてある火口を開き、ブラックキューブを招きいれる。

ブラックキューブは火口の中にゆっくりと吸い込まれて行くのだった。


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