人類史
百目は花摘みの作業を終えて帰還するブラックキューブと名付けた真っ黒なキューブ型の宇宙船内の簡易ベッドに横たわり昔を思い出していた。
もうだいぶ遠い記憶になるが、まだ人体改造する前の自然体の若い自分を思い出す。
人類は環境悪化と人口増加のために地球での暮らしに苦難を感じ、火星への移住を完工していた。
すべての人間が火星にし移住した訳ではなく、上流階級が環境の良い火星に移住し、下級層の人間はまだ多く悪環境の地球に住み着き、人類は2層構造の生存状態であった。
この2層の生存状態が100年程続く人類に突如として悪夢が襲う。
致死率が異常に高い殺人ウィルスが産まれ、火星人類に感染蔓延し、火星を覆い尽くす。ソレの爆発力は凄まじく地球人類にも広まっていった。
その火星ウィルスと名付けられた天敵は、自然体の人間だけではなく、クローンにも感染し、自然,人工的に関わらず、すべての人間に死をもたらす。
五年程で全人類の70%を失った人間は、ウィルスのワクチンを作る事も出来ず、多くの手段を用いたが失敗に終わり、解決法を他の星々に見出す決断をする。
苦難の決断 苦肉の策だった。
科学的にはようやく光速飛行が出来る宇宙船が製造出来る段階で太陽系外の惑星に探索船を送るにはかなりのリスクを伴った。
人類はこの探索に起きるであろう数々の問題にアンドロイドのAIだけに決断させる事を不安に抱き、クローンとアンドロイドの混合部隊にし、人間らしさを残す決断をする。
最初の第一号探索船モーゼルの乗組員は全人類の保存されていた遺伝子情報から選別した指導者1名、科学者2名、軍人3名、技術者3名、医者1名、サイキック2名のクローンに女型アンドロイド2名、男型アンドロイド3名を乗せ出発する。
モーゼル号は長い目標の見つからない航海の末にワープゲートを発見するのだった。
ワープゲートの本格使用には多くの時間と能力がかかったが、ウェップ星人との出会い協力もあり成功する。その間をなんとか辛うじて生存し続けた人類は、ワープゲートを使い、今までとは比較にならない広範囲の宇宙空間に探索船を送り出す事が出来るようになる。
後に現代に至るまで多くのクローンとアンドロイドを宇宙空間の探索に送り出す。
しかし、それでも火星ウィルスの解決方法は見つからず、ウィルスは探索用に生み出されたクローンたちにも広がり、人類は七名の指導者を残し死滅する。
そして、この生き残った七名の指導者たちもウィルス感染を恐れ、自ら意識を電気信号に変えて機械に移植し、肉体を捨てる。
彼らはデジタル生命体となり、自らを光人と名乗り、人類の復活を望み、アンドロイドを大量生産し、今この瞬間も探索船を宇宙空間に送り続けている。




