謎の惑星
V字型の宇宙救出探索船は八機のZエネルギーエンジンを搭載し、八機のエンジンは轟音をならしワープゲート内のワープホール空間を飛行していた。
無数に放った小型人命救出探索ドローンの生存者信号を受け取り、その信号はこれまで発見されていなかった惑星からのもので、それはこれまで発見されていなかったワープゲートの新しい出口も示していた。
その生命信号は弱々しく、死亡寸前か、何らかの仮死状態にあると考えられたが、救出組織の長であるダビデは興味をもち、アンドロイド5体と、この未知の惑星に向かっている。
小型探索ドローンの情報によると、この未知の惑星の概要としては、地球似型の惑星で、高度な知的生命体は存在せず、21世紀の犬猫哺乳類ほどの知能の恐竜型の種族グローブ多く、その社会を形成しているようだった。
V型の宇宙探索船は新発見のワープゲートを抜けると新発見の惑星に着陸する。
惑星についたアンドロイドたちはこの星の環境の情報を集める。ウィルス、病原菌、好戦的な生命体、危険をもたらすものの情報を集め、自分たちと、長であるダビデの透明な人工血液に生息する微小なナノマシンたちに学習させ、必要ならば高性能なフェイスマスクを惑星の環境に順応させる。このフェイスマスクは無機質でのっぺらぼうだが、中央に鼻程の出っ張りがあり、時折、送風があり、その送風は長い鼻のようにも見える。
アンドロイドは高性能な半永久的容量のバッテリーで機能し、呼吸、睡眠、食事は必要としない。当然、生殖機能もない。
探索船には取り付けの、アンドロイド生体維持モジュールがあり、アンドロイドが損傷した場合に、バッテリーの再生と充填、再生救護機能、データ補充機能などアンドロイドのケアをする。
当然にしてダビデ用の生体維持モジュールもあり、純白のダビデ専用型である。
その他にも緊急用の生命救護ドローンが乗車し、このドローンは1メートル直径の白い卵型で、浮遊し、極地でのダビデとアンドロイドの生体維持をサポートする。
アンドロイドたちは基本的には服など着る必要はないのだが、準人類としての文化と機能面から、上下に分かれた全身タイツの様なテクノロジーウェアを着る。
素材はナイロンに似せた素材で。耐熱、耐冷、耐圧に優れ、特に便利視されるのは吸着機能があることで、手荷物などケース、光弾銃などを背中に吸着できる。
フェイスマスクとテクノロジーウェアの色は黒だが、カモフラージュ機能があり、カメレオンの様に変色も出来る。
アンドロイドは初期型からこれまでに9タイプ作られ、外見は変わらないが、中身はバージョンアップされてきた。普段は見せることはないが、命令があれば額にデジタル文字で製造番号が表れ、製造日やタイプなどが認識できる。
「ダビデ様、500年の時間軸のズレがあったようです。」
女性型のアンドロイドがこの星のデータを読み取りダビデに報告する。
「それは愉快だね」
ダビデは爽やかな笑顔を見せて興奮している。
ワープゲートには謎が多く、この浦島太郎現象もその一つである。
正確ではないが、ワープゲートの時間枠と距離枠は10万光年を1日で短縮移動出来る目安となっていた。
しかし、あくまでも目安あり、この枠に収まらない事故も多かった。ウェップ種族や百目、オレンジなどの部外者たちも、確実ではないにしろ不理解な状況に落ちないために、これまでの多くの犠牲で成り立っている安全のなるべく確保されたワープゲートのトンネルを使用し、未知のワープゲートのトンネルは使用していない。
未知のワープゲートを使用して事故ると、地球感覚で3日の旅が目的についてみると500年、1000年、百万年経っている事もあり得るのだ。そして、帰路を考えれば、3日の旅行が帰ってみれば、自分の惑星、太陽系、ないしは銀河系自体が消滅してなくなっている事もあり得る。
たが光人たちはアンドロイドの生命を道具と考え、軽んじる傾向が見られ、未開の地にも必要ならばアンドロイドを送っていた。
ダビデに至っては、その好奇心というか冒険心というか探求心に押され、進んで自らの意思で未開の地に降り立つ。
ダビデとアンドロイドたちは不可解なことに気づく。
出発時にはこの惑星には高度な知的生命体は存在しないはずだったが、惑星の情報収納をするなかで、ある大陸の砂漠地帯に建造物を発見する。
その建造物は古代エジプト文明のピラミッドに瓜二つで、人間の顔を模したスフィンクスに瓜二つの巨大建造物まで存在する。
「原始人が500年で文明人に進化したか」
ダビデの好奇心は爆発し、サイボーグの肉体はバッテリー式で心臓などはないのだが、その心臓は高鳴った。
探索船の保安員のアンドロイドを1体残し、船のドアが開き、人影が降りてくる。
真っ黒なフェイスマスクをつけ、真っ黒なウェアを着る真っ黒な人影4体。
そして、少し離れてその最後尾から純白のスーツ、純白のシャツ、純白のネクタイ、純白の手袋、全身純白の美しい青年が、恐ろしくも見える美しくも見える笑みを浮かべながら現れる。
ダビデは不格好なフェイスマスクを嫌っていたが、この星の大気は無害ではあるが、生臭い異臭を放つため、やむなく防臭のために真っ白なフェイスマスクをつける。
彼は純白の革靴で謎の惑星の地に降り立つのだった。




