(2)歯磨き粉とアイスとイケメン
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ピロンピロン…
ありがとう、24時間。
そう思いながら自動ドアを潜って、日用品コーナーへ向かう。
「えーっと、、歯磨き粉はっと。あ、これこれ」
コンビニで買うと少しお高いけど、今はそんなこと気にしてられない。
てか、せっかくきたんだからアイスとか、買おうかなっ。毎日頑張ってるし、これくらいいいでしょ。
クルッと方向転換したところで、突如目の前が真っ暗になった。ドンッと何かにぶつかる。
「あ、、、すみません。大丈夫ですか?」
少しだけハスキーな、
男性の声が頭上から聞こえてきた。
「いえっ、私こそすみません。突然振り向いたりしてしまって、、」
ボヤっと一瞬目はくらんだが、すぐにはっきりと見えてきた、端正な顔立ちの男性。
全身高級そうな真っ黒いスーツ。
甘すぎずウッディな香り漂う、香水の匂い。
胸元にはギラギラ光る、ハイブランドのブローチ。
黒い髪も艶艶してて、素敵。
「ではじゃあ、お互い気をつけましょう。
―――お疲れ様です。」
彼はにこっと、軽い会釈をする。
きっと、私がスーツを着たままだからか(着替えるのが面倒で)、彼なりの気遣いで軽い挨拶もしてくれたみたい。
か、
か、
か、
かっっわいいい、、、、、
つか、かっこいい。顔も中身も。
急に火照ってきた頬。
多忙な日々を潜り抜けてきた今の心に響き渡る、
胸キュン。
私、まだトキメキ忘れてなかったんだね。
良かった。
歯磨き粉、ちょうど無くなってて、良かった。
多少高揚しながらアイスコーナーに向かうと、
SNSでチェックしていた、即完売で話題のアイスがラストひとつだけ、残っていた。
「めっっちゃくちゃ私、ラッキーじゃん?」
ほんのすこしだけだけど、忙しい毎日が、報われた気がした。