(1)土曜日の早朝7時ですが
外からチュンチュンと鳥の軽やかな鳴き声と、ミーンミーンと、蝉の羽の音が控えめに聞こえてきた。
夜を照らす月も水平線の彼方に消え、今からは太陽のお出ましだ。そう、時刻は早朝7時。
ガチャッ
扉を開ける、やつれきった女が東京の下町田舎に帰ってきた。
「た、ただぃまぁ、、ぁあ」
玄関につくなり、ぺたんと腰を落とす。
28歳 白木 琴美
社会人、女サラリーマン、限界社畜だ。
「やっっっと家に、帰ってこられたよ、、。」
今日こそ私は人生の終わりを見た。と、これを週2回は繰り返している。
地方の大学を卒業したら、絶対東京で仕事を探して、バリキャリ、キラキラウーマンになってやる!!
と意気込んだものはいいものの、、
22才からすでに華の金曜を過ごしたことはない。
キラキラどころか、ドロドロしてる。
「、、よしっ、気持ちを切り替えて。」
重い腰をあげて、洗面台まで足を運んだ。
帰ったらとりあえず手を洗う、歯を磨く。これが私の日常ルーティン。簡単にスッキリな気分になれるからとてもオススメ。
「ふっふふーん、ってあれ。」
洗面台の鏡の扉をあけて、ハブラシを取り、歯磨き粉を持ってみて怪しい気持ちになる。
プ、プシュ....
「うっわー。歯磨き粉、きれちゃった。」
しかたない。ストックも無い。
歯を磨かないという選択肢は今の私には無い。
だって、、
だってこれが、限界社畜のささやかなご褒美。疲れをリフレッシュする日常ルーティン。
「コンビニに行くしか、ない。」
幸い、徒歩2分のところにコンビニはある。
思い立ったらすぐ行動派だ。