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37 マイケルとエメリーの話

 






 それから数年が経った。


 マイケルは自衛軍の '鬼の司令官' と呼ばれるようになっていた。自衛軍の鍛錬は厳しく、マイケル司令官自らが隊員達を鍛えている。


 ディックとショーンは副司令官として、マイケル司令官の後ろにいつもピタリと控えている。若い隊員騎士達の間ではマイケル司令官よりも2人の副司令官の方が恐ろしい、と言われている。確かに仕事中、この2人は笑わない。


「そんな事でこの国が護れるのか!」

というのが口癖で、若い隊員達を鍛え上げている。


 ティムは自衛軍専属の医務官として後輩達の指導も任されている。治癒魔力もかなり強くなり、皆からの信頼も厚い。


 サイモン秘書官はエレノア王太子から引き抜きの話が何回もあるが頑なに断り、自衛軍秘書官長としてマイケル司令官のそばで働いている。


 サイモンは、今日もマイケル司令官の日程表をにらみながら、ちろちろとマイケル司令官を盗み見するのだった。


(マイケル司令官の秘書官は

 このサイモン以外にはあり得ません。

 私以外に誰ができるというのでしょう!

 サイモンがいればこそのマイケル司令官!

 司令官!

 私に感謝してくださいよ。

 そうでないと、これから先何が起きても

 …私は知りませんよ!)





 エメリーは王太子殿下の親衛隊副隊長として、エレノア王太子のそばにいつもいて、エレノアを護っている。アレックス隊長の信頼も厚い。


 アレックス隊長は、もう直ぐ国王陛下の親衛隊長の専任となる事が決まっていて、エメリーが王太子殿下の親衛隊長になる予定だ。


 そのエメリー副隊長の秘書官はサイモンの大切な妻となったミミが担当している。ミミは2回目の挑戦で官史に合格した。2年ほど色々な部署を経験したミミを自分の秘書官に指名したのはエメリーで、2人は上司と部下と言うより仲の良い友達に近い。


 2人でアップルパイの店に行き、お互いの夫を自慢し合う時間は、何物にも代え難いとエメリーは思う。



 

 エメリーが騎士となってから、騎士を志望する女性が増えた。


 黄紅色の長い三つ編みを風になびかせて、赤いマントを翻しているエメリーの姿は '炎の騎士エメリー' と呼ばれていて、女の子達の憧れの的だ。


 エメリーがエレノア王太子を護衛して、眼光鋭く辺りを見渡しながら騎馬で街を進むと、女の子達がエメリーの後をキラキラとした眼をして追いかけて来る。


 エメリーは子供の頃の自分を思い出し、追いかけてくる子供達には声を掛けるようにしている。


 私の一言で人生を決める子がいるかもしれない…。

 騎士になりたいと思う子が現れるかもしれない…。


 それは楽しい未来の始まりだ、とエメリーは思うのだった。




 そんなエメリーも、御屋敷に帰ってマイケルと2人きりの時は、相変わらずマイケルに甘えてばかりいる。時折わがままを言って泣きながら駄々をこねるが、マイケルが怒った顔をすると、しゅんとしている。


 マイケルはそんなエメリーが可愛くてたまらない。


 エメリーは料理も少し上手になり、マイケルの喜ぶ顔を見るのが楽しみになっている。マイケルの母、ロレインにマイケルの好きな料理を習ったり、自分の母にパンの焼き方やパンに合う料理を少しずつ習っている。




 2人はいずれは子供が欲しいねと話し合っている。大きな御屋敷の庭で子供達が走り回り育っていく姿を想像するだけで、2人の顔がほころんでいく。


 大きな御屋敷だから、いずれはマイケルの母ロレインやエメリーの両親も一緒に住めるだろう。


 ロレインが行儀作法や家事を子供達に教える。そして、エメリーの両親のためにパン焼き窯を作って、みんなで美味しいパンを毎日食べる。


 想像するだけでも楽しい未来が、マイケルとエメリーを待っている。

 



 今日もエメリーは窓辺に座り、昼でも明るく輝く大きな2つの月を見ながら、月の姫君に語りかけていた。


 姫君、あなたのお導きのお陰で、私はとても幸せです。


 そして、思い出していた。


 街で見たマイケルを追いかけて追いかけて城まで来てしまった時の事。

 マイケルから目が離せなくなり、胸がドキドキしてしまったこと。

 マイケルの様になりたくて、頑張ったこと。

 卒業式のパーティーでマイケルにキスされた時の事。

 

 マイケルと初めて会った12歳だったあの日、こんな幸せな未来が自分を待っているとは想像もできなかった。


 すると、2つの月の暖かな光がエメリーを包み込んだ。


 気づくと、エメリーの前に1人の女性がいた。

 その姿は透き通っていて、光の中で揺らめいて見えた。

 白い肌、黒い髪、薄く紅を乗せた様な唇。

 とても美しい女性だった。


 エメリー、もっともっと幸せになれ!


 そういう声がエメリーには聞こえた。


 月の姫君…

 ありがとうございます。

 これからも、私と私の大切な人々をお導きください。


 エメリーがそう言うと月の姫君はにっこりと笑った。



       完

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