20 2人の三連休 Day 1
エメリーには秘密の三連休、3日前。
マイケルはアレックス親衛隊隊長に呼び出された。
「エメリーと2人で三連休だそうだな。サイモンから聞いた。これまでエメリーがものすごく頑張ってきたのを、お前も分かってるだろう?
うんと可愛がってやれ」
連休2日前、マイケルはロレインに呼び出された
「エメリーちゃんと2人で三連休を取るのでしょう?アレックス殿から聞きましたよ。あんなにお前の事を愛してくれる可愛い女の子、他にはいませんよ。
大事にしなさいね」
連休の前日、マイケルはエレノア姫にこっそり耳打ちされた。
「エメリーと2人で三連休なんでしょう?ロレインから聞いちゃった!2人で楽しく過ごしてね。
この前みたいに泣かせちゃダメだよ!」
(皆、俺にどうしろと言うのだ!何をどうすれば、可愛がって、大事にして、楽しく泣かせずにエメリーを過ごさせてやれるのだ。普通じゃダメなのか?)
こう言う時に頼りになる人物は1人しか思い浮かばない。
頼りになる男、サイモン秘書官の前でマイケルは眉根に皺を寄せて小さな声で尋ねた。
「なぁ、サイモン。俺はどうすればいいんだよ。皆からエメリーを可愛がれだの、大事にしろだの、泣かせるなだのと言われてしまった。
俺はそんなにダメ男なのか?
どう思う、サイモン?」
サイモンは、笑いを堪えて司令官を見た。
「司令官!エメリー大佐を狙っている男は今でも大勢いるんですよ。他の男に取られたくなかったら、私の言う事をよくよく聞いて、覚えていてくださいね。
いいですか?いいですね?」
虚な眼をしたマイケルは力無く返事をした。
「…ぉ、おぅ!」
「まず、1番大事な事です。
この三連休やホテルの予約は司令官が私に命じた事にします。エメリー大佐の事を思って司令官が計画したのです。このサイモンが勝手に予約した、などとバレてはいけません。
はい、嘘も方便です。1番大事な所です!
そして、女の子は大事に大事にして、褒めてあげるのです……。例えば…」
サイモンの特別授業が続く。
三連休初日の朝。
外はまだ薄暗く、鳥の囀りが聞こえる。窓は閉め切っているのに、しっとりとした朝の香りが部屋の中でも感じられる…そんな朝。
マイケルが横を見ると、ベッドの中でエメリーはマイケルの胸に顔を当て、すやすやと眠っていた。
目が覚めかかっているのかモゴモゴとしているエメリーの頬をそっと撫でて、マイケルは囁く。
「エメリー、もう少し寝ていなさい」
うぅ〜ん、でも、お仕事の日だから…と言うエメリーの耳に更に囁く。
「今日は2人揃って休みを取ったんだ。だから」
「…ん…ん?」
「サイモンに頼み込んで休みを作り出してもらったんだ。だから2人とも今日は仕事には行かないよ。もう少しだけ、こうして2人で寝ていよう」
ちゅっ!とキスしてマイケルが微笑んだ。
「エメリー、可愛い…」
エメリーがうっすらと目を開けて、顔を赤らめながらマイケルを見上げた。
「ほんとにいいの?ほんとに?
今日はお休みで、ずっと2人で一緒にいられるの?」
「ああ、そうだ。ほんとだよ。
だからもう少しおやすみ、エメリー」
うん、と頷いたエメリーはうつらうつらとしながらも、マイケルの耳に唇を寄せた。
「…ありがとう」
マイケルはエメリーを抱きしめた。エメリーの体は騎士として鍛えているはずなのに、柔らかく暖かで、強く抱きしめると折れてしまいそうだった。
「俺だけのエメリー」
マイケルはエメリーの耳元で囁いた。
外が明るくなってきた。
「顔を洗って着替えておいで。街に行こう。俺のために素敵な格好して」
きゃっ!と言ってマイケルに飛び付いたエメリーは、待っててね、とマイケルを見上げた。
ふふん、とマイケルは笑った。
エメリーは深緑色のベルベットのワンピースに黒の編み上げのショートブーツ、黄紅色の長い髪はハーフアップに纏めて、マイケルの前に現れた。
「どうかな…?」
ラフな格好で寝室の椅子に座ってエメリーを待っていたマイケルは、スッと立ち上がるとエメリーを抱きしめた。
「よく似合ってる…素敵だよ。もっとよく見せて…」
エメリーがクルクルと回るとワンピースの裾がふわっと広がって、白くて細い脚が見えた。マイケルは思わずごくりと息を飲み込んで、エメリーを抱き止めた。
「…エメリー、…すごく似合ってる。
でも…そんなにクルクルするのは…俺の前だけにしておくれ。可愛すぎて、他の男に目をつけられてしまう」
不埒な考えは振り払い、エメリーの手を取ったマイケルは、行くよ、と言って街に出た。
マイケルは高級ブティックに入って行く。躊躇うエメリーの背中を押してマイケルはずんずんと店の中を進み、次々とドレスをエメリーに当てては目を細めていたが、これだ、と1つのドレスをエメリーに渡した。
「これを試着して欲しい」
試着室から出てきたエメリーは真っ赤になっていた。
マイケルが選んだのは、黒のタイトなドレス。ピタッとしたデザインは体のラインを浮き上がらせ、胸元が大きく開き、太ももまでスリットが入っている。肩から裾にかけては斜めにキラキラと光る石が散りばめられていた。
「よしっ!エメリー、これにしよう。明日の夜はこれを着て欲しい。」
エメリーの返事も待たず、マイケルは靴やクラッチなどの小物を見繕ってもらった。そして、そっとエメリーに口付けて囁いた。
「明日は特別な日、エメリーの18歳の誕生日だろ?明日はこれを着て俺とダンスをしてほしい。お願いだ。断らないで」
エメリーはこくんと頷く。
「マイケルがそう言うなら…」
(でも、恥ずかしい。だって、私に似合わないもん)
エメリーを連れて御屋敷に戻ったマイケルはエメリーにキスして囁いた。
「エメリー。2泊する準備して」
「えっ?」
「黙ってたけど、本当はね、2人揃って三連休にしてもらったんだ。
3日間、ベッタリと一緒にいる。離れない。もう嫌だと言っても離さない。
明日はあのドレスで俺と踊ろう。
さ、準備して」
小さなカバンを持ったエメリーとマイケルは都から離れた森の中へと飛んだ。




