【第16話】 急襲
今晩は。
投稿です。
大地がグングン近づいてくる。
なにこの大気!?
粉塵の中にいるみたいだ!
臭いも酷い!
魔大陸は、東の大陸以上の汚染大陸だった。
大気は濁り、上空から見える大地は緑が少なく、川や湖は淀んで墨汁のようだ。
ここ、魔大陸には中央に巨大な湖があり、その中心部に島が横たわっている。
目指す大地はあそこだ!
落下中、すっ、と誰かに抱きしめられた。
お、玲門?
(ふふっ、やっと抱っこできた!)
(ず、ずるい!ずるい!ずるいぃっ!)
美観が猛烈に抗議する。
余裕だね、お二人さん。
アイお母さんとエノンの場所分かる?
(ここから北の方向)
(1000㎞以上離れていると思う、誘導しようか?)
いや、この大地は魔王管轄の大地だ。
一言、物言いをしてから向う!
今から重力魔法で、下に見えるお城を破壊する!
(アキ?本当に破壊するのデスか?あそこは筆頭魔王ルーカス・マーカスのお城デス!)
高さは1000mはあるだろうか?
高い塔と、それを支えるように広がる巨大建築物。
この大陸の象徴みたいなお城だ。
真っ白で、魔族とは思えない様式。
だけど、あの白いお城の土台には、遙か昔から苦しめられてきた妖精達が埋まっているのだ。
きっと阿騎の悔しさも、死んでいったゴブリン達、エルフ、ドワーフ、沢山の妖精達の苦しさも埋まっている!
魔族には、遙か昔から散々苦しめられてきたんだ!
今回も!
私の!
大事な!
大切な!
お母さんを!
友達を!
パリパリと、私の周囲に高純度の魔力が集まり始める。
あ、玲門、体臭変わった?
(え?私、大丈夫かしら?美観!抱っこする?)
(……遠慮しておく。可愛いペロ、玲門にお似合いよっ!)
(み、っ美観!逃げたわねっ!?アッキー!?私、大丈夫だよね!?)
え?どうだろ?
もはや魔力濃度は触れるレベルでは?というくらい高まっている。
重力を使い、大地を超振動させ液状化する!
この魔法攻撃、名前はないけど、多分できるはず!
虐げられてきた者達の!
積年の恨み!悲しさ!悔しさ!
思い知れっ!
私は大地に向って魔力を開放した。
「っきゃっ!?」
固まる玲門。
ぶわっ、と振動する大地。
島全体が振動しているのがここからでも分かる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
大地に呑まれるように崩れていく魔王の城。
バリバリと島全体に亀裂が走り、そこからドロドロと熱に溶かされたバターのように形を変えていく。
瓦礫と化した魔王城に降り立つ私達。
魔王城跡には、二柱の魔族が佇んでいた。
一柱は腕を組み、静かに大地に降り立つ私達を見ていた。
もう一柱は、巨大な椅子、玉座に座していた。
玉座の主と目が合う。
「魔王城へようこそ、ホルダーアキ……いや、怒りの魔神アキ」
母と友達を奪還に来た。返して貰うぞ!
「ああ、好きにしろ」
そして私は玉座の主、魔王ルーカス・マーカスから目を逸らし、横に佇む魔族を睨む。
魔族イー・シャンテン!
「あ、こいつ好きにしていいぞ」
「魔王から許可が出ましたが、どうします?」
ローロンサ、先を急ぐ。
無視する。
「放置か?消し去ると思ったが?」
改めて勝負する、今は見逃す。
「よかったな?イー・シャンテン。お前瞬殺だったぞ?」
「……」
「おいおい、いつもの軽さはどこに行ったイー・シャンテン?ああ、魔神アキご一行、お茶も出さずに悪いな?アイとエノンはここから北、大地の国にいる。今あそこは戦争中だ」
!?
含みがある言葉だな?
「アイとエノンは先頭に立ち、風の国と炎の国相手に戦っている。あの二人、帰らないぞ」
!
ここで魔族イー・シャンテンが口を開く。
「大地の国の民は、アイとエノンを異界より現れた渡来神の化身と思い、慕っている」
何ですと!?
「彼女達は各国と飛び回り、魔王と交渉し戦争を止めようとしている」
事実か?
「今更俺が、嘘を言ってどうする?」
こちらの情報を違う!魔族イー・シャンテン、お前の言うことは信じられない!
それにお前達、マッチポンプだろう?
自ら火を付け、自ら消す。
そして英雄気取り!
長い間人々をだまし続けてきたのだろう?
今回はどんなシナリオだ?
玉座からゆっくり立ち上がる魔王ルーカス・マーカス。
「ああ、小鳥のメイドンか?適当な情報流して追い払っていたからなぁ」
ギロッ!
「おい、メイドン、俺とお前の仲だろう?そんなに睨むな、嘘の情報は謝るよ!」
なぜ嘘の情報?
「相手は真杖ア・ダウ、本体デスか?」
!?
「ああ、お前も参戦するか?メイドン?真杖ア・ダウ本体が動いたなら、俺も参戦する」
「あなたでは勝てませんよ?それでも参戦デスか?」
「人々を騙すシナリオは俺の美意識に反する、俺様が筆頭になってからは、シナリオは無しだ。人々の自由意志に任せるようにしたいんだがなぁ」
「数千年騙していたのデス、そう簡単に修正はできない、どうデス?」
「その通りだよ、メイドン。俺に賛成した魔王は3柱、反対2柱。この反対派が真杖ア・ダウと手を結んだ」
そこの魔族イー・シャンテンは?
「俺様のスパイ」
!
嘘だ!
「ああ、嘘だよ。こいつはエノンに助けられているんだ。エノンだけは裏切りたくないんだ」
エノンは優しい、その優しさは強さを伴う。
「ああ、知っているよ。こいつは好きとか惚れたとかじゃなくて、魂を救われているんだ。だから真杖ア・ダウを裏切った。真杖ア・ダウ本体はこいつだけは決して許さんと、宣言しているほど敵にされている」
何があった?魔族イー・シャンテン。
「……俺とエノン二人だけの思い出だ。話す気は無い……」
こいつが思い出に生きる?
ふざけるな!
「こいつは周り全てを裏切り続けた、仲間なんていない。俺様は筆頭だから横に置いているだけだ。同じ魔族からも嫌悪される存在、それがこいつイー・シャンテンさ」
次回投稿は 2023/12/01 夜の予定です。
サブタイトルは 【第17話】 大地の国へ です。
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