【第8話】私の過去
今晩は。
投稿です。
過去の私って、どんな私?
今の私は……今の私は幸せだ。
幸せだけど。
本当の両親は……思い出すと、気が重いな。
まさに、私の過去だ。
私は望まれた子供、妊娠ではなかった。
母は、堕胎しようとしたが、時期が遅れたのだ。
それで世の中に対し、呪詛を吐きながら私を産んだ。
胎児の時、お腹の中で呪いの言葉を散々聞かされた。
なんで妊娠したの?子供なんていらないのに!
私には必要ないの!
私の身体から、出て行ってよ!
こんなのバレたら大変よ!どうしよう!どうしよう!?
私はまだ遊びたいの!子供なんていらないの!
書き出せば、限りがない。
「あなたの子供よ」
と、母が言うと、全ての男は慌てて、逃げた。
全ての男、そう、最悪なことに、誰が本当の父親か分からない。
……なんてこったい。
そこで、生れるとすぐに、私は母の両親、私の祖父母の家に預けられた。
祖父は私を見もしなかったが、祖母は一生懸命お世話をしてくれた。
なんでこんないい、おばあちゃんにあの母親?
どこで間違ったの?マイ・マザー?
問題は祖父だった。
おばあちゃんや私に、蹴る殴るの暴行は当たり前。
おばあちゃん、なんで逃げないの?
そして私が2歳の時、交通事故で祖父母が死んだ。
高速道路での逆走が原因だ。
結局はおばあちゃん、祖父に殺されたようなもんじゃない!
私はこの祖母の死に、涙した。
祖母は私を庇って死んだ。
チャイルドシート?
ありませんよ、私に使うお金はないと、祖父が購入しなかったのだ。
祖父母が死に、母は遺産を手に入れた。
土地、財産、全て独り占め。
最初にしたことは、新しい男と一緒に、私を山に捨てに行くこと。
街から50㎞以上離れた山奥。
ぽいっ、と私は捨てられた。
走り去る四駆のデカい自動車。
ひどい親がいるモノだ。
空には丸い月。
綺麗な満月だ。
私は月見をしながら、ハイハイと徒歩を組み合わせて家路についた。
不思議と疲れは感じない。
月がずっと、見ていてくれたから、かな?
そして自力で母のアパートに帰り着き、開いた窓から侵入、母と男の到着を待った。
車の止まる音。
あ、帰ってきた。
カチャカチャと解錠の音が響く。
荒々しく玄関が開くと、母と男がもつれ合うようになだれ込む。
うわぁ、ちゅーしている。
でも、このちゅー、お互いを食べているみたい。
ケダモノのちゅーだ。
「こ、これで私は自由よ!ハアハア、あのオヤジからも!口うるさいババーからも!忌々しい子供からも解放されたのよ!ハア、ハア自由よ!お金も!あなたも!」
だから、ここでまた、その男と抱き合ったら、赤ちゃん出来ちゃうじゃん!
命を弄ばないでよっ!
これじゃ、おばあちゃん、報われないよ!
「ママ、おかえり」
私は、はっきと言ってやった。
固まる2人。
……ホラーだね。
それともギャグか?
慌てて明りをつけ、私と目が合う母親とその男。
もの凄い悲鳴と共に出て行く二人。
それ以来、母には会っていない。
私はそのままアパートを後にして、祖母の眠るお墓に向った。
郊外にあるお墓は遠かったけど、捨てられた山よりは近かった。
途中で摘んだ野の花、それをお墓に供えた。
このお墓への納骨は、親戚がした。
親戚は、私を引き取りたがっていたが、遺産のことを考えた母が、頑なに拒んだ。
まあ、もうそんなことはどうでもいい。
おばあちゃん。
あなたの人生は、なんだったの?
酷いことばかりじゃない!
親戚の話を、車の中で沢山聞いた。
思い出しては、この救われない祖母に対して、私は泣いた。
笑うことは、あったの?おばあちゃん?
辺りが明るくなり始める。
どこへ行こう?
東雲が綺麗だ。
お腹空いたな。
行く当てのない私はお墓を通り過ぎ、更に山の中を目指した。
人の世界に嫌気がさしたのだ。
途中空腹で倒れると、いつの間にか眠ってしまった。
行き倒れの2歳児、私は世界を呪い始めた。
パチリと、目が覚める。
?
抱っこされている?
誰だ?
女の人の優しい匂い。
私の左目はアイお姉ちゃんを捉える。
?
アイお姉ちゃんって誰だ?
「早く病院へ!」
「川釣りで、子供を見つけるとは」
懐かしい、コロさんの声。
取敢えず、その大きなパイパイに……はむはむ。
……服が邪魔!
実は、もう離乳食なのだが、私は無性にパイパイが恋しいのだ!
「あああ、ごめんよ赤ちゃん、オッパイ出ないんだ!早く!早く病院へ!」
まあ、2歳児だから、赤ちゃんの呼び名に相応しいかどうか。
峠の坂道、ドリフトを決めて豪快に病院を目指す、コロお父さんの軽自動車R1。
それから、アイお母さんは、私を手放すことはしなかった。
虎のように咆え狂うアイお母さん。
誰も、アイお母さんから私を取り上げることなど出来ない。
私はそのまま、この夫婦の子供になった。
この二人は、どこの誰とも分からぬ私に、愛情を注ぎまくった。
私は思った。
世界を呪うの、ちょっと中止。
これが私の過去だ。
確かに私は異常だ。
知識も、体力も、大抵怪我をしても、すぐに回復してしまう。
経験上、それは月に影響されている、と分かり始めた。
満月と新月は、力が増す。
小学校の時、握力計で測ったことがある。
握力計の針は振り切った。
そんな私の、更なる過去?
生れる前?
転生の記憶?
今のこの力の原因は、それか?
私は遙か過去、何をしたの?
どんな生涯、転生だったの?
聞いてみるか、その上で記憶の回復を判断しよう。
次回投稿は 2023/08/14 22時から23時の予定です。
サブタイトルは 【第9話】ナビナナとパスワード です。
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